6. 研究の成果
   本研究では音楽科学習指導に関する実態を踏まえ,児童生徒一人一人のよさを生かしながら,主体的な活動を通し音楽の豊かさや美しさを感じ取らせる手だてを講じ,2年間にわたり授業研究を行った。研究主題に迫るためには,以下の手だてが有効であった。
  (1) 音楽の豊かさや美しさを感じ取らせるための手だて
 小学校では,「音当てクイズ」,「音の連想ゲーム」,「イメージ音探しゲーム」等の段階的指導を行ったことにより,児童は様々な打楽器の音色に対する豊かさや美しさを感じ取れることが分かった。また,「リズムパターン・カード」を活用することは,児童が様々なリズムパターンを習得したり一人一人が考え出した様々なリズムを記録するのに有効であった。
 中学校では,合唱活動において豊かな響きや音と音とのかかわり合いを理解させる上で,発達段階を考慮した「活動マニュアル」が有効であった。また,様々な視聴覚機器を自由に活用できる環境を整えることにより,生徒は客観的に自分たちの演奏を聴くことができ,豊かな響きや音と音とのかかわり合いを感じ取れることが分かった。
  (2) 主体的な活動を促すための工夫
 小学校では,表現活動時に児童が興味・関心をもてるように鑑賞との関連を図ったり互いのよさに気付かせる相互評価を行うことにより,児童は意欲をもって活動に取り組むことが分かった。また,音楽学習ゲームやクイズを行ったり試行錯誤の時間を十分に確保することにより,児童は楽しみながら主体的に活動できることが分かった。
 中学校では,授業導入時や様々な活動場面において,発達段階や既習経験を踏まえた「活動マニュアル」を作成し活用させることで,生徒が主体的に課題解決活動を行うのに有効であることが分かった。また,題材導入時にあらかじめ教師が用意した魅力ある教材曲の中から,生徒に選択させることによって,意欲をもって活動に取り組めることも分かった。
  (3) 児童生徒一人一人のよさを生かすための手だて
     中間発表や発表を通して,表現や鑑賞で感じたことや表現の工夫などで考えたことを互いに認め合えることが分かった。また,合唱における課題解決活動において,パート,グループ,小グループと徐々に活動形態を小さくすることにより,互いの発声や音程を聴き合い,相手の表現を尊重しながら活動していくことが分かった。
 
おわりに
 児童生徒に主体的な活動を通し音楽の豊かさや美しさを感じ取らせるには,授業導入時の工夫を図ったり試行錯誤の時間を十分に確保したりしながら,指導法や活動の場の工夫をしていくことが有効であることが分かった。しかし,主体的に活動しやすいグループ学習においては,児童生徒一人一人に対する個に応じた指導や評価が難しいことが明らかになった。今後は,個に応じた指導の工夫や評価の改善について究明していきたい。
 
参考文献
文部省 『小学校学習指導要領解説音楽編』 平成11年5月
文部省 『中学校学習指導要領(平成10年12月)解説−音楽編−』 平成11年9月

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