T 研究の基調

1.研究主題

 「特殊教育諸学校におけるティーム・ティーチングの在り方」
(個を生かす支援としてのティーム・ティーチング)

2.研究の趣旨

 特殊教育諸学校におけるティーム・ティーチングの現状と課題を把握し,効果的なティーム・ティーチングの在り方に関する理論的・実践的な研究を進め,特殊教育における指導の充実に資する。

3.研究主題設定の理由

 障害のある幼児児童生徒(以下「児童生徒等」という。)を指導する特殊教育諸学校では,複数の教員による授業が長年なされてきている。児童生徒の障害の重度,多様化,重複化に対応して,手厚い指導ができるよう1学級の児童生徒の定数の削減や教員加配等により,各教室に入る教師数は確実に増えてきた。文部省初等中等教育局特殊教育課の「特殊教育資料」によると特殊教育諸学校における児童生徒数と教員数との比率(児童生徒数/教員数)は,昭和45年には4.12であったが,平成10年には1.58である。
 また,昭和54年に告示された「盲学校,聾学校及び養護学校小学部・中学部学習指導要領」において,「指導の効率を高めるため,教師の特性を生かすと共に,教師の協力的な指導がなされるように工夫すること。」と,ティーム・ティーチングという文言は使われていないが,複数の教師が協力し合って授業を行うよう促している。平成3年に改訂された学習指導要領では,「学校の実態等に応じ,教師の特性を生かしたり,教師間の連携協力を密にしたりするなど指導体制の工夫改善に努めること。」と明示され,その解説において「その具体例としては,交換授業,合同授業,ティーム・ティーチングなどが考えられ,各学校の実態に応じて工夫することが大切である。」と述べられている。今回改訂された学習指導要領(平成11年3月)では,ノーマライゼーション等の障害観の変化に対応し,個に応じた指導を充実するため「授業形態や集団の構成の工夫,教師の協力的な指導などにより,学習活動が効果的に行われるようにすること。」と特殊教育諸学校における教師間の協力,連携の重要性が一層強調されている。
 特殊教育諸学校に在籍する児童生徒等の障害の種類や程度は多様であり,個人差が著しい。児童生徒等の実態を正確に把握し,一人一人の課題に対応した指導をしていく「個に応じた指導」が必要である。学級集団を基準とした指導計画から,個別の指導計画に基づく指導が重要視されている。個に応じた指導には,「個別指導」と「集団指導」(集団の中で個を配慮した指導)の2つの指導の場があると考えられる。集団指導の学習で個に応じた指導を効果的に進めるためには,学習の全体目標,個人目標,学習の方法,支援内容などの共通理解がなされ,教師間の連携・協力すなわちティーム・ティーチングが十分に機能することが課題となる。指導にあたる教師が指導目標を共通理解し,支援が必要な場面で最も適切な支援を効率よく効果的に行うことが求められる。
 そこで,特殊教育諸学校での教師間の連携,役割分担,支援の在り方などを整理,分析し,より一層機能的なティーム・ティーチングの在り方を探るとともに,集団指導場面での個への対応を深めることできるよう「個を生かす支援としてのティーム・ティーチング」を副題としてこの研究に取り組んだ。

4.研究の方法

(1)  実態調査及び理論・実践研究を行い,特殊教育諸学校におけるティーム・ティーチングの在り方を究明する。
(2)  研究協力員(9人)を委嘱し,研究協議会を4回開催して研究を進める。 研究協力員は,盲学校,聾学校,肢体不自由養護学校,病弱養護学校,知的障害養護学校に所属する教員に委嘱した。


5.研究内容

(1)  理論研究
@  ティーム・ティーチングによる授業の特質
A  ティーム・ティーチングを生かす学習形態
B  ティーム・ティーチングにおけるアシストティーチャーの支援の技術・スキル
(2)  実態調査
@  ティーム・ティーチングの実施状況
A  ティーム・ティーチングにおけるアシストティーチャーの支援事例
B  ティーム・ティーチングに対する教師の意識
(3)  実践事例研究
@  ティーム・ティーチングを生かす学習形態
A  ティーム・ティーチングの技術・スキル
B  共通理解のための手だて


6.研究経過

第1回 5月31日
研究概要の説明
講義「特殊教育諸学校におけるティーム・ティーチングの在り方」
千葉大学教授 太田 俊己
協議 研究の進め方,調査項目の検討
第2回 9月14日 アンケートの調査結果集計及び考察についての協議
ティーム・ティーチングの技術・スキルの検討
第3回 10月31日 授業のVTRを見ながら授業の分析・検討
学習形態のモデルについて考察
第4回 12月6日 研究のまとめと今後の課題について検討


[目次へ]