はじめに

「学校生活スキル」の研究について

筑波大学教授 石隈利紀

 多くの子どもが学校生活で苦戦しています。一人ひとりの子どもの苦戦はさまざまであり,援助の必要性も内容もそれぞれ違います。それでは私たち,教師,保護者,スクールカウンセラーなど,子どもの援助者は何をめざすのでしょうか。その答えの一つが,子どもの自助資源を伸ばすことです。
 子どもの自助資源とは,子ども自身がもつ力で,問題状況に対処しながら,成長するのに役立つ力です。子どもは,自助資源を伸ばしながら「今の苦戦」に対処しています。そして,学校教育の機能の中核に,子どもの自助資源の開発と育成があります。
 今回の研究では,子どもの自助資源として「学校生活スキル」に着目しました。学校生活スキルとは,子どもが学校生活を通して発達課題などに取り組むために必要なスキルです。具体的には,自分で学ぶスキル,進路に関して決定するスキル,集団で活動するスキル,仲間とコミュニケーションをするスキル,健康を維持するスキルです。今回の研究は, 筑波大学で心理学の博士号をとられた飯田順子さんの研究を参考にして,小学生,中学生, 高校生の学校生活スキルについて調査し,スキルのリストを作成し,調査研究を行いました。また学校教育のなかでスキルを育成する授業について,実践研究を行いました。
 学校は,子どもが生活し,子どもが成長する場です。子どもの学校生活スキルを授業,特別活動,行事等で開発し育成することで,子どもの成長が促進されると思います。今回の研究が,先生方,スクールカウンセラー,保護者を初めとする,子どもの援助者のみなさんに役立てていだけることを願っています。
 茨城県教育研修センターで,茨城県の先生方の研究チームに入れてもらうのは,今回で3回目で,今年で7年目です。茨城県の先生方の,子どもを育てる実践の力とよりよい教育をめざす研究の力に,あらためて,おどろき,仲間にいれていただいとことに,こころから感謝しています。
 一人ひとりの子どもの学校生活が豊かになることを祈って,今後も,新しい学校教育のあり方を茨城県から全国に向けて発信していくお手伝いを続けたいと思います。


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