実践例2
モデル1を基にした校内支援体制
組織を統合した新しい支援体制


T 校内支援体制ができるまで
   平成12年度まで
     気になる子どもに関する共通理解,研修会,支援対策はLD研究部会を中心に推進してきました。次年度校内支援委員会立ち上げに向けて,校内での位置付けを明確にし,その構成メンバーや役割について運営委員会や研究部会において検討を重ねました。
   平成13年度
     職員会議において,校内支援委員会を中心とした校内支援体制について共通理解を図りました。担任ひとりが問題を抱え込むことのないように,学校全体の問題として全職員で知恵を出し合い取り組んでいく方向性を明確にしました。
   平成14年度
     校内支援委員会の小委員会的な実践チームの必要性が考えられ,支援チームを立ち上げ,校内支援委員会開催の準備,子ども支援についての検討(ケース会議)及び実践と同時に通常学級担任,保護者への支援も行ってきました。
U 組織の構成員
 
校内支援委員会 …… 校長 教頭 教務主任 研究主任 生徒指導主事
対象児学級担任及び学年主任 養護教諭 特殊学級担任
支援チーム …… 教務主任 生徒指導主事 特殊学級担任
(検討ケースにより担任及び学年主任参加)
V 組織の役割
   校内支援委員会
     学校全体の支援体制の拠点としてその活性化を図っていきます。
( 毎月1回の定期的な話し合いの他に必要に応じて随時実施します。)
    (1)  気になる子どもの実態を把握します。
       問題の早期発見と実態把握(チェックリストの活用)を行います。
    (2)  リストアップされてきたケースに対する支援方法について検討します。
       クラスの問題を学年の問題として,学年の問題を学校の問題として全職員の様々な情報,知識,技能を動員して効果的な支援策を検討していきます。
       巡回相談員による指導を実践に生かしていきます。
       「増やしたい行動・減らしたい行動」のアンケートを活用します。
    (3)  全職員の理解を深めるための研修体制づくりを行います。
       専門機関との連携を図り,子ども一人一人の認知や表出の特性について全職員が学び合い理解し合う機会をつくります。
    (4)  校内における共通理解・共通対応の体制づくりを行います。
       学習カルテ(資料参照)をもとに情報交換の場を設定します。
       学年会において支援状況を確認します。(学年研修)
       支援シートの活用を推進します。
   支援チーム
    (1)  具体的な支援方法について検討(ケース会議)し,支援活動を行います。
    (2)  通常学級担任及び保護者への支援を行います。
    (3)  校内支援委員会開催の計画準備を行います。
W 支援の年間計画
 
X LDが疑われる子の支援体制
  どんな子ども
     知的には高いが,集団の中での集中力が持続しにくく,全体に対する話や指示が入りにくい中学年の子どもです。また話題に沿った会話をすることや一定の姿勢を保つことも難しいです。書字に関しては,筆圧が弱く枠の中に文字を書くことが難しいという状況です。自分の苦手なことについて自覚していて,なんとなく自信のない表情が気になる子どもです。
  気づきのポイントは
     学級集団の中では, 指示が受け取りにくいため,学習場面での取りかかりの遅れやしばしば担任に聞き返しに来るという状況が見られました。また友達との会話場面では微妙なタイミングのずれがあり,自分の言いたいことが相手に分かってもらえないという経験が積み重なりました。そのため,学校生活全体に自信のない状況が見られました。
  こんな支援をしてみました
    (1)  支援の経過
@ リストアップ(担任から保護者から)
↓  子どもの実態を把握するための情報を整理
 学級における問題点(学習カルテ指導記録を参考にして)
A 校内支援委員会において支援決定
↓  指導方針検討のための情報収集
 支援チームによる心理検査(K−ABC,WISC−V)の実施
 指導方針について保護者との話し合い
 指導方針の決定
B 支援方法についての検討(巡回相談員による指導)
↓  学級での配慮事項
 学年会及び支援チームによる指導方針の検討
 個別指導の実施
    (2)  支援の実際
     
    (3)  支援の結果
       学級においては,学習場面での担任による個別支援が定着し,安定した状態で学習に取り組めるようになりました。板書を書き写す等の場面では声かけを多くし,できた時には認めるという対応を継続したことにより文章を書く意欲も高まりました。また友達との関わり場面も増えて表情が明るくなってきました。個別学習では苦手とする課題に対しても集中して取り組むことができました。また会話場面では少しずつ相手とのやりとりのタイミングが理解できるようになり会話がスムーズになってきました。
Y まとめ
   支援体制づくりのポイント
     支援委員会における校長先生や教頭先生のリーダーシップが有効でした。
     教務主任の先生が積極的にかかわってくれたことで,学校全体をスムーズに動かすことができました。
     学年研修を活用してのケース会議(支援チームも参加)は子どもの支援の状況を学年全体で把握し検討することができ,有効でした。
     巡回相談員の先生との連携により,子どもへの対応について具体的なアドバイスを受けることができ,即実践に結びつけることができました。
     学習カルテを使っての校内研修は共通理解を図るために有効でした。
     支援シートを有効に活用することにより,子どもへの共通対応がスムーズにできるようになりました。
   今後の課題
     校内支援委員会において支援が必要であると判断した子どもへの支援の場と方法を拡大することが必要であると思います。(TTやオープンルーム等)
     周囲の子どもの理解が難しいタイプの子どもへの支援方法を研究していきます。
     支援チームによる子ども支援,保護者及び通常学級担任への支援の活性化をさらに図ることが必要であると考えられます。
     支援を必要とする子どもの早期発見及び早期対応を可能にするための研修体制をさらに充実させていきたいと思います。
資料
「気になる子どもの学習カルテ」
「気になる子どもの支援計画(全体図)」


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