研究主題 発達段階に応じて言語能力を育成する国語科学習の指導の在り方

 国語科の研究のねらい
   国語科の学習指導及び学習にかかわる意識の実態調査を実施し,その結果を踏まえて小学校,中学校,高等学校ごとに授業研究を行い,発達段階に応じて言語能力を育成する国語科学習の指導の在り方を明らかにする。
 
 研究主題に関する基本的な考え方
  (1)  国語科の改善の方針について
     平成10年7月の教育課程審議会答申において,国語科の改善の基本方針は,「小学校,中学校及び高等学校を通じて,言語の教育としての立場を重視し,国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに,豊かな言語感覚を養い,互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点を置いて内容の改善を図る。」と述べられている。言葉で伝え合う能力とは,人と人との関係の中で,言語を通して適切に表現したり的確に理解したりして円滑に相互伝達,相互理解を進めていく能力のことである。この能力を身に付けるためには,国語を表現する力と理解する力が不可欠であり,小学校,中学校,高等学校を通して国語科の目標に「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成」することが提示された。言葉で伝え合う能力を身に付けることにより,児童生徒一人一人の日常の言語生活が豊かなものになると考える。
  (2)  発達段階に応じて言語能力を育成することについて
     小学校学習指導要領解説国語編(平成11年5月文部省)(以下,小学校解説と表す。)には,国語を適切に表現する能力とは「言語を適切に使う能力」と「言語を使って内容や事柄を適切に表現する能力」であり,国語を正確に理解する能力とは「言葉の使い方を正確に理解する能力」と「言葉で表現された内容や事柄を正確に理解する能力」であるといった記述が見られ,これらの言語能力を,言語の主体的な使い手としての児童生徒に,相手,目的や意図,多様な場面や状況に応じて生きて働く力として育成することが大切であると考える。
 また,小学校解説には「日常生活に必要な話す・聞く,書く,読むなどの基礎的な内容を繰り返し学習し確実に言語能力を育成することを重視して,内容の改善を図る。」,中学校学習指導要領解説(平成10年12月)―国語編―(平成11年9月文部省)には「社会生活に必要な言語能力を確実に育成することを重視し,内容の改善を図る。」,高等学校学習指導要領解説国語編(平成11年12月)には「中学校までに培われた言語能力をさらに総合的に発展させるとともに生徒の能力・適性,興味・関心等に応じた指導を一層充実して,社会人として必要とされる言語能力の基礎を確実に育成する」と述べられている。小学校段階では,基礎的な内容を繰り返し指導して日常生活に必要な言語能力を育成することを目指し,さらに中学校,高等学校段階では,生徒が社会の中で豊かに生活するために必要となる言語能力を育成することを目指すこととなる。
 このように,国語科の目指すところは,小学校,中学校,高等学校の発達段階に応じて,言語の教育として児童生徒一人一人の実践的・社会的な言語能力を確実に育成することであると考える。そのためには,小学校,中学校,高等学校の各段階において,目指す言語能力を育成するための言語活動を的確に位置付け,その言語活動における,児童生徒一人一人の現在における言語能力を的確に把握し,個に応じた学習指導を展開する必要がある。また,授業における言語活動と児童生徒の言語生活とが結合するように,児童生徒の言語生活を踏まえた単元づくりが必要である。ある単元で身に付けた言語能力が小学校では日常生活に,中学校,高等学校では社会生活につながるようにすることを考え,学習単元が生活に生きるようにすることが必要である。
  (3)  「個に応じた学習指導の工夫改善」との関連について
     児島 邦宏氏注1)(東京学芸大学教授)は,「学習における達成度の差にみられるように,学習の結果としてのテストや観察によってあからさまにとらえうる個人差がある反面,今のところ目には見えないけれども,潜在的に可能性としてもっている個性,個人差というものもある」「いま目に見える個人差はそれほど優れているようにはみえないが,可能性としては優れた個性であるということも多い。」と述べている。人前で自分の考えを述べることは得意であるが,自分の考えを文章に表現することは得意でないことなどは,その児童生徒の個性であり個人差であると考えることができる。このような児童生徒一人一人の個性や個人差を認めたり見出したりしながら,「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の言語活動を通して,児童生徒一人一人の言語能力をよさや可能性として伸ばすことのできる学習の指導の在り方を明らかにする。

注1) 児島邦宏(東京学芸大学教授)『授業における個に応じた指導の在り方』,図書文化社,1996年


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