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授業研究のねらい
高等学校生物1Bの「動物の行動」では,本能による行動と学習による行動を主に学習する。この学習の目的は,生物が外部環境に対して,生物体のもつ巧みな制御機構や調節の仕組みによって,安定した内部環境を維持していることを理解させることである。この行動の一つである周期活動において,概日リズムの学習は観察,実験を行う探究活動として,今までほとんど取り上げられていないのが現状である。
本研究では,研究主題である「自ら学び,自ら考える力を育てる学習指導」をふまえて, ヒトの概日リズムを生徒に探究的に理解させるために,生徒自身の身体の生理的現象について,自ら考え計測させた。そうすることで,生徒は興味・関心を強く持つことができ,問題に対しても予想や仮説を積極的に立て,観察,実験の方法も工夫し,見通しや目的意識を持って,意欲的に取り組むものと考えた。このような工夫を通して,論理的判断力及び表現力などの科学的な思考力を育てることを試みた。 |
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科学的な思考力を育てる手だて
ア |
概日リズムについて理解を深める工夫
教科書では,体内に時間を測定するしくみをもっているとだけ記されている。そこで, 「時差ぼけ」などの例を挙げながら,生物の体内には時計のような機構があって,それに基づいて生物リズムが発現していることに気付かせる。また,概日リズムの周期は,おおよそ24時間であることを説明する。その上で,生徒自らの身体を観察対象として,生理的な現象の計測を行い,概日リズムの有無を観察,実験する。また,計測データをグラフ化することで,概日リズムの有無および周期をとらえやすくする。さらに,計測機器については腕時計型のものなど計測が簡便で測定しやすい機器を準備した。生徒は自らの身体を観察対象とすることで,概日リズムについて理解を深められると考える。 |
イ |
主体的に取り組み,問題を解決するための工夫
まず実験対象を自分自身の身体とすることによって,興味・関心を持たせる。更に,自分たちが実施できる実験内容や方法を検討して計画立案し,予想や仮説を立て,それを検証する実験を自ら行わせることによって,「自分が行っている」という意識が育ち,生徒は観察,実験に主体的に取り組むものと考える。 |
ウ |
論理的に考察させるための工夫
実際に観察,実験に取り組む前に自分たちで計測できる生理的現象を考え,各計測項目について,概日リズムの有無とその日周変動を予想させ,簡単な予想グラフを書かせる。計測後は,各自のデータに基づいて,パソコンを用いてグラフを作成し,予想と結果を比較,検討し考察する。また,同じ計測項目について,班内でお互いのグラフを比較,検討し,概日リズムの有無や個人差について深く考察し,意見をまとめて発表させる。
また,計測の際には,その時々の心理状態や行動状態などの外因的なものに影響されないことが大切であるが,それぞれの計測項目について,排除すべきどのような外因的要因があるかを,その理由とともに考えさせる。 |
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授業の実践
ア |
単元名 刺激の受容と動物の行動 |
イ |
指導計画(19時間扱い)
第1次 刺激の受容と作動体の働き(6時間) |
第2次 神経系(5時間) |
第3次 動物の行動(8時間) |
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生まれつきそなわっている行動(1時間) |
・ |
経験によって得られる行動(2時間) |
・ |
動物の行動と情報伝達(2時間) |
・ |
動物の周期活動(3時間)(本時は第2,3時) |
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ウ |
本時の指導
(ア) |
目 標
○ |
生徒相互の話し合いで実施可能な計測内容や方法について,班毎に計画し,主体的に観察,実験に取り組むことができる。 |
○ |
実験結果をグラフなどに表し,話し合い活動を通してまとめ,班毎に発表することができる。 |
○ |
発表や話し合いの結果から概日リズムについて理解を深めることができる。また,観察,実験の結果から新たな課題をつかみ,解明する手だてを考えることができる。 |
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(イ) |
準備・資料
計測記録表,生徒が使用すると思われる計測機器(体温計,腕時計型の血圧・脈拍計,握力計など),パソコン及び関連機器,プロジェクタースクリーン |
(ウ) |
展 開
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(4) |
授業の結果と考察
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(5) |
研究授業の成果
「『動物の行動』の概日リズムにおいて,自己の身体のデータの分析・検討を通して科学的な思考力を育てる指導の工夫」のテーマで授業研究を進めてきたが,その結果以下のような成果が得られた。
ア |
自分の体を観察対象とし,実験項目や方法なども自分たちで考え出していくことで,自ら学び自ら考えるという主体的な取り組みがみられ,概日リズムについての理解も深まった。 |
イ |
データをグラフ化することで,概日リズムをより深く理解することができ,予想と結果を比較・検討することで,思考力が高められることが分かった。 |
ウ |
各自のグラフを比較検討したり,各班の発表を聞いて,概日リズムについて話し合うことで,論理的に考えたり,自らの考えを見直したり深めたりした。また,新たな課題を見いだすこともできた。 |
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今後の課題
本授業研究を進めてきたが,今後,思考力をより高めていくために,理由や結論を導き出させる場や新たな課題を見いださせる場の設定や時間の持ち方を工夫するなど,研究を更に深めていきたい。 |