Ⅴ　研究のまとめと今後の課題

１．研究のまとめ

　この研究では，特殊教育諸学校におけるティーム・ティーチングの長い実践の積み重ねを整理し，そのよさを見直すことによって，個に応じた指導の充実を図るための手だてを研究した。特殊教育諸学校に在籍する児童生徒等の障害の種類や程度は多様であり，個に応じた指導のために，ティーム・ティーチングを始めとして様々な指導の工夫がなされている。
　このティーム・ティーチングによる学習形態には幅があり，学習の目標や活動内容に応じて使い分けることが可能であることがわかった。また，アシストティーチャーの支援を，ティーム・ティーチングの技術・スキルとして整理することで，教師間の連携・協力すべき事柄として具体化することができた。さらに，教師同士がティーム・ティーチングを有効に機能させるために，児童生徒等の実態や目標を共通理解する取り組みを着実に行うことにより，「個に応じた指導」の一層の充実を図れることがわかった。
　理論研究，調査研究及び事例研究による具体的な成果は，次のとおりである。
（１） 　理論研究からわかったこと
① 　特殊教育諸学校におけるティーム・ティーチングによる指導は，多面的な視点での児童生徒等の理解や幅のある対応，集団での多様な活動，ダイナミックな活動，個に応じた支援ができるなど有効性が高い。
② 　ティーム・ティーチングの学習形態は多様であるが，７つの基本的な形態に分類することができる。
③ 　アシストティーチャーの児童生徒等への様々な支援をティーム・ティーチングの技術として整理することができる。
（２） 　調査研究からわかったこと
① 　各学校のティーム・ティーチングの実施状況の調査の結果では，教育課程の違いによってティーム・ティーチングが行われている授業の割合に差が見られる。
　また，学校の規模や児童生徒等の実態によって授業形態は変わり，ティーム・ティーチングによる授業の割合は変化する。
② 　ティーム・ティーチングに関する様々な支援の事例は，分析整理することによってアシストティーチャーの支援の技術・スキルとしてまとめることができる。
③ 　特殊教育諸学校における教師は，ティーム・ティーチングを成功させるために児童生徒等の実態や目標及び学習活動などに関する共通理解が重要であることを認識している。
（３） 　事例研究からわかったこと
① 　７つの基本的な学習形態を，学習の目標や活動内容に応じて使い分けることで，ティーム・ティーチングの機能が効果的に活用され，個に応じたよりきめ細やかな指導が可能となる。
② 　アシストティーチャーによる支援の技術・スキルは，ティーム・ティーチングの機能をより高めるための効果的な手だてとなる。
③ 　授業の計画と実践の段階で共通理解すべき項目を整理することは，効果的な話し合いを可能にし，教師間の共通理解を深めることができる。
　また，その指導にかかわる教師がティームとして話し合いを重ねることは，教師間の共通理解を一層深める。


２．今後の課題

（１） 　ティーム・ティーチングの技術・スキルの整理，検証を更に深めていく。
（２） 　より効果的なティーム・ティーチングによる授業の在り方を探る。

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