A | B高等学校第3学年自己学習スキル | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ここでは,高校3年生を対象に,自己学習スキルの1つである「試験前など,自分が実行できるような具体的な目標や計画を立てることができる」というスキルに焦点を当てたトレーニングの実践を紹介する。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ア | 学級の実態について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本校の4つのコース(人文・理数・体育・国際)の内,国際コースに属するクラスである。男子10人,女子27人合計37人で構成され,他のコースに比べると明るく元気のよい生徒が多い。9割以上の生徒が進学を希望し,学習の必要性は感じているものの自ら進んで計画を立て実行できている生徒は少数である。入学時の成績から見ると学年の中でも高いクラスであるにもかかわらず,他コースに比べ計画的で地道な学習に欠けるため,成績が伸び悩んでいる生徒が多い。 受験を前にした3年生の7月に「学習にはこつがある」「学習法はさまざまであり,自分にあった学習法を探して実行することが大切である」「計画通りに行うことは難しいが,それらは対処していけることである」等を知ることは重要と考え,このスキルトレーニングを取り上げた。 配慮を必要とする生徒としては,中学時代に不登校状態で過年度卒の生徒が1人いる。この生徒は現在も欠席がちであり,対人関係を築くのが不得意なためトレーニング内の班別活動やアンケートの実施に当たっては十分な配慮をした。 |
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イ | 目標 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1日に15分間今までより多く学習するために,学習計画を立てるスキルとそれを実行するためのスキルを学ぶ。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ウ | 指導計画(2時間扱い) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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エ | 活動の実際 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ア) | 活動の経過 トレーナー…教科担任 |
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<第1時> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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<第2時> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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(イ) | 活動の内容 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
表1 スキルトレーニングでの結果と感想
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(ウ) | 事前・事後の調査とアンケート | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
表2 自己学習スキル得点の事前・事後の比較 (平成15年7月9日・18日実施 高等学校第3学年 37人※有効回答数34人) |
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図1 1日の平均学習時間の事前・事後比較 (平成15年7月9日,18日実施 第3学年37人 ※有効回答数29人) |
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「自己学習スキル得点の事前・事後の比較」(表2)を見ると,項目3以外全ての項目でポイントの上昇が見られた。特に項目4,5,7,8では伸びが大きかった。t値上,非常に高い確率でスキルトレーニングの効果があったことが分かる。スキルトレーニングのねらいとした項目6においても,−1.47の伸びがあった。 「1日の平均学習時間の事前・事後比較」(図1)を見ると,スキルトレーニング後では学習時間0分の者が3人減少し,30分〜1時間の者が1人,1時間30分〜2時間の者が2人増えている。学習時間の少ない層が減り,多い層が増えていることから本トレーニングが学習時間の増加についてもプラス15分以上の効果があったことがうかがえる。 また,表には示さないが,個人の得点の平均は事前は19.1であるのに対し,事後は20.9と伸びている。2時間とも参加した者34名について個別に得点の増減を見ると,増加した者24人,同じ者3人,減少した者7人であり個別的にもスキルトレーニングの実施は効果があったといえよう。 個人得点の増加の幅が大きい生徒について見てみると,+12の者が1人,+7〜8の者が3人いる。+12の者の授業に参加した感想に「いつも『やらなきゃやらなきゃ』であせっていて勉強しなかったが、15分ならすごい短いけど集中しておぼえるのが分かった。朝起きてからやったらもっとおぼえると思った。」とあり,1つのスキルを身につけることによって,自己の学習全体に好結果をもたらす場合があることがうかがえる。 一方,個人得点の減少幅は−3が1人,−2が2人,−1が4人となっており今回のスキルトレーニングが自己学習においては,信頼性があることがわかる。 なお,配慮を必要とする生徒については,班別学習においても問題なく過ごすことができ,調査結果も他の生徒と特段の差異は認められなかった。 |
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(エ) | 授業後の働きかけと生徒の様子 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
実施時期が夏休みの直前であったこともあり,夏休み中に「プラス15分学習」を継続することを指示するにとどまった。受験勉強と重なったこともあり学習の習慣付けのきっかけとなったようである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
オ | まとめ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ア) | 反省 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
今回初めてスキルトレーニングを行ってみたが,トレーニングの中身に構成的グループ・エンカウンター(以下SGE)の手法を利用する部分(ブレインストーミング)があり,クラスの対人関係の構築度合いが成否のポイントの1つであると感じた。普段からクラス内でSGEを実施し,班別学習などに抵抗なく入ることができれば,効果はいっそう上がると思われた。 また,1週間の間隔で2回のトレーニングとアンケート調査を行ったが,本当にそのスキルが定着したかを確認するためには,より継続的なトレ−ニングと調査が必要であると思われる。 |
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(イ) | 考察 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
自己学習スキルトレーニングは高校生が自己学習能力を身につける上で有効であると考える。アンケート調査の結果からも,各項目別平均・個人別平均ともにポイントが増加し,学習時間も伸びを示していることが分かる。また,合計ポイントが大きな伸びを示す生徒がおり,生徒によっては1つのスキルがうまく身に付くことで自己の学習全体に好影響を与えることもあると分かる。一方,学習に対してのマイナスはほとんど認められず,信頼性の高いトレーニングであるといえる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ウ) | 今後の課題 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
スキルは知識ではなく行動であるから,計画的で継続的なトレーニングが必要であろう。 また,SGEをトレーニング内に含む場合は,コミュニケーションスキルや集団活動スキルのトレーニングを先に実施することや,先に進路決定スキルで十分に学習に対する動機付けを行った上で,自己学習スキルへ移行するというようなスキルトレーニング全体の順序が検討されるべきであろう。 |
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