H 実践研究のまとめ | |||||
今回の実践研究では,計8事例の実践を試みた。個々の事例についての考察はそれぞれの項に示してあるので,ここでは,小学校から高等学校まで全体を振り返り,考察することにする。 | |||||
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ア | 対象児童生徒の発見について | ||||
対象児童生徒の発見の方法は,大きく3種類に分けられる。一つは,転入等の環境の変化から問題発生を予見しての発見,二つは,問題を感じた教師の意見による発見,さらに,SOSチェックリストを活用しての発見である。 「問題発生を予見しての発見」は,教師の経験や知識と,児童生徒の心理的状況を理解しようとする教師の姿勢が必要である。また,「問題を感じた教師の意見による発見」は,鋭い観察力をもった教師の存在が必要である。いずれも,教師の姿勢や力量が重要なわけだが,それをカバーするのが,三つ目の「SOSチェックリストの活用」である。 前述した通り,SOSチェックリスト活用には,問題の早期発見と教師の観察力育成という二つの効果がある。大いに活用されることを望む。 |
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イ | 援助チームシート・援助資源チェックシートの活用について | ||||
二つのシートの活用に際しては,あらかじめコーディネーターがある程度の内容を記入して話し合いに臨んだ事例と,全く白紙の状態で話し合いに臨んだ事例がある。いずれにしても,参加者の意見を反映するためのシートであるので,最初からきれいに清書したわけではなく,鉛筆書きなどで加除訂正しながら話し合いを進めた。あくまでも話し合いの材料としてのシートであり,そうした使い方が現実的であろう。 内容的には,援助チームシートでは自助資源の確認・発見が大きなポイントであった。自助資源を生かす方向での援助の在り方を探ることにより,これまでありがちだった問題の解消にとらわれすぎた援助を脱却することができた。今後さらに自助資源を生かす援助を推し進めるためには,別紙のような「自助資源チェックシート」の活用などが有効だろう。 援助資源チェックシートでは,友人や両親などの学校外の人的援助資源発見が効果的だった。児童生徒の多くが「相談する相手」として保護者や友人を選択している。本人が望む相談相手を有効活用したいものである。 |
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ウ | 援助の方法について | ||||
実際の援助で行った主な取り組みは,次のとおりである。
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エ | 援助チーム立ち上げとコーディネーターについて | ||||
最後に,校種や学校規模による差異について考察する。最も顕著に差異が認められたのは,援助チーム立ち上げの場面である。 学級数が10前後の小学校の場合,学校全体を見渡した援助チーム編成が可能なため,コーディネーターも学校全体を見渡せる立場の者,たとえば生徒指導主事などが望ましい。 学級数が20前後になる中学校の場合では,学校全体よりは,学年単位での取り組みの方が実用的だろう。すなわち,コーディネーターとしては,学年主任などが理想的である。 高等学校の場合,教師の専門性が一層強くなり,学年単位というよりも一人一人の教師がそれぞれの立場で個別に活動することが多くなる。つまり,援助チーム編成も,学校全体や学年などの既存の組織に頼るのではなく,個人的な教師のかかわり合いを基に少人数のチームを作る方が現実的である。そうなると難しいのはコーディネーターである。多くの教師と個人的な関係が結べる能力が必要になるわけであり,実際には,ソフト面を担う養護教諭等と,ハード面を担う生徒指導主事等が協力し合って,チームを立ち上げるとよいだろう。 |
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オ | まとめとして | ||||
援助チーム立ち上げの場面でみられるように,校種や学校規模をはじめとするさまざまな条件の違いによって,援助チームの形も変わってくる。言い換えるならば,「これが絶対」などというような一つの形に限定することはできないのである。 ではどうしたらよいかまずは援助チームを立ち上げてみることである。とりあえずチームを立ち上げ,コンサルテーションで意見交換をしながら細かな修正を加え,各校の実情に合わせたチームを作っていくのである。 最初からベストの援助は期待できないかもしれないが,少なくとも,複数のメンバーが一生懸命その子のために話し合ったことは,何もしないことに比べてマイナスのはずはない。二度三度とコンサルテーションを重ねることにより,きっと,より実態に即したチームに成長していくだろう。そして,一つのシステムの完成は,次にチーム援助の必要性が生じた際,必ず生かされることだろう。 一人一人の子どものために,まずは,勇気をもってチームを立ち上げてみてほしい。 |