実践例5
モデル2を基にした校内支援体制
既存の委員会を充実させた支援体制


T 校内支援体制ができるまで
   「校内支援委員会」と「合同学年会」を,こんな順序で作りました
   校長先生に提案して,検討していただきました。
   運営委員会で,原案を検討しました。
   職員会議で,全職員の先生方に承認をいただきました。
   校内支援委員会と合同学年会の組織ができました。
U 組織の構成員
   校内支援委員会
生徒指導主事 ・・・  中心になって動いています。
教務主任 ・・・  担任外の先生の調整等にあたります。
養護教諭 ・・・  保健的な視点から,アドバイスをします。
特別支援教育主任 ・・・  個別指導等の直接支援の調整をします。
該当児童担任 ・・・  実態,具体的な支援等について,必要な情報を提供します。
該当児童学年主任
   合同学年会
各学年の担当者と支援教育担当者で構成されます。
V 組織の役割
 
校内支援委員会 ・・・・ 必要に応じて随時開きます。支援の具体的な方法について計画を立て,その連絡調整にあたります。
合同学年会 ・・・・ 各学年に特別支援教育担当者が入り,定期的に情報を交換したり,支援方法について話し合いをしたりします。
W 支援体制の年間計画
 
就学指導委員会 生徒指導対策委員会 学校保健委員会 校内支援委員会 合同学年会
 学期に1回開きます。  毎月1回定例の会議をもちます。  学期に1回の委員会が開かれます。  必要に応じて随時開かれます。身軽さが売りです。  隔週で,開かれ支援体制などの話し合いをします。
X 集団参加に問題のある子の支援体制
  どんな子ども
     中学年の子どもです。今までも,生活面で何かと目立ち,情緒教室や言葉の教室で,個別指導を受けていた子どもです。
     注意の切り替えが難しく,興味のある物に熱中すると,学習が始まっても教室に戻ることができません。特に,中休み終了後,昼休み終了後はなかなか教室にもどることができません。
     動物が好きですがトンボの羽をむしったり,乳幼児に見られるような行動をしたりすることもあります。
  気づきのポイントは
     低学年から,全職員で,共通理解をしていた子どもですので,全職員の目にとまっていました。
     校務員さんの仕事に興味があり,よく行っているので,校務員さんからも,その子どもの情報が入ってきました。
     担任と支援担当者との情報交換でも,最近の行動の問題点が話題になり,なんとかできないだろうかということで,支援委員会を開くことになりました。
  こんな支援体制で
    (1)  支援の経過
       第一回目の校内支援委員会で,支援方法について話し合い,全職員で共通理解を図った上で,校内の支援体制をつくることになりました。
 そのなかで,次のような問題点が明らかにされました。
     
  • 学習が始まっても教室に戻らない。
  • 学習中,質問が終わらないうちに答えるなど,学習の基本的な習慣が身に付いてない。
  • 衝動的な行動が多く,興味の向くものにすぐ気を引かれる。
  • 下校時,寄り道が多く6時すぎても家に戻らないことが多い。
       これらの行動に対する,具体的な対応策について共通理解を図り,実行することになりました。個別指導は,支援担当が当たり,教室への連れ戻しには,担任外があたることにし,気がついた教師も,声をかけるという共通理解を図りました。共通理解を図るのに,支援委員会で作成した支援カードを使い,「だれが」「いつ」「どんな」支援をするのか具体的にしました。
    (2)  支援の実際
      担任への支援
 学級での指導に困っている担任とは,子どもへの接し方についてどうしたら いいのかという具体策について話し合いました。
  • ほめる機会を多くする。
  • なるべくしからないようにし,どうすればよいのかを諭す。
  • しかるときは手短に効果的にしかる。
  • できそうな目当てを設定し,できたらほめる。
 を確認しました。また,学習が始まっても教室に戻らないときは,職員室にインターフォンで連絡をし,担任外の先生に探してもらうことにしました。特に,業間休み後と昼休み後には,気を付けてもらうようにしました。
      児童への支援
 学習や日常生活での基礎になる社会的な技能の練習をしたり,心理的な安定を図ったりするために,取り出しによる指導を行いました。
 取り出しの指導では,友達の話を聞く,順番を守る,ゲームで負けても自分を押さえるなどの練習を小集団で行いました。また,苦手な教科の補充的な学習をしたり,短時間の好きなゲームをしたりして,個別による指導で,心理的安定を図りました。
 活動全般を通して,どんな小さなことでも丁寧にほめるようにして,なるべくしからないように配慮しました。また,これからやろうとすることに対しては,必ず言語化をさせ,一呼吸おいて行動できるように練習をしてきました。
      保護者の協力
 本児の困った行動の一つに,下校時に寄り道をして,なかなか帰宅できないということがありました。かなり遅くなることもあり,安全面でもそのままにしておけないということで,保護者の協力を得て,下校時には,学校まで迎えにきてもらうことをお願いしました。
      共通理解
 まず,学習が始まっても外で遊んでいるのを見かけたら,必ず声をかけることや,時間的に余裕のある場合は,教室へ連れ戻すか,職員室にいる先生に連絡することを確認しました。また,自分の行動を自分でモニターできるように,これから行動することを言語化することが効果的だという確認をしました。
    (3)  支援の結果
     
 全体的に落ち着いた生活が送れるようになってきています。また,始業時のチャイムによって教室に戻ってくることが,以前に比べてできるようになってきています。
Y まとめ
   支援体制づくりのポイント
     校内支援体制は,既存の組織をなるべく変えないで,ということを中心に考えましたので,比較的容易に作ることができました。
 支援体制を作るよりも,実際の運用面において,その難しさがあります。特に支援委員会の話し合いの時間をいつもつのか等の調整が難航します。その調整をしたり,話し合いをリードするのに,生徒指導主事のまとめる力が役にたちました。また,共通理解を図ったり,問題点を明らかにしたりするのに,支援シートも役にたちました。支援シートを作成することで,いつどんな問題があり,どんな支援が必要なのかはっきりさせることができました。
 具体的な支援においては,校内の人的な資源をいかに活用するかも大切です。いつだれがどんな支援が可能なのかをはっきりさせることで,支援が効率よく行えました。また,校内の人的な資源を活用したり,共通理解を進めるうえでも,効果的でした。また,人的な資源の補助ということで,昨年度からボランティアの協力を得ています。
   今後の課題
     校内支援体制をつくって1年目ですので,今後解決しなければならない課題がいくつかあります。
 まず校内の組織の見直しが必要かと思います。今年度は,既存の組織を生かしてなるべく変更をしない形で,組織をつくりました。そのため,まだ整理が必要な組織があります。特に,生徒指導対策委員会,就学指導委員会等の組織がうまく統合され,効率的に活動できると,その運営がよりスムーズにできると思います。
 また,今年度は,支援体制をつくるにあたり,ほぼ校内での支援を中心に行ってきました。より専門的な知識や対応が必要とされるケースもありますので,外部の専門機関との連携をいかに進めるかも大きな課題だと思います。特に,医療面でのケアーが必要な場合や,人的な資源がより必要になった場合など,外部の機関との連携を図ったり,協力を得るなどの結びつきが必要になります。
 さらに,校内支援体制の充実を図るためには,こまめに校内支援委員会が開けるような日程を組む必要があります。身軽さが売りの校内支援委員会ですが,定期的に開催できるように,月や週の行事にきちんと位置づけることが必要だと思います。


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