C  高等学校教師及び高校生へのアンケート調査
 結果と考察
(ア)  高校生の悩みと相談相手(資料9
 学習面について
 相談相手は友人が多く,親・兄弟にも相談している。学習内容や勉強方法では教師に相談している生徒が比較的多いが,勉強に取り組めなくて悩んでも,誰にも相談しないでそのままにしてしまう生徒の割合が高い。
 心理・社会面について
 部活動がうまくいかなくて悩み,苦しいと感じる生徒が多い。友人や親・兄弟に相談している生徒は多いが,教師に相談する生徒は少ない。生徒自身の個人的・内面的な悩みでは,誰にも相談しない割合が高い。
 進路面について
 他の領域と比べて家族や教師に相談する割合が高い。進路面では家族や教師が大きな援助資源であることが分かる。
 健康面について
 他の領域と比べて誰にも相談しない割合が高い。「テストや授業のときの腹痛や下痢」で悩み苦しむ生徒は多いのに対し,誰にも相談しない割合が高いので,特に配慮が必要である。
 その他について
 半数以上の生徒が学校になじめなかったり,行くのがつらいという経験をしている。学校に関する悩みなのに教師に相談する割合が低いことを,教師はもっと認識して対処すべきである。
(イ)  悩んで苦しんだことのある高校生の悩みと相談相手(資料10
 学習面について
 学習の内容については相談するが,勉強に取り組めないという学習意欲の問題では,悩んでいながら誰にも相談しない生徒は依然として多い。
 心理・社会面について
 対人関係の問題について友人や家族に相談する割合は増加するが,個人的・内面的な悩みで苦しんでいるのに誰にも相談しない割合も高い。
 進路面について
 友人や家族だけでなく教師に相談する割合が増加している一方,誰にも相談しない割合に大きな変化は見られないことから,さらに相談しやすい教師へのニーズを認識して対処すべきである。
 健康面について
 友人や家族に相談する割合は大きく増加しているが,誰にも相談しない生徒の割合はあまり変化がないことから,さらに保健室等を中心にして,相談しやすい学校の体制づくりが求められる。
 その他について
 誰にも相談しない割合に大きな変化が見られないことから,相談しやすい学校の体制づくりが課題としてうかがえる。
(ウ)  高校生の悩みと相談相手に関する教師の認識(資料11
 教師は,生徒が悩んだ経験と悩んだ苦しさについて全体的に生徒の実態より多く見ている。その一方で,相談相手では教師を考えている割合が生徒の実態より多い反面,友人や家族は生徒の実態より少ない。このことから,教師は生徒が相談しやすい在り方を課題として認識し,友人や家族などを有効な援助資源としてもっと活用することも考えるべきである。また,誰にも相談しない生徒を実態よりも少なく見ているので,悩んで苦しんでいるのに誰にも相談できない生徒の存在をもっと認識し,その対処を考える必要がある。
 まとめ
(ア)  誰にも相談しない生徒を減らすために
 悩んで苦しんだことのある生徒のうち,誰にも相談しない割合は全体と比較すれば減少している項目が多い。これは,誰かには相談している生徒が多いことを表している。しかし,内面的な悩みでは増加している項目がある。悩んで苦しんでいるのに誰にも相談できない状況を「悩みがあれば相談できる相手がいる」という状況に改善するための教師側の努力が必要である。
(イ)  予防的・開発的なはたらきかけの重要性
 誰にも相談しない生徒が,悩みをかかえてから相談相手を見つけようとしても難しい。生徒が悩みをかかえていないときや悩みが小さいときこそ,いざというときの相談相手を見つける絶好の機会ととらえたい。そのためには,教師から積極的に予防的・開発的なはたらきかけをすることが重要である。具体的には,休み時間や清掃時の生徒への声かけ,ホームルームなどを利用しての構成的グループ・エンカウンターによる人間関係づくり,保護者との面談や連絡を密にすることなどが考えられる。
(ウ)  教師以外の援助資源の活用
 教師は「悩みがあったら相談してほしい」と考えているが,内容によっては相談しにくいこともある。「いかに教師に相談してくれるか」と考えて努力することは大切だが,相談相手を教師に限定せず,友人や家族などの援助資源をもっと有効に活用するなどの連携活動の在り方を考えるべきであろう。
(エ)  学級担任が一人で抱え込まないために
 学級担任が多種多様な生徒の悩みにすべて対処しようとして,一人で抱え込んでどうにもならなくなってしまうことがある。それには,複数の教師や家族などによる援助チームを組んで,友人などの援助資源を生かした対応が有効である。そのためには,教師相互でも気軽に相談できる校内体制をつくるためのコーディネーターが必要であり,定期的に援助会議のようなものを招集し,情報交換をしたり,日常的な教育活動の振り返りなどを通して,教師の力量や生徒とのかかわり方の質的向上を図ることが重要である。
(オ)  援助が必要な生徒の早期発見のために
 悩んで苦しんでいるのに誰にも相談できない生徒が数多くいることから,早期発見するためのSOSチェックリストを作成して,各教師が実際の学級経営や学習・進路指導および生徒指導に活用していくことが重要である。


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