【授業研究2】
  小学校第1学年
「わくわくランドへあつまれ!」における自ら学び,自ら考える力を育てる支援の在り方
 
(1)  授業研究のねらい
   本単元では,校内にある植物や樹木,生き物に繰り返しかかわる活動を通して,季節による植物の変化,生き物の成長の喜びや不思議を体験する。そして,活動の過程で気付いたことや楽しかったことを表現することによって,自ら学び,自ら考える力を育てることができると考える。そこで,子ども一人一人の思いや願いを生かしたり,表現したりするための支援の在り方について研究する。
(2)  子どもの思いや願いを育てるための手だて
  子どもの思いや願いを育てるための手だて  本単元では,自ら学び,自ら考える力を育てるために,子どもの思いや願いを生かし,生き生きと表現するための支援を5つに分類し,実施する。
   子どもたちの思いや願いを生かした学習環境つくり (手だてT)
     「五台小文庫」を設け,植物や生き物に関する様々な本を置いておく。また自然を生き生きと表現した詩を掲示したり,子どもたちが休み時間などにつくった貼り絵やアクセサリーを飾ったりして活動への励みになるようにする。
   子どもたちの思いや願いを深めるための場の設定  (手だてT,U)
     活動の内容を確認したり振り返ったりする時間を設定し,互いの良さに気付いたり,次の活動への思いを深めたりできるようにする。
   一人一人の思いや願いを表現するための支援  (手だてV)
     「みつけたよカード」「やってみたいなカード」などを利用して一人一人の思いや願いを把握し,活動を保証する。
   家庭や地域との連携を生かした学習活動 (手だてW)
     地域の人材を生かしたゲスト・ティーチャーや学生ボランティア,保護者によるティーム・ティーチィングにより,思いや願いを表現する力を高めるようにする。
   体験活動を重視した単元構成の工夫 (手だてT)
     自然といろいろな面から繰り返しかかわるように,植物と生き物への体験を並行して行うようにする。
(3)  求める子どもの姿 (思いや願いを表現できる子どもの姿)
 
  • 進んで自然にかかわり,楽しく生活しようとする。
  • 自分の思いや願いを生かしてつくった物を,他の人に分かるように表現する。
  • 動植物との触れ合いを通して,生命の大切さや自然の不思議さに気付く。
(4)   授業の実践
   単元  わくわくランドへ あつまれ!
   単元の目標
     進んで生き物や植物を育てたり,遊んだりしようとする。(関心・意欲・態度)
     身近な自然との関わを通して,気付いた成長の様子や見付けた遊びを他の人たちに分かるように表現しようとする。(思考・表現)
     生き物や植物との触れ合いを通して,生命の大切さに気付く。(気付き)
   単元について
     子どもたちは,1学期に学校探検を体験し,小学校にはどんな教室があり,どんな先生が何をしているのか知ることができた。また,五月からアサガオをはじめ,キンレンカマリーゴールド,ヒマワリなど自分たちの選んだ草花を育ててきた。夏休みを過ぎて自分たちの草花だけでなく学校の自然にも様々な変化が出てきたことに興味を待ちはじめたので,五台小の自然を探検してみることにした。虫探しや植物マップつくりなどいろいろな面からかかわることで,気付いたことやつくったものが増えていくだろう。それらを,他の人(幼稚園児)に紹介することで,自ら学び,自ら考える活動に広がっていくと考えられる。
   活動計画(25時間)
活動計画
   本時の活動
    (ア)  目 標
       秋の宝物を使い,自分の思いや願いを生かしてつくった物を幼稚園児に分かるように発表しようとする。
    (イ)  本時の支援
       (表現への支援)
       「アドバイスカード」を使って,一人一人の発表がよりよいものになるようにする。
       ティーム・ティーチングを取り入れ,思いや願い,気付きを的確に把握し,目的に即した表現になるように支援する。(場の設定への支援)
       活動の内容を確かめたり,振り返ったりする場を設定し,自分が頑張ったことや友達の良いところに気付き,活動への意欲につながるようにする。(環境への支援)
       コーナーの場所を決め,それぞれの場所で同時に練習を始められるようにし,繰り返し発表できるようにする。
    (ウ)  展 開
展開
   教師の支援と子どもたちの活動
     自分たちの学校で見付けた花や木の実,落ち葉や枝をつかって,思い思いの物をつくって遊んできた。また,校庭で生き物を見付けたり,見付けた生き物を育てたりした。その中で気が付いたことやつくった物を幼稚園児に分かるように表現してみようということで,はりきって活動に取り組む様子が見られた。
 以下に,個人と1グループの活動の様子と教師の支援について述べる。
活動の様子
(5)  授業の結果と考察
   子どもたちの思いや願いを生かした学習環境つくり
     「五台文庫」を設けたことによって,自分が捕まえた虫の好きな食べ物や拾ってきた木の実の名前を調べたり,本にのっている物を実際につくってみたりする子が増えた。まわりに,拾った木の実を置いたり,つくった物を飾ったりと楽しみながら利用していた。また,「質問コーナー」を設置し,生き物のことで分からないことを,総合的な学習で「生き物博士館」をつくっていた5年生に質問した。どんな小さなことでも丁寧に答えてくれたので,生き物に興味をもって取り組む子が増えた。
   子どもたちの思いや願いを深めるための場の設定
     友達がつくった物を見たり,したことを聞いたりすることで,活動への意欲が高まった自分もつくって見たいという思いをもつ子が増えた。
   一人一人の思いや願いを表現するための支援
     カードをもとにしてグループをつくった。子どもたちは,お互いの発表を見たり,ティーム・ティーチングの助言を受けたりして表現への意欲を高めることができた。
   家庭や地域との連携を生かした学習活動
     子どもたちが8グループに別れていたので,どのグループにもきめの細かい支援が行えるように学生ボランティアに協力してもらうことにした。そして,近隣の短大生6人のボランティアと水戸農業高校の実習教諭のゲスト・ティーチャー,教師2人によるティーム・ティーチィングを行った。ボランティアの方たちには「幼稚園生のつもりで」ということと「楽しい表現になるようにアドバイスをしてほしい」ということを頼んでおいた。2度目ということもあり,6人で相談して,ローテーションを組んで交代で各グループにかかわってくれた。活動の最中だけでなく,終わった後も一人一人にアドバイスカードを書くなど,子どもたちの表現活動の力になってくれた。
   体験活動を重視した単元構成の工夫
     先ずは探検するというように,体験してみてから自分のやりたいものを見付けるという流れで活動を進めた。「虫にさわれない」「何でつくったらよいか分からない」など苦手意識をもっていた子も繰り返しかかわる中で,自ら進んで活動するようになった。
(6)  授業研究の成果と課題
   研究の成果
     生活科の学習において「自ら学び自ら考える力」を育てるには,以下のような総合的な取り組みが有効であることを明らかにすることができた。
  • 単元にかかわるコーナーをつくり,資料やヒントになるものをいつも身近に置いておくことで,自分から調べたり活動の内容を深めたりすることができる。
  • 何らかの形で自分の活動を振り返ることは,自分自身だけでなく友達の良さに気付き 次の活動への意欲を喚起することができる。
  • 一人一人の思いや願いを見取るためには,カードを使うことも一つの手段である。
  • 地域に応じた人材を活用することで,よりきめの細かい支援をすることができる。
  • 対象と繰り返しかかかわることで,子どもの思いや願いを変化させることができる。
   今後の課題
     地域の人材や素材を見直し,その学校,その地域にあった多様な活動や体験ができる教材を見付ける。
     ゲスト・ティーチャーやボランティアとのティーム・ティーチングをより効果的に行うためのマニュアルつくり。

[生活科目次]