B 中学校教師及び中学生へのアンケート調査 | ||||
ア 結果と考察 | ||||
(ア) 中学生の悩みと相談相手( 資料6 ) | ||||
○ 学習面について | ||||
学習面,心理・社会面などの五つの領域の内,悩んだ経験が一番多くなっている。特に「授業の内容が分からない」や「勉強する気になれない」といった悩みは大部分の中学生が経験していることが分かる。相談相手としては親・兄弟や友人が多く,誰にも相談しない生徒も数多くいることが分かる。何となく意欲がわかないといった内面的なものや親の期待が重荷といった親に対する悩みのときは,誰にも相談しない傾向が強く見られる。 | ||||
○ 心理・社会面について | ||||
部活動や先生に対する不満など学校に関係するものは,友人に相談する傾向が見られる。反面,自分の容姿や家庭の問題,友人関係については,誰にも相談しない生徒の割合が一番高くなっている。 | ||||
○ 進路面について | ||||
進路面の悩みに関しては,親・兄弟に一番多く相談している。このことからも親や兄弟が大切な援助資源であることが分かる。また,他の領域と比較すると,相談相手に教師を選択している生徒が多い。進路に関しては,教師もまた貴重な援助資源であることが分かる。 | ||||
○ 健康面について | ||||
身体がだるかったり頭痛・腹痛などのストレスを抱えている生徒が多いことが分かる。相談相手としては,親・兄弟や友人が多いが,自分の身体の変化や成長のことで悩んだときは誰にも相談しないという傾向が見られる。 | ||||
○ その他 | ||||
中学生の半数は,学校に行きたくないという経験があり,苦しさも大きくなっている。学級になじめないと悩んでいる生徒は,数は少ないものの,苦しさの割合が高く,しかも相談しない傾向にあるので,教師として何らかの対応が必要であろう。 | ||||
(イ) 悩んで苦しんだことのある中学生の悩みと相談相手( 資料7 ) | ||||
○ 学習面について | ||||
(ア) の「中学生の悩みと相談相手」の一般的な傾向と比較すると,誰にも相談しないという生徒の割合が減っており,悩んで苦しんだことのある生徒は,何らかの形で誰かに相談していることが分かる。主な相談相手としては,一般的な傾向と同じく親・兄弟や友人が多くなっている。しかし,不安や悩みごとがあるために勉強が手につかないという項目では,悩んで苦しんでいるのに,相談しないという生徒がわずかではあるが増えており,教師は,何らかの方法でそういう生徒を発見し,援助していく必要があるであろう。 | ||||
○ 心理・社会面について | ||||
心理・社会面においても,悩んで苦しんだことのある生徒の相談しない という割合は減少している。異性との交際や先生に対する不満など,心理 ・社会面では友人に相談するケースが多くなっている。 | ||||
○ 進路面について | ||||
進路面においては,親・兄弟によく相談する傾向が見られる。ただ,自分の希望が親の意見と一致しない場合は,友人に相談していることが分かる。平均的に教師も相談相手に選ばれており,様々な援助資源でサポートが可能である。 | ||||
○ 健康面について | ||||
健康面においても親・兄弟や友人に相談している。身体がだるいときなどは,10%以上も相談しない生徒が減少しており,比較的相談しやすい項目であることが分かる。 | ||||
○ その他 | ||||
学校あるいは学級になじめなくて,悩んで苦しんだことのある生徒の大部分は,親・兄弟や友人に相談する傾向が見られた。学校に行きたくなくなったときは,誰にも相談しないという生徒の割合が高くなっており,教師は注意を要するであろう。 | ||||
(ウ) 中学生の悩みと相談相手に関する教師の認識( 資料8 ) | ||||
中学校教師は学習面,心理・社会面など五つの領域において,中学生は多くのことに悩み,苦しく感じていると認識している。親・兄弟や友人を相談相手と認識している点は,中学生の傾向と同じである。しかし,多くの中学校教師は,相談相手として一番に教師を挙げているが,実際の中学生の選択としては,授業の悩みや進路の悩みで相談する以外はあまり選択されていないことが分かる。また,誰にも相談しない生徒が多くいるという点では,教師の認識との間に大きな差が見られた。 | ||||
イ まとめ | ||||
(ア) 親や友人を活用したチームによる援助の必要性 | ||||
どの項目においても中学生は,相談相手として親・兄弟や友人を高い割合で選択している。このことから,中学生にとって,親・兄弟や友人は貴重な援助資源であることが分かる。教師は学習面や進路面で相談相手として選択されている。今後,教師は,親とチームを組んだり,友人を大いに活用したりしながら援助をしていく必要性があるだろう。 | ||||
(イ) 認識のズレを防ぎ早期発見するためのチェックシートの活用 | ||||
教師と生徒の間には,教師に相談するかどうかで大きなズレが見られた。そのズレを防ぎ,悩みの大きな,しかも,誰にも相談しないという生徒を早期に発見し,予防的にかかわっていくためには,毎日の生活や学習活動の場面で,SOSチェックリストや援助資源チェックシート等を適切に活用していくことが大切だと考える。 |