V 調査研究

1.調査目的

 特殊教育諸学校におけるティーム・ティーチングの実践を分析整理すると共に,課題等を把握するため,ティーム・ティーチングに関する実施状況や,ティーム・ティーチングにおけるアシストティーチャーの支援事例,教員のティーム・ティーチングに対する意識などを調査した。

2.調査方法

 平成12年7月に研究協力員が所属する盲学校,聾学校,肢体不自由養護学校,病弱養護学校,知的障害養護学校(5校)の9校を対象に実施した。「ティーム・ティーチングの状況について」を学級単位,「ティーム・ティーチングの実際について(アシストティーチャーの支援事例,ティーム・ティーチングに対する意識など)」を全教員を対象として調査を実施した。調査は,用紙を配付し記述後に回収した。内容については,巻末参考資料を参照していただきたい。

3.調査結果の分析と考察

(1)  ティーム・ティーチングの実施状況について(学級単位の調査)
@  ティーム・ティーチングによる授業の数
 アンケートによって「複数の教員で指導している授業」,「1人の教員で指導している授業」,「両方が混在している授業」についてそれぞれ行われている教科等の名称とその授業時数を調査した。
 特殊教育諸学校における複数の教師による授業の割合が図2である。知的障害の養護学校(E〜I校)においては,圧倒的に複数教師による授業が高い比率を占め,ほとんどの授業がティーム・ティーチングによって行われていると言える。ただ,G校は全校児童生徒数が少なく,1人の教師による授業でも,児童生徒個々の目標に十分沿った指導ができるという状況が背景にあるため,1人の教師による授業も行われている。
 準ずる教育を行う特殊教育諸学校(A〜D校)は,グラフに示されるようにティーム・ティーチングによる授業は学校種によって,ばらつきが目立つが,複数の教師による授業が少なく示されたように,1人の教師による授業が多く見られる。A校の高等部やD校の小学部,B校では,主だった教科等については1人の教師が指導していることがわかる。調査の結果からは,体育や音楽,図工,自立活動といった教科等でティーム・ティーチングによる授業が成されている。A校やC校で比較的複数教師による授業が多い。これらの特徴は,児童生徒数の違いや指導形態の違いなど様々な要因が考えられるが,児童生徒等の障害の重度・重複化,多様化に対応し,重複障害学級の数が多くティーム・ティーチングによる授業が行われているからと考えられる。また,学校によっては,指導形態を工夫し,学年の枠を越え縦割りの学習集団を編成して指導にあたっていたり,学習進度の格差に対応するため個別指導をおこなっている。このような場合,マン・ツー・マンの指導であっても基本の学習集団を再編成し教師が分担しているという点でティーム・ティーチングと定義しているので高い比率を示すことになる。
 グラフには表示されていないが,B校の幼稚部では,ほとんどの授業がティーム・ティーチングによって指導されていた。同一の学校でも,学部によって多様な指導形態・方法が考えられている。
 図3〜5は,3校の小学部における1人の教師による授業とティーム・ティーチングによる授業のそれぞれの教科等についての比率を示したグラフである。図3は,知的障害養護学校であり,すべてティーム・ティーチングによって授業が行われている。図4は準ずる教育の学校であり,重複障害学級があっても児童数が少なければ,1人の教師で指導をしている様子が分かる。図5は,約半数の重複障害学級を設置する学校の様子である。児童の在籍数や教員数などに左右されるが,こうした学校ではティーム・ティーチングによる授業が多くなることが分かる。
 知的障害養護学校の中学・高等部では,小学部同様のティーム・ティーチングによる授業が各教科等で行われている。準ずる教育を行う中学・高等部では,教科担任制ということもあり,1人の教師での授業が一層多くなることを予想したが,逆にティーム・ティーチングによる授業が目立ち,それぞれの学校の教育課程などにより多様であることが分かった。アンケート調査後の聞き取り調査によれば,複数教師によるティーム・ティーチングでの授業を行っている学校もあれば,グループを編成し個別的に指導している学校もある。学年が進むにつれ学習進度の格差が大きくなり指導形態を工夫しティーム・ティーチングによってそれぞれの進度に合わせて指導しているなど,多様な実態であった。
 なお,複数の教師による授業や1人での授業が混在する教科等は,数が少なかったが,各学校で工夫した指導形態がとられていることがわかった。


A  ティーム・ティーチングの教員の数
 ティーム・ティーチングによる指導が行われている教科等の授業の際,何人の教師でティームを組んで指導にあたっているかを調べた結果が次の図6〜8である。小学部段階では,B校を除き障害による校種の差はあまり見られず,2人による指導が41%(全校の平均値),3人による指導が22%となり,学級単位や小集団での指導が多いことがわかる。
 中学部や高等部においては,準ずる教育の諸学校では,2人による授業が多いのが目立つ。3人による授業は校種で多少のばらつきがあるものの全般的に行われている。知的障害養護学校では,4人,5人,6人以上による授業が多く見受けられ,その傾向は,高等部では更に高い比率となる。
 これらの特徴は,準ずる教育の学校と知的障害養護学校における教育課程の差異によるものである。また,準ずる教育の学校においてティーム・ティーチングが行われているのは,3人が定数の重複障害学級での指導が多く,生徒数を考慮すると2人で指導する時間が比率的に多くなる。知的障害養護学校では,6人や8人の学級の定数のもとで指導にあたるため,多数の教師がかかわる授業が多くなると考えられる。さらに,知的障害の学校では,生活単元学習や作業学習などを学部内の合同授業とし,ダイナミックな或いは幅広い活動ができる指導形態をとるため一層多人数の教師がかかわることになる。
 A校の中学部では,4人によるティーム・ティーチングが53%と高い値を示しているが,これは教科指導において縦割り集団での指導を行っているためである。


B  1人の教員による授業
 準ずる教育の諸学校やG校には,1人の教師で指導している授業がある。G校については,前に理由を述べたが,他の準ずる教育の諸学校でそうした授業があるのは,「1人の教師で十分対応ができるから。」,「児童生徒数が少数のため。」という答えが多かった。しかし,少数ではあるが,教室の不足や教員数の不足を理由とするものもあり,ティーム・ティーチングによる指導を望むものの行われていない実情が窺われた。1学級の児童生徒数が少ないとはいっても,それぞれの学習の進度の差や理解力の差,学習のつまずきなど学習指導上の問題に注目すると他の教師の支援が必要な場面は多い。個々のニーズへのきめ細やかな対応を目指すなら,ティーム・ティーチングを始めとした学習形態や指導法の工夫が更になされるべきだろう。


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