実践例4
モデル2を基にした校内支援体制
既存の委員会を充実させた支援体制


T 校内支援体制ができるまで
 
U 組織の構成員
   生徒指導主事,保健主事,教育相談担当者(情緒学級担任),気になる子どもを持つ担任及び学年主任,特殊教育担当者代表,養護教諭
 ケースに応じてメンバーが変わることもあります。
V 組織の役割
   月に一度定期的に話し合いをもちます。また,学級担任や保護者の要望に応じて随時特別支援委員会を開くようにします。
   
  •  学習面や行動面における一人一人の実態把握
  •  全職員の共通理解と組織的な対応のコーディネート・指導計画作成・実践
  •  不登校・ADHD(注意欠陥/多動性障害)・LD(学習障害)やHFA(高機能自閉症)等に関する研修の企画
  •  関係諸機関との連絡調整
   月に一度開かれる校務会の中で,特別支援委員会での話し合いや支援をしている子どもの実態及び経過等について報告し,共通理解を図るようにします。
W 支援体制の年間計画
 
X 友達とのかかわりをもちにくい子ども
 

どんな子ども              
     同年齢の子どもと仲間関係をつくることが困難です。ことばでのやりとりや友達の気持ちを思いやったりすることが苦手で,トラブルを起こすことがあります。
     ことばの遅れはありませんが,含みのあることばの本当の意味が分からず,ことば通りに受け止めてしまうことがあります。また,年齢に応じたごっこ遊びや物まね遊び等は苦手です。
     天気予報に興味があり,毎朝担任にその日の天気と気温を報告します。
     担任の全体への指示では動けなかったり,学習に取り組めなかったりすることがあります。国語では読んだり書いたりすることはできますが,自分で考えて文章を書くのは苦手です。算数は得意で計算はよくできます。図工には興味・関心が持てないようで一人で作品を作り上げていくことは困難です。体育では,自分の並ぶ位置がわからないことがあります。
  気づきのポイントは
     就学時健康診断では目立たなかったのですが,幼稚園からの申し送りで,年少の頃は落ち着きがなく多動傾向があったと聞いていましたので,注意して見ていました。
     同年齢の友達にはあまり関心を示さず,一人でいることを好んでいるような所が見られました。
     学習に取り組まずに,机に突っ伏してしまう姿が見られました。
 

こんな支援体制で              
    (1)  支援の経過
      @  担任の気付き
 担任は子どもを観察し,友達との関係が結べないことや全体への指示では動けないこと,授業中の様子等から集団の中での指導だけではなく,特別な支援が必要だと感じました。
      A  特別支援委員会での話し合い
 担任から学級での問題点についての報告を受け支援方法の検討をしました。また,家庭での様子等を聞くために保護者との面談を行ったり,客観的な情報を得るために心理検査を実施したりすることにしました。
      B  支援方針の決定
         学習に対してはTTの形を取り,1学期の早い段階で授業中の学習への取り組み方が身に付くよう支援することにしました。
         友達とのトラブルを減らしたり,集団生活に適応できるようにするために,ソーシャルスキルトレーニングを行うことにしました。
     
      C  支援の役割
    (2)  支援の実際
      @  TTについて
 TTの形式をとることにした教科は,国語,図工,体育です。特に国語は,ノートをとらずに机に突っ伏していることが目立つ教科でした。図工はどんな作品にするか考えることができず一人では取り組むことができませんでした。体育は他の子どもと同じペースで着替えができずに遅れてしまったり,自分が並ぶ場所が分からなくなったりしていました。算数と生活科は,年度当初からの計画で低学年担当の社会人TTが入ることになっていましたので,共通理解を図った上で支援しました。
       
国語・算数 ・・・ どこに何を書くのか具体的に指示したり,周りの友達をモデルとして活動できるように言葉かけをしたりしました。
生活科・図工 ・・・ 支援者とどのように作りたいかを話し合ったり,友達の作品をモデルにしたりして取り組ませました。
体育 ・・・ 自分の位置がなかなかつかめないので,隣りの友達にも協力してもらい,ことばをかけてもらいました。
      A  ソーシャルスキルトレーニングについて
         ソーシャルスキルトレーニングの進め方
           週に1時間,小集団の指導を行い,集団生活に適応できるようにしたいと考えました。中学年の集団適応が苦手な子ども,低学年の登校しぶりがある子どもと参加した子どもは3名です。メインティーチャーを情緒担当者,サブティーチャーを言語担当者が務めました。
         ソーシャルスキルトレーニングにおける指導方針
         
  •  集中して聞くことができるように話を聞く態度を養います。
  •  ことばでのやりとりができるようにします。
  •  相手の気持ちを考えて行動することができるようにします。
  •  最後まで課題をやり通すことを積み重ね自己有能感を高めるようにします。
         展開例
         
  •  あらかじめ学習内容を黒板に表示しておきます。
  •  一つの学習が終わる度に支援者と話し合いながら自己評価をしていきます。
    その結果を自分の名前の下に書き入れ,視覚的にとらえられるようにします。
         
めあて じゅんばんをまもる
A男 B男 C男
1 あいさつ
2 じこしょうかい
3 よくきいて(ゲーム)
4 ボーリング
5 あいさつ
    (3)  支援の結果
       学級担任の気付きが早かったために,4月後半から支援を始めることができました。支援を開始するに当たって,校長より「早い段階で望ましい学習態度を形成していくことが大切である」というアドバイスを受けました。学年の始まりに望ましい学習への取り組み方を身に付けることは,その後の学校生活にも大きくかかわってきます。このケースでは,早い段階からTTに入り,集中的に支援を進めることができたことは大変効果的だったと思います。その結果,授業の準備をきちんとするようになったりよい姿勢で話を聞くようになったりしました。また,国語では,声かけをしなくても周りの友達と同じようなペースで書くようになってきました。現在は少しずつ段階を追って,TTに入る時数を減らしています。
 友達関係では,目に見える変化はありませんが,週に一度の小集団学習を楽しみにし,友達とのゲームに喜んで参加するようになりました。トラブルはまだありますが,まずは,友達と一緒に活動する体験を重ね,人とかかわることの楽しさを味わってほしいと考えています。その中で友達の気持ちを考えたり,トラブルを回避したりするスキルを身に付けていってほしいと思います。
Y まとめ
   支援体制づくりのポイント
     本校では,障害のあるなしに関わらず,学級の中にいる気になる子について話し合いをし,その結果によって支援をしていくことにしました。そのためには,学校全体の問題としてとらえることが大切になってきます。そこで生徒指導主事がコーディネーターとなり,話し合いや支援の段取りを進めることにしました。
     特別支援委員会の大きな役割として,子どもの支援を第一に考え,動きやすい委員会にしたいという考えから組織を小規模にしました。校長,教頭には,話し合いの結果や支援の経過等を報告し,それに対してのアドバイスを受けながら,支援方針の検討を行い,役割分担にそってそれぞれの立場で支援を行うことができたことは効果的でした。
     特別支援委員会を開き,話し合いを進める中で本校独自で作成した支援シート(資料参照)を用いました。担任が子どもの実態を記入した上で,特別支援委員会に参加することで話し合いが効率的に進んだり,子どもの実態がとらえやすくなったりしました。また,支援方針や結果,支援計画の修正等も記入するようにし,支援の経過が分かるようにしました。
   今後の課題
     別支援委員会は子どもの実態に合わせて随時開くようにしましたが,時間の確保が難しいことがありました。曜日や時間等を決めて週時程表の中に位置付けることも一案ではないかと感じました。
     支援を必要とする子どもが複数いた場合,充分な支援を行うことは,人的にも時間的にも困難になります。本校は,職員研修の中で何回か児童理解や障害に関する研修を実施してきましたが,さらにその中味を充実させ,支援の方法等についての充分な研修をすることが重要だと思いました。
     ケースによっては,医療機関や外部機関と連携を図ることが必要な場合もあると思います。専門的な立場からの助言指導をもとに,効果的な支援をしていくことも重要なことだと感じました。


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