【授業研究8】 | 高等学校第3学年理科(生物U)「生物の系統と分類」 −イントラネット用Webサーバと共有フォルダを活用した授業の研究− |
茨城県立藤代紫水高校 教諭 倉持 誠 |
(1) | 校内LAN利用のねらい | |||||||||||||||||||||||||||
本校においては,平成13年度に普通教室にコンピュータ各2台(1台はノート型)とプロジェクタが配置され,普通教室での授業におけるコンピュータ利用が活発になってきている。 現在の活用例としては,インターネットのホームページの利用やグラフ作成ソフトの利用が主なものであるが,今回の研究ではどの教室からでもWebブラウザを使った授業ができるようイントラネット環境を構築して活用するとともに,それとは別に共有フォルダを活用した授業について考えた。 具体的には,イントラネット環境構築としてWebサーバを立て,そこに教材やリンク集などのさまざまなデータをおき,授業中にブラウザから適宜サーバにアクセスして画像などを見せたり,板書事項をプレゼンテーションソフトのファイルとして載せておき,ダウンロードして板書代わりに見せるといったように,ホームページを見る感覚で日常の授業ができ,ファイルサーバのように必要な情報を引き出すことを考えた。 共有フォルダの新たな活用方法としては,ディジタルカメラで別の場所から撮った画像ファイルを共有フォルダに送り,すぐにプロジェクタで表示することを試みた。 |
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(2) | 校内LANの利用環境 | |||||||||||||||||||||||||||
図8−1 本校の校内LANの概要 |
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(3) | 授業の実践 | |||||||||||||||||||||||||||
@ | 単元名 「生物の系統と分類」 | |||||||||||||||||||||||||||
A | 単元の目標 | |||||||||||||||||||||||||||
○ | 現存する地球上の生物は多様性に富んではいるが,共通の祖先から進化したと考えられることを理解させる。 | |||||||||||||||||||||||||||
○ | 系統樹(生物の進化の過程を示す樹状図)について理解させ,菌類や藻類を含めた植物の系統樹と動物の系統樹について理解させる。 | |||||||||||||||||||||||||||
図8−2 使用したWebサーバPC・カードリーダ・CF・ディジタルカメラ |
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B | 指導計画(13時間扱い) | |||||||||||||||||||||||||||
ア | 生物の系統(5時間扱い)
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イ | 生物の分類(8時間扱い) (省略) |
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C | 本時の指導 | |||||||||||||||||||||||||||
ア | 目 標 | |||||||||||||||||||||||||||
○ | 植物の細胞構造の違いや同化色素の違いから,いくつかの代表的な植物について,進化の過程を考えながら系統樹を作成する。 | |||||||||||||||||||||||||||
イ | 準備・資料 | |||||||||||||||||||||||||||
系統樹をまとめるためのプリント,資料集(「詳細生物図表」),プロジェクタ,パソコン3台(スクリーン表示用,Webサーバ,ディジタルカメラの画像送信用),板書用データファイル,ディジタルカメラ,カードリーダ | ||||||||||||||||||||||||||||
ウ | 展 開 | |||||||||||||||||||||||||||
(4) | 授業の結果と考察 | |||||||||||||||||||||||||||
ほぼイメージ通りの授業を実施することができたが,事前の動作テストでいくつかの問題点に気がついた。 一つはキャッシュの問題。Webサーバ上のデータを更新しても,ブラウザでは前のデータを表示してしまって,見られないことがよくあった。ブラウザやWebサーバなどでキャッシュしていたデータを表示してしまうためである。 ブラウザの更新ボタンを押したり,インターネット一時ファイルの削除を行ったりして対応したが,なるべくキャッシュしない設定で使った方がよい。 次にブラウザの表示の問題。たとえば,板書事項として作った一太郎形式のデータファイルをInternet Explorerで表示させようとすると,あるパソコンでは表示できるのに,別のパソコンでは表示できないことがあった。 一太郎Ver.12以降がインストールされていないと表示できない(Ver.10/11では不可)ようで,Webページを検索して調べたところ,Internet Explorer 5.5(SP2)以降では「JS文書ビュアーActiveXプラグイン」が必要とわかり,表示できないものにはインストールして表示できるようにした。 Internet Explorerは,いろいろな形式のファイルを自分自身で表示できて便利だが,環境によっては表示できない場合もある。一方,Netscape Navigatorでは,そのデータ(拡張子)に対応したソフトを起動して表示するため,研究授業では主にこちらを利用した。 もう一つは,自作の"autoplay.html"というJavaScriptを使ったソフトでHTMLファイルの中の画像を自動切り替えしておき,ディジタルカメラで撮影した作品(生徒が記入したプリント)の画像ファイルを別のパソコンから送って上書すると,Internet Explorerでは新しい画像ファイルを表示することが出来たが,Netscape Navigatorでは表示できなかった。ブラウザの表示の違いやソフトの不都合など,パソコンの使用には是非1度は実際にテストしてみる必要性を感じた。 |
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図8−3 autoplay.htmlを使った画像転送の例 |
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(5) | 授業研究の成果 | |||||||||||||||||||||||||||
@ | Webサーバ(イントラネット)利用の成果 | |||||||||||||||||||||||||||
Webサーバに授業のデータをおくことにより,校内LANにつながるすべてパソコンからサーバにアクセスしてそのデータを利用できるようになった。 授業資料などのデータを作成してサーバに整理してのせておき,毎年あるいは各クラスで何回も使い,改良を重ねていけばよりよい授業ができると思う。 また,今回利用したフリーのWebサーバソフト「AN HTTPD」は日本語対応などの面で使いやすいく,図に示すようにファイルサーバの代用としても使うことができる。 |
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このような使い方は他のソフトでもできるが,AN HTTPDの場合は,ソフトのインストールから実際に使えるように設定するまでが簡単であるし,セキュリティ面でも優れている。 | ||||||||||||||||||||||||||||
A | PowerPointや一太郎ファイルを使ったプレゼンテーションによる成果 | |||||||||||||||||||||||||||
板書事項をPowerPointや一太郎などのデータファイル(一太郎ではスライドモードで表示させる)としてWebサーバに保存しておき,ダウンロードしてプロジェクタで映して利用することで板書時間が短縮され,より効率的な授業ができるとともに,授業の説明にも集中できる。 | ||||||||||||||||||||||||||||
B | LAN利用の成果 | |||||||||||||||||||||||||||
別の場所で撮影した画像をLAN経由で送ってすぐに表示させることができた。このような使い方ができると,別の場所での他の生徒の体験が共有できたり,最新の情報を示すことが可能となる。 | ||||||||||||||||||||||||||||
(6) | 今後の課題 | |||||||||||||||||||||||||||
@ | 動作環境の構築 | |||||||||||||||||||||||||||
Webサーバにしたパソコンには,いろいろなソフトが入っていたため長く使っていると動作が不安定になり,3年以上も前の機種なので処理速度も気になった。 その後,システムを再イントール,組み込むソフトをなるべく減らし,スクリーンセーバーや電源オプションもすべて「なし」に設定。RAMも新たに128MB増設するなどの対処を行った結果,安定な状態が確保できた。 また,ファイルを送るだけのWebサーバならば,少し前のパソコンでもそれほど処理速度は気にならないが,電子掲示板などのCGIプログラムを動作させるとスピードの遅さが気になり,パソコンなどの性能アップも課題となる。 ソフトはLinux+ApacheあるいはWindows2000Server+IISの方が一般的であり,そちらの方がよいと思う。しかし,機能が豊富になるとセキュリティなどの設定も面倒になり,スキルなども考慮した結果,現在もAN HTTPDを使っている。 |
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A | セキュリティ | |||||||||||||||||||||||||||
今回Webサーバにしたパソコンは,FTPがなく,共有フォルダを設定したパソコンとも別のもので,校内LANの中のみで使うためハッキングなどの問題は起きにくいと考えられるが,念のためWindowsUpdateを頻繁に行い,AN HTTPDも最新版を使う,OutlookExpressなどのメールソフトは使わないことなどに注意している。 しかし,Webサーバ以外にインターネット検索やワープロとして使うことがあり,ウィルス感染の心配がある。そのため,ウィルススキャンを頻繁に行い,インターネットへの接続は最小限にとどめることに注意している。 また,共有フォルダやファイルサーバを長時間利用する場合には,アクセスに適当な制限をかけることが必要である。 |
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B | 新たな教材の作成 | |||||||||||||||||||||||||||
現在のところ,Webサーバに教材として載せてあるデータ数は20程度であり,授業で頻繁にサーバを利用するまでには至っていない。今後,板書事項や資料・教材などをどんどん作って載せていきたい。 | ||||||||||||||||||||||||||||
【参考文献およびURL】 | ||||||||||||||||||||||||||||
「フリーソフトを使ってWindowsで自分のWebサーバを立てる」 飯島 弘文,鹿島 博 著ソフトバンク パブリッシング社 |
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「Windows XP/2000 インターネットサーバ構築ガイド」 安井 健治郎 著 毎日コミュニケーションズ社 |
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「実践Apache2.0 Webサイト構築 Windows版」 宇津木 兵馬 著 ソーテック社 |
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「図解 LANがわかるとネットワークに強くなる」 加藤 佐一 著 メディア・テック出版 |
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「図解 通信プロトコルがわかるとネットワークに強くなる」 上山 勝也 著 メディア・テック出版 |
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AN HTTPD http://www.st.rim.or.jp/~nakata/ |
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autoplay.html(正式ソフト名「ATPSオートプレイ」) http://www.vector.co.jp/soft/other/java/se299261.html |