| ア | 
       配慮を必要とする児童について 
 A子(小5女)とB男(小2男)の姉弟は,3学期初めに家庭の事情により本校へ転入することになった。転入に伴い,本人たちはもちろんのこと,保護者にも不安が生じることが予想された。 | 
      
      
      | イ | 
       援助チーム結成に当たって 
 A子とB男の転入に伴い,具体的に誰が何をするか,何ができるかを明確にしたり,児童を多面的に理解し援助活動を展開したりするために,次のように援助チームを立ち上げた。 
         
         
         | ○ | 
          校長の指導のもと,生徒指導主事がコーディネーターとなって援助チームを立ち上げた。 | 
          
         
         | ○ | 
          チームの結成については,生徒指導主事が中心となり,メンバーを担任,養護教諭,体育担当T・T(教師)とした。体育担当T・Tの参加は,A子とB男の自助資源として体育が得意という点があったからである。 | 
          
         
         | ○ | 
          援助チームでの話し合いの留意点は次の通りである。 
            
            -  援助チームの司会者(生徒指導主事)は,参加者全員の意見・考えを引き出す方向で(自分なら,何ができるか。どう考えるか等)
 
            -  できるだけ,具体的に。
 
(いつ,誰が,どのようにかかわるか等) 
            -  互いに声をかけながら援助に当たる。
 
(「その後どう」などと会議以外でも気楽に話し合える雰囲気を。) 
             
          | 
          
         
         | ○ | 
          話し合ったことは,援助シートをもとに校長に報告,指導を受けた。 | 
          
          
       | 
      
      
      | ウ | 
       予防的な指導・援助の実際 
 生徒指導主事,A子の担任B男の担任,養護教諭,体育担当T・Tで援助チームを編成した。前の学校や保護者と連携を取りながら,援助チームシート(表1,2)や援助資源チェックシート(図3)を活用しながら援助案を作成し実践した。 
         
         
         | (ア) | 
          指導・援助の過程 
            
            
            | 転入前 | 
             冬季休業中に,同学年となる2学年と5学年の児童に無理のない程度で本人の家に遊びに行ってもらう。また,保護者に来校してもらい,転入に伴う手続きや学校生活に対する不安等を聞く機会をもつ。 | 
             
            
            
            始業式 当日 | 
             学校長が転入児童を紹介。転入の不安や悩みを解消するには友人の協力が一番であること等に触れる。母親も始業式に参加してもらう。 | 
             
            
            
            | 転入後 | 
            学習面 | 
             担任が,前の学校での学習内容,進度を確認。算数で未習の単元があり,「はげみの時間」を利用して個別指導をする。また,姉弟とも運動が得意であることが分かったので,体育担当のT・T(教師)は体育の時間にA子やB男が活躍できるように配慮する。 | 
             
            
            
            心理・ 社会面 | 
             「ようこそ本校へA子さん,B男君」(歓迎集会)を実施する。母親の心の安定を図るため,母親との相談活動を行う。 | 
             
            
            
            | 進路面 | 
             A子やB男の得意なことや趣味を把握する。将来の夢を聞いて,今後の指導に役立てる。 | 
             
            
            
            | 健康面 | 
             担任や養護教諭が中心の保護者との面談及び健康診断票等から児童の健康状態を把握し,必要と思われる点について援助する。 | 
             
            
            
            | その他 | 
             フリー参観日を利用して,両親に学校生活の様子を見てもらう。元気に書き初めをする様子を,うれしそうに見ていたのが印象的だった。 
 地域への紹介・呼びかけをする。歓迎集会の様子を中心に学校便りを作成し,転入生の紹介を行う。 
 職員会議(援助コーディネーション委員会)で児童理解を深めるために,A子,B男の様子について報告し,今後の援助活動について話し合う。 | 
             
             
          | 
          
         
         
         | (イ) | 
          歓迎集会の実践 
 よりよい人間関係を築くために歓迎集会「ようこそ本校へA子さん,B男君」を心理・社会面への援助として行った。 
            
 6年生の提案により,代表委員会を開き,歓迎集会の計画を立てる。
  
            
            
            
             | 
            
               
               
               
                  
                  - 開会の言葉
 
                  - 校長先生のお話
 
                  - 歓迎の言葉
 
                  - レクリェーション(3種目)
 
                  - インタビュー
 
                  - プレゼント
 
                  - 閉会の言葉
 
                   
                | 
                
                
             | 
             
             
 
            
 全職員と全児童で構成的グループ・エンカウンター(バウンドゲーム,新聞紙に乗ろう,パズルゲーム)を実施する。 
 本校では,「むつみの時間」に構成的グループ・エンカウンターやソーシャル・スキル・トレーニングを計画的に実施しているため,児童会の進行でスムーズに展開することができた。
  
            
 A子(小5)とB男(小2)の感想 
            
            
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                今日の歓迎会は楽しかったです。最初のボールのゲーム(バウンドゲーム)はちょっと難しかったけどすごく楽しかった!新聞のゲームはおんぶするのがたいへんでした。カレンダーのゲームはパズルが好きなので楽しかったです。今日はすごい楽しかったです。 
 早く全員の名前を覚えて友だちになりたいです。みなさんありがとうございました(A子)。 
 ゲームで,はんの6年生の人となかよくなれた。ゲームもとってもおもしろかった(B男)。 | 
                
                
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      | エ | 
       これまでのA子やB男の様子 
 予防的な指導・援助を続けている。A子やB男の様子は次のようである。 
         
         -  笑顔が多くなり,進んで級友や上級生に話しかけている。また,周りの児童もよく声をかけたり,面倒を見たりしている。
 
         -  思ったよりも早くとけこみ,友だちも増えてきている。
 
         -  学習面では,「はげみの時間」を利用した個別学習が順調に進み,未習の内容もほぼ理解できている。
 
         -  学級になじみ,互いによい刺激を受けている。特に5年生の学級では,運動好きのA子に影響され,より活発になっている。「あゆみの時間(総合的な学習の時間)」では,前の学校で福祉について学習してきたA子が,級友に点字について教える場面も見られる。
 
          
       | 
      
      
      
      | オ | 
       今後の援助活動について 
 二人とも学級に適応しているが,引き続き観察・面談を進め,担任をはじめチームで児童理解を深め,見守っていく。特に,父親が単身赴任であること,親の介護や慣れない地域での生活などから,母親の不安を解消できるように援助活動を進めることを確認する。 | 
      
      
      
      | カ | 
       援助実践を振り返って 
 A子,B男の転入に伴い,今まで述べてきたような援助活動を実践してきた。その結果,A子,B男とも問題状況に陥ることなく新しい環境に馴染むことができた。転入してきて半月を経過するが,もっと以前から在籍していたのではないかと錯覚するほど周囲の児童と交流している。また,保護者も安心した様子で,学校に理解を示している。これも,援助チームでの話し合いの結果を担任を通して伝えていった成果であると思われる。 
 この事例を通して,危機に陥る危険性の大きい「一部の子ども」のもつ援助ニーズを把握し,子どもの問題が大きくなって子どもの成長を妨害しないように予防的に援助することの大切さを実感した。 
 今後も,チェックリスト等を利用した児童の観察を継続し,予防的援助サービスが継続できるようにしていきたい。 |