IX  研究のまとめ
 
  1. 「インターネットを利用する教材」について
     「インターネットを利用する教材」とは,ブラウザだけで利用できる教材,インターネットで公開できる教材であり,一般に「Web教材」と呼ばれている。
     Web教材は,教材の内容から「解説指導型Web教材」「情報検索型Web教材」「ドリル学習型Web教材」「シミュレーション型Web教材」「作業型Web教材」「計測制御型Web教材」「チュートリアル型Web教材」の7つの型に分類でき,表示の仕方や利用されている技術から「静的なWeb教材」「動的なWeb教材」「対話的なWeb教材」の3つに分類できる。
     Web教材は,相互にリンクさせることができる。学習内容が関連している複数のWeb教材をリンクさせれば,あたかも1本のWeb教材であるかのように利用できる。


  2. 「インターネットを利用する教材」の開発と活用について
     Web教材を23本(試験公開時18本,その後5本を追加)開発するとともに,学習活動の中で活用してきた。Web教材の開発に当たっては,「教材開発のねらい」を明確にすることから始め,子供たちの実態,学習内容などを踏まえて,「教材の内容」を検討してきた。
     アンケートの結果から,Web教材は,学校や家庭で利用できる教材であり,今後とも利用が増えると考えられていることがわかった。また,ブラウザだけで利用できることもWeb教材の長所ではあるが,やはり教材である以上,教材としての内容が大切であると考えられていることも,アンケートの結果からわかった。このようなことから,Web教材を開発する際は,「教材開発のねらい」を明確にすることなどが大切であると考えられる。
     Web教材を学習活動の中で活用するためには,Webページとして公開する必要がある。Webページは,通常インターネット上に公開されるが,教材7の実践のように,Web教材を校内のサーバを使って発信して校内だけで利用する方法もある。また,Web教材をCDROM化して利用することも可能であるが,ネットワークを使って利用するところにWeb教材の良さがあるので,ネットワークが構築されていない場合を除き,Web教材をCD−ROM化して利用することは薦められない。このようなことから,Web教材の取り扱いについては,インターネットで公開することを基本とし,公開に適さない場合は校内のネットワークだけで利用できるようにすることが考えられる。
     活用の実際については,4つの教材(教材2,教材4,教材5,教材6)で取り上げている。それぞれが効果的な学習活動を展開できたと考えられるが,Web教材の開発に力点を置いての研究であったため,Web教材を活用したことの良さや学習の成果については,十分な考察とはならなかった。


  3. 「インターネットを利用する教材」の開発方法について
     教材3の実践から,Webページを作成する技能があれば,誰でも解説指導型Web教材を開発できることがわかった。Webページ作成用ソフトウェア(ホームページ・ビルダーなど)を使うことで,開発は,更に容易になることもわかった。このように,解説指導型Web教材は,誰でも手軽に開発できるが,手軽さ故に,何気なく資料集の写真を使ってしまうなど,著作権を侵害しないよう注意する必要がある(資料1を参照)。
     高速なインターネット回線と校内LANの整備が進みつつあることから,笠間中学校のアンケート結果に見られたように,動画を利用したWeb教材の需要が益々高まるものと思われる。 動画を利用したWeb教材の開発は,一見むずかしい印象を受けるが,教材1で取り上げているように,思ったよりも手軽に開発することができる。教師の情報活用の実践力を向上させるためにも,多くの教師が動画を生かしたWeb教材の開発に取り組んで欲しいと考える。
     対話的なWeb教材を開発するには,教材5,教材6,教材7,教材8のように,周辺機器の利用方法,Webサーバの利用技術,スクリプト言語やプログラミング言語の理解など,高度な知識や技術が要求される。また,対話的なWeb教材は,開発するのに時間がかかることから,教師に技術力があっても,開発するゆとりがないという問題もある。教材2の実践では,学習用リンク集を作成するツールが有効であったが,同じように,対話的なWeb教材を生成するツールがあれば,誰でも短時間で対話的なWeb教材を開発できると考えられる。
     Web教材の開発に当たっては,開発に取り組む複数の教師が,お互いに情報交換をしながら協力し合って開発する方法も取れる。Web教材は,相互にリンクさせることができるので,教材を分割し,それぞれを分担して開発することができるからである。また,共同開発者が遠距離にいても,電子メールなどで情報交換しながら開発作業を進めることもできる。分割して開発されたそれぞれのWeb教材は,別々の場所から発信されても,相互にリンクを設定することで,あたかも1本のWeb教材であるかのように利用することができる。教材4のようなデータベースを開発するときにも有効な手段になると考えられる。
     教師の自作するWeb教材が今後充実していくためには,Web教材を開発する教師のコミュニティが確立する必要があるのではないだろうか。コミュニティを通して,開発したWeb教材や技術情報の公開が積極的に行われれば,Web教材が充実するとともに教師の指導技術の向上にもつながるものと思われる。そこで,Web教材サイトを公開する場合は,サイト内に,教師同士で情報交換ができるような場をつくる必要があると考えられる。


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