授業研究
   研究主題に関する基本的な考えと実態調査の結果を踏まえ,子どもの知的な気付きを大切にする生活科学習の指導の手だてを講じて授業研究を行った。
 【授業研究1】
   小学校第1学年「あきとなかよし」における子どもの知的な気付きを大切にする生活科学習の指導の在り方
  (1)  授業研究のねらい
     本単元では,身近な自然の中での季節の変化を感じ,友達とかかわりながら自然の素材などを利用して遊ぶものを作ったり,遊び方を工夫したりする活動を通して,様々な気付きが生まれると考える。そこで,活動や体験を通しての様々な気付きを自覚し,新たな活動を広げられるように,知的な気付きを大切にするための支援の在り方について研究する。
 
  (2)  子どもの知的な気付きを大切にするための手だて
     活動や体験の中から知的な気付きが生まれるように,支援を五つに分類し,実施する。
   
 体験活動を重視した単元構成の工夫 (手だてT)
 地域の自然と多くかかわることができるように,秋探検を実施する。
 児童の思いや願いを引き出すための支援 (手だてT)
 「チャレンジマップ」を活用し,児童の活動への思いや願いを引き出せるようにする。
 活動の中で楽しく気付きを生み出すための支援 (手だてU)
 「はっけんビンゴ」を活用し,楽しみながら,様々な気付きができるようにする。
 子ども自身が気付きを自覚できるようにするための支援 (手だてV)
 「はっけんカード」「わくわくはっけんマップ」「サウンドマップ」などを活用し,一人一人の思いや気付きを表現し,伝え合うことで,気付きを自覚できるようにする。
 気付きを深めるための支援 (手だてW)
 「ふりかえりカード」を活用して自分の活動を振り返ったり,気付いたことを発表したりして,互いのよさに気付いたり,次の活動への思いを深めたりできるようにする。
  (3)  求める子どもの姿
   
 進んで自然にかかわり,友達と楽しく活動しようとする。
 自分の思いや願いを生かして活動し,気付いたことを表現することができる。
 友達の活動の工夫や自分の活動のよさなどに気付く。
  (4)  授業の実践
     単元 あきとなかよし
     単元の目標
       身近な自然に関心をもち,落ち葉や木の実などを見つけたり,それらを使って友達と楽しく遊ぼうとする。
        (関心・意欲・態度)
       秋の自然物を使って遊んだり,秋に対する自分なりの思いや気付きを工夫して表し,友達に伝えたりすることができる。
        (思考・表現)
       落ち葉,木の実,虫などに触れたり,それらを使って遊んだりする活動を通して,身近な自然の変化や友達と一緒に遊ぶことの楽しさに気付く。
        (気付き)
     単元について
       児童は,1学期に,草花を栽培したり,公園を探検したりするなど,自分なりの思いや願いをもって自然とかかわる活動をしてきた。ここでは,身近な自然に目を向け,季節の変化を体全体で感じ取ることができるようにしたい。そして,活動や体験を通しての発見や驚きを友達や先生に伝えたいという思いを大切にし,児童が気付いたことに共感したり認めたりしながら知的な気付きを深めることができるようにしたい。
     活動計画(21時間)
     
     本時の活動
      (ア)  目 標
         友達とかかわりながら,秋探しを通しての発見を工夫して表現することができる。
      (イ)  支 援
       
 「あきさがしビンゴ」や「わくわくはっけんマップ」を活用し,探検で発見したことや気付いたことなどを振り返ることができるようにする。
  (手だてV)
 夏と秋の公園探検の写真を掲示し,季節の変化に気付くことができるようにする。
  (手だてV)
 活動を振り返る場を設定し,自分のがんばりや友達のよさに気付き,新たな活動への意欲を高められるようにする。
  (手だてW)
 グループになって活動し,お互いの工夫やよさに気付くことができるようにする。
  (手だてW)
      (ウ)  展開  (○は支援,◎は評価,UからWは手だて,Dは評価規準)
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     教師の支援と子どもたちの活動
       児童は,学校の周りや公園などで木の実や色づいた木の葉,虫などいろいろな秋を見つけた。発見したことや気付いたことをみんなに伝えたい,家の人にも教えたいなどという思いや願いをもって意欲的に活動することができた。ここでは,個人とグループの活動の様子と,それぞれに対する教師の支援について述べる。
     
  (5)  授業の結果と考察
     体験活動を重視した単元構成の工夫
       校庭や学校の周り,公園などでの秋探検を繰り返し行った。秋探しの活動では,ネイチャーゲームを行い,五感を通して秋の自然と直接ふれあうことができた。友達と楽しく遊んだり,見つけた秋を伝え合ったりする活動の中で,季節の変化に気付くことができた。
     児童の思いや願いを引き出すための支援
       1学期に探検した公園での秋探しをする前に,「わくわくチャレンジマップ」に,公園に行って調べたいことや,やってみたいことなどを言葉や絵で表した。このマップを活用したことにより,一人一人の児童がたくさんの思いや願いをもち,主体的に探検し,様々な気付きを引き出すことができた。
     活動の中で楽しく気付きを生み出すための支援
       児童は,校庭や学校の周りで秋を発見したが,色づいた葉や虫など視覚による気付きが多かった。そこで,2回目の秋探しの活動では,気付かせたいものの名前を書いた「あきさがしビンゴ」を活用し,発見したものの絵を描き込めるようにした。ゲーム感覚の活動の中で,五感を使った様々な視点からの気付きを引き出すことができた。公園探検では,五感を使って秋を探そうという意欲が高まり,楽しく活動しながら気付きも広がった。
     一人一人の気付きを自覚できるようにするための支援
       秋探検の際に,聞こえる音を記号や言葉で表す「サウンドマップ」を活用した。普段視覚に頼ることが多いが,聴覚を働かせて周囲の音に気付くようになってきた。公園探検終了後に,探検を通しての発見や気付き,思いなどを「わくわくはっけんマップ」に言葉や絵でまとめた。マップに表すことで,自分の気付きを自覚することができた。また探検したときの発見や気付きを写真に撮り,夏探検の写真と比較することで,季節の変化に対する気付きを改めて自覚できた。発見や気付きを知らせ合う活動では,方法の同じ児童がグループになり,見せ合ったり教え合ったりする中でお互いの思いや気付きを伝え合うことができた。
     気付きを深めるための場の設定
       活動の最後に,その活動を通して気付いたことを「ふりかえりカード」に書いた。自分の活動を振り返ることができ,また,それを発表し合うことで,友達の活動のよさに気付いたり,次時の活動への思いを深めたりすることができた。
  (6)  授業研究の成果と課題
     研究の成果
     
 「チャレンジマップ」や「はっけんマップ」を活用することで,活動に対する児童の思いや願いを引き出し,一人一人の様々な気付きをとらえることができた。
 活動を通しての自分の思いや気付きを工夫して表現し,伝え合う活動により,その気付きを改めて自覚することができた。
 「ふりかえりカード」を活用し,自分の活動を振り返る場や発表し合う場を設定することで,自分の気付きを意識するとともに,友達の活動や気付きも知り,気付きを深めることができた。
 身近な自然と繰り返しかかわることにより,様々な気付きが見られた。
     今後の課題
     
 活動や体験を通して課題をもち,自ら解決する能力を育てるための支援の在り方について研究する。
 自分の気付きを伝え合うための話し合い活動への支援の在り方について研究する。


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