【授業研究3】 | 小学校第6学年体育科「跳び箱運動」 −イントラネットにおける自作Web教材の活用− |
下妻市立上妻小学校* 教諭 中村 竜雄 |
(1) | 校内LAN利用のねらい | |||
本校では,コンピュータやインターネットの日常的な利用と動画を使ったWeb教材を効果的に活用するために,IISによるWebサーバを構築し,イントラネットでの運用を行ってきた。本Web教材では,技能を習得する学習に効果的に活用するために動画を豊富に使用している。動画ファイルはサイズが大きいので,ISDN回線によるインターネットでは運用が難しい。したがって,イントラネットでの運用が不可欠になった。また,指示待ちの学習ではなく,児童の主体的な学習を支援するために電子掲示板を使い,児童間での意見やアドバイスを交換できるようにするためにネットワークを利用することとした。 | ||||
(2) | 校内LANの利用環境 | |||
図3−1 校内イントラネット |
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・ | サーバ用コンピュータ1台 ・教師用2台(職員室1台,PC室1台) | |||
・ | 児童用25台(PC室10台,図書室2台,普通教室3台,ノートパソコン10台) | |||
(3) | 授業の実践 | |||
@ | 単元名 「跳び箱運動」 | |||
A | 運動の特性 | |||
ア | 一般的特性 | |||
跳び箱運動は,今できる跳び越し方をさらにみがいたり,できそうな新しい跳び越し方に挑戦したりし,できるようになることを楽しむ運動である。 | ||||
イ | 児童から見た特性 | |||
・ | 跳び箱運動は,これまでの経験が大きく左右する運動である。 | |||
・ | 「できる」「できない」がはっきりとわかる運動である。 | |||
・ | 跳び箱の高さや技術の難易度に挑戦し,達成したり,克服したりする喜びを味わえる運動である。 | |||
B | 学習のねらいと道筋 | |||
ア | 学習のねらい | |||
・ | 自分のめあてをもって,今できる技よりも高度な技をみがいたり,より高い段数を跳ぼうとしたりすることができる。 | |||
(関心・意欲・態度) | ||||
・ | 跳び方のしくみを知り,自分のできばえを確認しながら跳ぶことができる。 | |||
(思考・判断) | ||||
・ | 今できる技より高度な技やより高い跳び箱の段数に挑戦し,できるようにする。 | |||
(技能) | ||||
イ | 学習の道すじと時間配分(7時間扱い) | |||
C | 準備・資料 | |||
跳び箱 踏み切り板 マット コンピュータ 学習ソフト「Web教材で学習しよう」 イラストカード 学習カード タイマー プロジェクタ スクリーン |
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D | 単元学習の展開 | |||
(4) | 授業の結果と考察 | |||
4台のコンピュータは必要に応じて自由に活用できるようにした。図3−2のように練習場所のすぐそばに設置してあるコンピュータを自由に活用する児童が多くいた。 児童の跳び箱が跳べない原因の多くは,踏切の弱さと着手の場所が後方すぎることにあった。コンピュータを活用した児童が,Web教材の中の連続写真のページを見て,「『バン!』と両足でふみきろう。」というアドバイスを得たり,着手の場所については,「とびばこの前の方に手をつこう。」というアドバイスを得たりするような場面がみられた。授業の中で,着手のヒントをつかんだ児童が,さらに電子掲示板への書き込みを行うなど,Web教材や電子掲示板を利用しながら,跳び方の理解を広めることができた。 図3−3は,本単元を通して活用した学習カードである。コンピュータの活用状況を把握するために「PC」という欄を加え,コンピュータを活用した児童には,「○」を付けさせた。 校内イントラネットによって,教材をWeb上で活用できるようになった。そのため,従来の校内LANをより効果的に活用することができたといえる。また,必要に応じて,いつでもコンピュータを使えたので,コンピュータに群がって本来の学習が疎かになるということもおきなかった。 |
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(5) | 授業研究の成果 | |||
@ | 校内イントラネットの整備 | |||
今回の学習におけるLANは,図3−1に示したとおりである。校内LANを組んだだけでは,ファイルや周辺機器の共有,インターネットに複数のコンピュータで接続できる,というメリットしかない。しかし,IISを利用することでイントラネットWebサーバを構築・運用していくことができるようになった。そして,校内の多くの場所に拡張したことで,校内(普通教室・特別教室・体育館)でWeb教材を効果的に活用することができた。 | ||||
A | ASPでの電子掲示板の設置 | |||
今回のように1学級の学習だけでは,データ量は不足してしまうという反省点はあったが,着実にデータの蓄積ができた。ASPによる電子掲示板は,情報の受信・発信のほかに情報を処理し,蓄積し,処理した情報を提供できるので,児童同士の情報交換に大変役立つことがわかった。そして,そのような学び合いは,教師のアドバイス以上に,効果的に児童に支援できる場面もあった。 | ||||
B | 学習後の児童アンケート結果 | |||
本単元終了後に,アンケート調査を実施した。図3−4は,Web教材を使った感想である。従来の跳び箱より,「おもしろい」と感じる児童が大部分であったので,学習意欲を高めるのに大変効果的であったといえる。 また,図3−5は,Web教材の内容に関するもので,動画を使ったことで「動き」を理解するには,普段の先生や友だちの模範演技を見るより,大変効果的だったことがわかる。 そして,図3−6もWeb教材の内容に関するものである。単なる動画よりも,動画をスローモーションや連続写真に編集することで,児童の理解は高まることが証明されたのではないかと思う。 |
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(6) | 今後の課題 | |||
@ | 電子掲示板の活用 | |||
図3−7は,本学習での電子掲示板の書き込み例である。今回は,1クラスのみの実践のため,電子掲示板の書き込み件数が少なかった。そのため,電子掲示板内の書き込みに重要性を感じない児童もいた。児童は,動きを理解するためには,動画や連続写真は繰り返し活用するものの,電子掲示板を使った児童同士の意見交換は十分行えたとはいえない。したがって,電子掲示板を効果的に活用するためには,1クラスだけではなく,複数のクラス,または異学年で本Web教材を活用しなければならないと感じた。そうすることによって,データ量を増やすことにつながり,電子掲示板の活用が促進できるはずである。また,ASPのプログラムは,アンケート集計にも利用できるので,イントラネット上で授業後に意識調査や活用状況を調査することも可能である。 | ||||
A | Web教材の工夫,改良 | |||
Webページは,ページ数を増やしたり,コンテンツを変えたりすることが容易にできる。本実践は,跳び箱の跳び方を中心とした教材だったが,これに「教具の使い方」や「つまずきの解消法」を紹介するページを加えるとより使いやすくなるのではないかと感じた。また,本Web教材は,体育以外の教材でも活用できるように「図画工作」「家庭」「社会」「理科」の教材も作成してある。今後は,児童がより使いやすく,よりわかりやすい教材へと工夫,改良していかなければならないと考えている。 | ||||
B | 児童のコンピュータリテラシの向上 | |||
電子掲示板を授業の中で活用すると文字入力に時間がかかり,本来の跳び箱の練習時間が短くなることがあった。したがって,電子掲示板をより効果的に活用し児童の学習を支援するためには,児童の文字入力の技能を高める必要がある。それには,普段からコンピュータに慣れ親しんでいることが最も重要であることは言うまでもないが,発達段階に応じて,文字入力のためのソフトウェアを利用したり,ローマ字入力を支援するためのローマ字一覧表を準備したりする必要がある。 | ||||
授業研究会実施の様子 第1回授業研究の様子 (於 下妻市立上妻小学校 平成14年10月8日実施) |