【授業研究3】 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
高等学校第2学年「自分で課題を見つけ協力しながら解決しよう−『ものとことば』(鈴木孝夫)−」 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) | 授業の構想 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
高等学校における授業研究では,実態調査の結果を十分検討した上で,基礎・基本の確実な定着を図りながら,発達段階に応じた言語能力を育てる学習指導を進める必要があると考えた。そこで1年目の授業研究では,多様な読み取り方をする生徒個々が主体的に問題に取り組むために,段階的に学習活動を進めることで,国語を苦手とする生徒も得手とする生徒も表現力,語彙力をより豊かにする学習指導をおこなった。 現在,多くの生徒にとって教科書の作品は学習課題として表面的な理解に終始している。そのような現状において主体的な学習活動をおこなうためには,学習の場面として主体的,意欲的に学習活動に参加しなればならない必然性を設定することが求められている。 そこで,前年度の成果を踏まえ,2年目の授業研究では「ものとことば」という単元において,グループごとに「ことば」に関する学習課題を生徒自身が設定した後,課題解決のためこれまでの知識と経験を生かしながら効果的に参考資料を調べたり,分かりやすい例文を作成し,その分析結果を協力しながら報告書(レポート)にまとめ,発表するという学習活動を実践した。 これによって主体的な「読解→課題設定→課題解決→発表→評価」という螺旋的に高まる流れが生まれ,生徒の一人一人の興味・関心が高まり,自ら学ぶ意欲が喚起され,言語能力が育成されるのではないかと考えた。 |
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(2) | 指導の手だて | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ア | 課題設定の工夫 「ことば」のもつ様々な特色について考えることで,「ことば」に関する興味や関心を喚起する。また,「ことば」は考えようとすると用例をいくらでも集めることが容易であり,生徒自身の力で独自の考察を加えたレポートの作成が可能となるため,身近にある「ことば」を学習課題とした。 |
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イ | 学習プリントの工夫 限られた時間の中で,基礎・基本となる言語能力をより確かに培うために「学習プリント」を用意し,事前・事後の学習を取り組み易くする。また「学習プリント」を活用した読解の指導では,前年度の授業研究「私が哀号とつぶやく時(五木寛之)」をうけて,多様な読み取り方をする生徒が参加しやすい発問を設定していくことで,多くの生徒が主体的に教材に取り組みやすい状況をつくる。 |
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ウ | 学習形態の工夫 生徒の主体的な学習のために学習過程の中でグループや個別という学習形態を効果的に取り入れる。学習課題(読解→課題設定→課題解決→発表→評価)に応じて学習形態(個別→全体→グループ→全体)を変えることで,一斉授業では発揮しづらい生徒一人一人の特性を生かすことが可能となる。 第1時限においてすべての「学習プリント」を配布してしまい,個人での事前学習を要求した。これはその後の全体での読みやグループごとに課題を設定していく過程において,最初のスタートラインとなる「個人としての理解の取り組み」が,前提条件として最も必要と考えるからである。つまり生徒はグループやクラス全体でといった学習形態が変化する中で,自分の考えを確認,修正しながら学習を深めていくことになっていく。その前提となる「個別学習」を取り組み易くするために,前述したような段階的な発問を設定することで,ある程度独力で取り組むことが可能な状況を作った。 初読後に記入させた「学習プリントbP」(資料1)をもとに,「課題研究ヒント」を作成し生徒に提示する。生徒たちは任意のグループごとにそれぞれの研究課題を設定し,レポートの作成にあたる。 その際「レポート作成について」(資料2)という,レポートの構成や今回の課題解決に必要な基本となる文献を手引きとして参考にさせる。 |
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資料1 学習プリントbP 生徒の記入から 資料2 レポート作成について(一部抜粋) |
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エ | 自己評価・相互評価の工夫 教材に関する理解やレポートの作成と発表に関する「評価票」を用いて自己評価と相互評価とを実施する。「相互評価」をするため,相手の意見に注意深く耳を傾け,またこれにより自分の考えをより深めることとなる。さらに結果として生徒が意欲的に授業に参加することになる。 |
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オ | 情報の活用の工夫 各自の学習課題に必要となる参考資料を適宜提供する。その中で生徒は必要な情報を課題に応じて適切に取捨選択して用いることを学ぶ。さらに用例分析,考察,まとめといったレポート作成の作業を通して主体的に情報を活用する方法を学ぶ。 |
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(3) | 学習指導案 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ア | 単元名 高等学校 第2学年 現代文 「自分で課題を見つけ協力しながら解決しよう― 『ものとことば』(鈴木孝夫)―」 |
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イ | 目標 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ア) | 文章を的確に読んで,生徒一人一人が自分自身の課題を設定する。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(読むこと) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(イ) | 課題解決に向けて,自分で調査したり,友人と相談したりしながら,適切に資料や情報を活用して,自分なりの考えをまとめたり,発表したりする。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(関心・意欲・態度,話すこと・聞くこと) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ウ) | 筆者の論旨を踏まえて,ことばのもつ「虚構性」や「恣意性」などといった特色に対する興味・関心を高める。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(関心・意欲・態度) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(エ) | 課題解決に向けた調査研究,まとめの中で適切に情報を活用して進んで表現する。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(書くこと) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ウ | 指導計画(8時間扱い) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エ | 本時の学習 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(ア) | 目標
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(イ) | 準備・資料
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(ウ) | 展開 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(4) | 授業の考察 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ア | 課題設定の工夫 普段,生徒たちは「ことば」を無意識に使用しているために,「ことば」に対してそれ程高い関心や興味をもっているとは考えられない。そのため学習意欲を喚起するためには「ことばそのものに対する面白さに気づかせる」ことと,「学ぶための方法を楽しくする」ことが必要であると考えた。「ことば」に対して自ら課題を設定し,自分で調べたり,自分で考えたりしたことを発表する学習方法は,「評価票5」(資料3)でもわかるとおり「ことば」の不思議さや奥深さに興味・関心をもたせることに有効であった。 |
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イ | 学習プリントの工夫 「学習プリント」は,全体での読み「個別学習」を効率的かつ取り組み易くするために用いた。提出課題を見ると,予習の段階からかなり意欲的に内容理解を図り,積極的に考えを深めたことがわかった。 |
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ウ | 学習形態の工夫 生徒の実態調査の「自分から進んで学習すること(表3)」(P10)の回答や「授業後のアンケート2」(資料4) それぞれ変化をもたらすことで,生徒一人一人がより積極的に学習に参加することができたと考える。 また,課題を設定するまでの過程が個別,グループ,全体と段階を踏んでいるために,生徒が主体的に課題解決に取り組んだ様子が「評価票3」(資料3)などからみることができる。提出されたレポートからもグループごとに協力し合いながら資料の収集,分析,仮説の検討,用例を作るといった学習活動において,意欲的に自分の考えを深めていたことがわかった。 |
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資料3 評価票(自己)への生徒記入から
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エ | 自己評価・相互評価の工夫 学習活動として,生徒が自分自身を評価したり,お互いを評価したりすることは,「授業後のアンケート3」(資料4)からも学習を深める上で有効な手段であったことが分かる。 また,自己評価・相互評価をするために観点を焦点化することは相手意識や目的意識を明確化するために重要な活動となった。 |
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資料4 授業後のアンケート(対象45人) |
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オ | 情報の活用の工夫 情報化社会を生きる上で,適切に情報を取捨選択し,自ら解決することは重要である。 また,手軽に情報を手に入れることが出来ると思ってた生徒たちが,「評価票4」(資料3)にもあるように今回の学習を通じて,必要な情報を手に入れることの難しさに気づき,学校図書館にとどまらず,地域の図書館等まで訪れるなど意欲的に情報を探す姿勢がみられた。 |