研究のまとめ
   本研究では,国語科の学習及び学習指導にかかわる実態調査を踏まえて,基礎・基本を繰り返し学習できる「時間と場」の確保,学習形態や方法の工夫,学習成果の計画的な評価,及び五つの言語意識の明確化に関する手だてを講じ,授業研究を行った。以下に研究主題「発達段階に応じて言語能力を育成する国語科学習の指導の在り方」に迫るための手だての有効性の中から主なものについて述べる。
  (1)  中学校の実践に見られるような説得力のある意見文についてのスキル学習的なプリントの活用や高等学校の実践のようなレポートの書き方を示したプリントの活用や,小学校の実践のように録音機器を活用して繰り返し児童生徒の学習活動を保障したことは,児童生徒の基礎的・基本的な言語能力を高めるために有効であることが分かった。また,小・中学校の実践での学習の手引きは,その学習で身に付ける言語能力や必要な基礎的・基本的な言語能力が明示され,児童生徒の学習意欲を高めることができた。このような学習活動の中で,教師は個の学習状況に応じて必要な指導を行うことができた。
  (2)  小学校の実践では,児童一人一人へ付箋紙を用いて教師の支援の言葉を与えたことは,個別活動やグループ活動における児童の主体的な学習を成立させるために有効であった。中学校の実践では,学習の手引きに毎時間の学習予定が明記され,それを生徒は確認しながら学習目標や学習活動を進めることができた。また,学習の結果完成した意見文は中学生から市への提言という形で投稿するという,生活の中に学習を位置付けたことは,生徒の主体的な学習意欲を喚起することができた。高等学校の実践では,選択した学習課題や調査方法についてきめ細かく教師が相談に乗ることで,生徒は積極的な学習活動を展開することができた。このように,授業の工夫改善は,児童生徒の目的的な学習を保障すると考える。
  (3)  小・中学校の実践では,座席表型,一覧表型,個人別型の個人カルテを用いて児童生徒一人一人の学習状況を把握していった。これは次時の学習指導計画の修正に役立ち,児童生徒一人一人に応じて,言語能力を身に付けるために何をどのように助言していけばよいかを教師が明らかにすることもできた。個人カルテは,児童生徒が自己評価の際に使用した学習カードや自己学習確認表と評価の観点や内容と一致している。これらは教師の気づかなかった児童生徒の学習状況を知る上で参考とする資料とすることができた。
  (4)  高等学校の実践のように,課題設定の段階や課題解決の途中で,「何について」「どのようにして」「その活動がどのような価値があるのか」などを学習プリントを活用して明確に意識させたことで,生徒の学習意欲を大いに高めさせることができた。また,小・中学校の実践では,児童生徒に五つの言語意識を明確にさせることが,学習活動の目標を把握させることにつながった。さらに,自分の言語能力について自己評価する際に学習活動に沿った自己評価ができるようになることが分かった。
   児童生徒に対して,個に応じて確実に言語能力を身につけさせるためには,教師が児童生徒一人一人の言語能力をどのようにして把握するか大切なことである。しかし,そのことはまだ明確になっていないことが多く,評価の方法などについても同様である。さらに,個性の伸長という考え方の中で児童生徒一人一人の言語能力をとらえたとき,指導方法についても改善していかなければならないと考える。これらのことを今後検討していきたい。


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