(1) |
調査対象
ア 児童生徒 |
… |
県内の小学校10校の第6学年,中学校12校の第3学年からそれぞれ1学級を抽出して行った。回答者数は,小学校の児童286人,中学校の生徒406人の計692人である。 |
イ 教師 |
… |
無作為に抽出した県内の小学校100校,中学校100校から,家庭科及び技術・家庭科担当者を対象とした。回答者数は,小学校99人,中学校198人(技術担当99人,家庭担当99人)の合計297人である。 |
|
(2) |
実施時期 平成12年9月2日(土)から平成12年9月8日(金)まで |
(3) |
調査結果及び分析
児童生徒を対象とした調査内容と結果については表1〜5に示し,教師を対象とした調査内容と結果については,表6〜11に示す。なお,表中の数値は各問の全回答数に対する各項目の回答数の割合(%)である。 |
ア |
児童生徒の実態調査の分析
児童生徒を対象にした調査では,児童生徒の理科学習への取り組み等を調べ,その現状を明らかにするとともに,授業研究の参考にすることにした。その概要については次のとおりである。
(ア) |
授業で楽しいと感じるとき(表1)
小学生,中学生ともに「友達と活動しているとき」の割合が高く,友達とのかかわりに楽しさを感じていることが分かる。次いで「作品が満足いくようにできたとき」,「作品がしあがったとき」の割合が高い。これは,作品への思い入れがあり,作品ができあがったときの達成感,成就感,満足感が大きいと考えられる。作品づくりは,児童生徒に思いや願いをもたせて,いかに実現させるかが大事であり,製作過程とともに, 完成した喜びを味わわせ,作品への愛着をもたせることが大切である。「先生に『よくできたね』と言われたとき」,「友達に『上手だね』と言われたとき」の割合が低いのは,ほめられる経験が少ないためか,自分自身が納得しないと満足感が得られないためか,今後の追跡調査が必要である。
表1 授業で楽しいと感じるとき(%)
家庭科,技術・家庭科の学習で楽しいと感じるのは,どのようなときですか。
(2つ選択) |
小 |
中 |
全体 |
友達と活動しているとき |
32.2 |
32.6 |
32.4 |
作品が満足いくようにできたとき |
21.0 |
22.4 |
21.7 |
作品がしあがったとき |
20.6 |
17.7 |
19.2 |
今までできないことができるようになったとき |
13.3 |
12.6 |
12.9 |
今まで知らなかったことがわかったとき |
5.2 |
7.3 |
6.3 |
先生に「よくできたね」と言われたとき |
3.3 |
3.9 |
3.6 |
友達に「上手だね」と言われたとき |
3.3 |
2.1 |
2.7 |
その他 |
1.0 |
1.4 |
1.2 |
|
(イ) |
自分から進んで取り組むとき(表2)
「友達と一緒に活動したりグループで学習したりしているとき」,「自分が興味をもった内容のとき」,「実験や実習をしているとき」の順になっている。一人よりも友達とのかかわりの中で学習への意欲が沸いてくる。そして,興味・関心がもてれば自ずと学習への取り組みがよくなっていくのである。この結果から友達とかかわれる場の工夫,興味・関心がもてる内容の精選,実験や実習の取り入れ方が課題となってくる。小学生は「友達と一緒に活動したりグループで学習したりしているとき」の割合が高く,中学生は,「自分が興味をもった内容のとき」の割合が高い。これは,発達段階の違いによるものと考えられる。発達段階を考慮した学習活動の工夫が望まれる。
表2 自分から進んで取り組むとき(%)
自分から進んで取り組むのはどのような学習のときですか。 |
小 |
中 |
全体 |
友達と一緒に活動したりグループで学習したりしているとき |
40.2 |
29.1 |
34.6 |
自分が興味をもった内容のとき |
27.3 |
32.8 |
30.0 |
実験や実習をしているとき |
15.7 |
17.2 |
16.5 |
自分で課題を見つけることができたとき |
7.3 |
9.4 |
8.4 |
先生から与えられた課題を解決しているとき |
4.9 |
9.6 |
7.3 |
自分の生活に役に立つと思ったとき |
4.2 |
1.5 |
2.8 |
その他 |
0.3 |
0.5 |
0.4 |
|
(ウ) |
希望する学習活動(表3)
「実習・製作学習」と回答した児童生徒の割合が高く,特に中学生は約半数の生徒が回答している。これは,「ものづくり」の楽しさを児童生徒が体感していることの表れであると考える。次いで,「校外での体験学習」を希望する児童生徒の割合が高い。児童生徒に実践的・体験的な活動をさせる上でも,今後,校外での体験学習を盛り込んだ題材の工夫が考えられる。児童生徒が身体を使って実習したり,体験したりする活動を通して生活に必要な基礎的な知識と技能及び技術が習得できるよう,教師は多様な学習活動を展開していく必要がある。
表3 希望する学習活動(%)
どのような学習活動がしたいですか。 |
小 |
中 |
全体 |
実習・製作学習 |
39.2 |
52.2 |
45.7 |
校外での体験学習 |
32.2 |
22.9 |
27.5 |
調べ学習 |
11.5 |
9.6 |
10.6 |
実験・観察学習 |
11.9 |
7.6 |
9.8 |
話し合い学習 |
4.9 |
6.2 |
5.5 |
その他 |
0.3 |
1.5 |
0.9 |
|
(エ) |
学習内容の実践状況(表4〜5)
小学生に比べ,中学生は,学習したことを生活に生かしている割合が低くなっている。授業後に,小学生は,学習したことをすぐに家庭で実践しているが,中学生は,なかなか家庭での実践に結びつかないのが現状である。中学校での指導上の今後の課題であり,各家庭との連携が必要である。
生活に生かしていない理由としては,表5のように「やる気がでない」の回答が小学生,中学生ともに多く,実践しようとする意欲を育てる授業の工夫及び家庭との連携が求められる。
表4 学習内容の実践状況(%)
授業で学習したことをふだんの生活に生かしてますか。 |
小 |
中 |
全体 |
生かしている |
14.3 |
10.8 |
12.6 |
少し生かしている |
47.2 |
32.3 |
39.7 |
どちらともいえない |
25.5 |
38.9 |
32.2 |
あまり生かしていない |
8.0 |
11.1 |
9.6 |
生かしていない |
4.9 |
6.9 |
5.9 |
表5 実践されていない理由(%)
どうしてふだんの生活に生かすことができないのですか。 |
小 |
中 |
全体 |
やる気がでない |
40.6 |
39.7 |
40.0 |
何をしてよいのかわからない |
16.2 |
17.8 |
17.3 |
やる時間がない |
16.2 |
16.4 |
16.4 |
家族のだれかがやってしまう |
16.2 |
9.6 |
11.8 |
うまくできない |
8.1 |
9.6 |
9.1 |
その他 |
2.7 |
6.9 |
5.4 |
|
|
イ |
教師の実態調査の分析
(ア) |
生き生きと学習していると感じる場面(表6)
「自分で考え,試行錯誤しながら活動しているとき」の割合が最も高く,次いで「友達と相互に学び合っているとき」,「課題解決のために多様な方法を考え出したとき」の順になっている。教師は,児童生徒が自ら考え,自分なりの考えを追究しているときに生き生きと学習に取り組んでいると感じている。また,友達との活動が児童生徒の学習をさらに充実させていると感じている。
表6 生き生きと学習していると感じる場面(%)
生き生きと学習していると教師が感じる場面
(2つ選択) |
小 |
中 |
全体 |
自分で考え,試行錯誤しながら活動しているとき |
41.9 |
42.4 |
42.3 |
友達と相互に学び合っているとき |
34.3 |
31.6 |
32.5 |
課題解決のために多様な方法を考え出したとき |
19.7 |
19.4 |
19.5 |
自ら課題を立てたとき |
2.0 |
3.0 |
2.7 |
自分の考えを発表しているとき |
1.5 |
2.3 |
2.0 |
授業を振り返って自己評価をしているとき |
0.0 |
0.5 |
0.3 |
その他 |
0.5 |
0.8 |
0.7 |
|
(イ) |
重視している学習活動(表7)
教師が重視している学習活動は,「実習・製作学習」が全体で85.9% と高い。これは家庭科及び技術・家庭科が実技を伴う教科であるためと考えられる。「校外での体験学習」を重視している小学校はなく,中学校においても3.0%と低い。これに対し,児童生徒が希望する学習活動(表3)は「実習・製作学習」に次いで「校外での体験学習」の割合が高く,今後検討していく余地があるといえる。
表7 重視している学習活動(%)
どのような学習活動を重視していますか。 |
小 |
中 |
全体 |
実習・製作学習 |
87.9 |
84.8 |
85.9 |
調べ学習 |
8.1 |
7.1 |
7.4 |
実験・観察学習 |
2.0 |
2.5 |
2.4 |
校外での体験学習 |
0.0 |
3.0 |
1.7 |
話し合い学習 |
1.0 |
2.0 |
1.7 |
その他 |
1.0 |
0.5 |
0.7 |
|
(ウ) |
実践的・体験的な学習活動をする上で取り入れたい内容(表8)
表8のように「実習」,「地域の人材活用」,「校外での体験」の順に割合が高い。このことから,実習の内容を充実させ,地域の人材をどの場面でどのように活用するか,また校外での体験活動をどのように生かしながら取り入れていくかなど,学習内容を精選し,指導内容の工夫が考えられる。
表8 実践的・体験的な学習活動をする上で,取り入れたい内容(%)
実践的・体験的な学習活動をする上で,これから取り入れていきたい内容はなんですか。
(2つ選択) |
小 |
中 |
全体 |
実習 |
31.8 |
25.0 |
27.3 |
地域の人材活用 |
26.8 |
26.5 |
26.6 |
校外での体験 |
17.7 |
23.2 |
21.4 |
実験 |
10.6 |
10.4 |
10.4 |
模擬体験 |
8.6 |
10.4 |
9.8 |
ロールプレイング |
4.0 |
4.5 |
4.4 |
その他 |
0.5 |
0.0 |
0.2 |
|
(エ) |
基礎的な知識と技能及び技術の習得のために重視すること(表9)
「指導内容の工夫」,「教材・教具の工夫」,「学習形態の工夫」,「児童生徒の実態把握」の順に割合が高い。小学校では,中学校に比べ,ティーム・ティーチングの導入や家庭との連携を重視している。児童生徒が, 「生活に生きる力」をはぐくむためにも,基礎的な知識と技能及び技術を確実に身に付けることが大切であり,指導内容の吟味とともに,教材・教具や学習形態の工夫が必要である。
表9 基礎的な知識と技能及び技術の習得のために重視すること(%)
基礎的な知識と技能・技術を身に付ける上で,どのようなことを重視しますか。
(2つ選択) |
小 |
中 |
全体 |
指導内容の工夫 |
24.7 |
32.1 |
29.6 |
教材・教具の工夫 |
17.7 |
26.5 |
23.4 |
学習形態の工夫 |
19.2 |
14.6 |
16.2 |
児童生徒の実態把握 |
11.6 |
12.1 |
12.0 |
ティーム・ティーチングの導入 |
14.6 |
6.6 |
9.3 |
家庭との連携 |
9.6 |
2.0 |
4.5 |
年間指導計画の工夫 |
1.0 |
4.3 |
3.2 |
評価の工夫 |
0.5 |
1.8 |
1.3 |
その他 |
1.0 |
0.0 |
0.3 |
|
(オ) |
生活に生きる力をはぐくむ上で,重視すること(表10)
小学校は「家庭との連携」と「地域の人材活用」,中学校は「題材の設定」と「教材・教具の活用」を回答した割合が高かった。学習したことが児童生徒の生活の中で生きて働くよう, 教師は様々な手だてを講じる必要がある。
表10 生活に生きる力をはぐくむ上で,重視すること(%)
「生活に生きる力」をはぐくむ上で,主にどのようなことを重視しますか。
(2つ選択) |
小 |
中 |
全体 |
題材の設定 |
14.1 |
28.0 |
23.4 |
教材・教具の活用 |
13.1 |
21.2 |
18.5 |
地域の人材活用 |
19.7 |
12.1 |
14.6 |
家庭との連携 |
21.2 |
9.8 |
13.6 |
児童生徒の実態把握 |
13.6 |
12.9 |
13.1 |
学習形態の工夫 |
6.6 |
9.3 |
8.4 |
他教科等との関連 |
11.6 |
6.1 |
7.9 |
その他 |
0.0 |
0.5 |
0.3 |
|
(カ) |
ティーム・ティーチングの導入状況(表11)
「導入していない」が69.0%と高く,まだ導入が進んでいる状況とは言えない。今後,実習・製作学習等において,個に応じた指導の充実のために他の教師との連携や外部講師の導入などの手だてが有効になってくると考える。
表11 ティーム・ティーチングの導入状況(%)
今年度ティーム・ティーチング等(外部講師を含む)を導入していますか。 |
小 |
中 |
全体 |
導入している |
23.2 |
13.1 |
16.5 |
導入する予定 |
12.1 |
15.7 |
14.5 |
導入していない |
64.6 |
71.2 |
69.0 |
|
|
|
(4) |
実態調査のまとめ
実態調査の結果,次のようなことが分かった。
ア |
児童生徒は,友達とのかかわりの中で活動しているときや自分が興味をもったことに対して,より主体的に取り組むことができる。 |
イ |
小学生に比べ,中学生は,学習したことを生活に生かしている割合が低い。生活に生かしていない理由としては,「やる気がでない」の回答が小学生,中学生ともに多い。 |
ウ |
教師は,実践的・体験的な学習を展開する上で,実習の充実に加えて,地域の人材活用や校外での体験活動を取り入れたいと考えている。 |
エ |
教師は,基礎的な知識と技能及び技術の習得のために「指導内容の工夫」,「教材・教具の工夫」,「学習形態の工夫」,「児童生徒の実態把握」を重視している。他に,小学校では,「ティーム・ティーチングの導入」,「家庭との連携」を挙げている。 |
オ |
教師は生活に生きる力をはぐくむために,「題材の設定」,「教材・教具の活用」,「地域の人材活用」,「家庭との連携」を重視している。 |
|