研究の成果
   本研究においては,生活科において,子どもの自ら学び,自ら考える力を育てるという視点で実態調査を実施し,その結果を踏まえて,子どもが身近な人々,社会及び自然などの身近な環境と直接かかわることができるためのいくつかの手だてを講じ,授業研究を行った。二つの授業研究よりこれらの手だてが,子どもの自ら学び,自ら考える力を育てる生活科学習の支援として有効であることが分かった。ここでは,授業研究で行った支援についてまとめてみたい。
  (1)  子どもが身近な環境と直接かかわるための支援について
     子どもが身近な環境と直接かかわるためには,@子ども自身が身近な環境に対する思いや願いをもつ,A身近な環境に対して生じた,子どもの思いや願いを生かす,B子どもの生かされた思いや願い(活動や体験)をもとに,子どものその後の活動や体験が更に実りあるものとして,子どもの思いや願いを広めたり,深めるという一連の支援が大切である。
  (2)  子どもが(活動や体験に対して)思いや願いをもつための支援について
     子どもが,生活科の学習に対して,次には,こんな活動をしたいとか,こんな体験をしたいというような,思いや願いをもたせた上で,子どもたち自身が,これからの生活科の学習でどんな活動を実施するか考えながら活動したり,目的をもった体験をした。その際,活動に関連の深い本を置いておいたり,活動に関連した詩を掲示したりするという学習環境づくりや,思いや願いを引き出すためのカード等の活用は子どもに思いや願いをもたせる上で効果があった。
  (3)  子どもが(活動や体験に対して)思いや願いを生かすための支援について
     身近な環境に対して生じた,子どもの思いや願いを生かすよう,活動内容の確認のための時間を確保したり,支援表の利用,ティーム・ティーチングの導入,多様な素材や用具を子どもたちの反応を予想して予め準備しておく等の手だては効果的であった。
  (4)  子どもが自分を振り返り,自分自身や自分の生活について理解を深めるための支援について
     子どもが,自分自身の活動や体験を振り返ったり,友達の活動や体験を共有したりするための場の設定,地域の人材を生かしたゲスト・ティーチャーの導入,子どもの思いや願いを把握するためのカードの利用は,子どもの自己理解の上で有効であった。
 
おわりに
 生活科における,子どもの自ら学び,自ら考える力を育てる支援の在り方として,1年間研究を行ってきた。改めて考えさせられたものはいかに身近な環境を体験させるかという体験のさせ方の重要性である。教育課程審議会の「中間まとめ」(1997年11月)で指摘されているような,体験が画一的であったり,単に活動するだけにとどまり,知的な気付きを深めることが十分でない状況は,体験のさせ方を工夫すれば大きく改善されると考える。生活科は,まもなく完全実施となる「総合的な学習の時間」の基礎を担う教科でもある。我々は,今まで以上に,子どもが身近な環境と直接かかわることができる生活科を目指して努力していく必要がある。
 
参考文献
嶋野道弘(文部科学省視学官)『新しい教育課程と学習活動の実際 生活』,東洋館出版,1999年

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