自己教育力を育てる評価の在り方 | |||||||
― 自己実現を支えるもの ― | |||||||
県立八千代高等学校 | |||||||
1 | 主題設定の理由 | ||||||
(1) | 本校は,平成10年度に総合学科に学科改編した。“個性をみがき 夢をかたちに”をモットーに「一人一人を生かす教育」を教育方針として,進路実現,自己実現を推進している。「総合的な学習の時間」は,自己実現を支えるものに最も適した学習活動である。 | ||||||
(2) | 「総合的な学習の時間」は,「産業社会と人間」や「課題研究」,「学校設定科目」との関連を考慮し,生徒が主体的に設定した課題について知識・技能の深化・総合化を図る学習や自己の在り方生き方や進路について考察する学習を行なう。 | ||||||
(3) | 1年次で「産業社会と人間」が終了してしまうので,進路や職業意識が低下してしまうことや,進路をまだ決めかねている生徒にも必要であると考えた。 | ||||||
2 | 研究のねらい | ||||||
本校の創意工夫を生かして行なわれる横断的・総合的な学習や生徒の興味・関心に基づく学習などを通して,ねらいを定めた。 | |||||||
(1) | ディベート学習の体験により,資料の集め方や表現活動の方法を身に付ける。 | ||||||
(2) | ディベートを体験することで情報の集め方,まとめ方,調べ方,討論の仕方などの学び方を見に付ける。 | ||||||
(3) | 問題解決や探求活動に主体的,創造的に取り組む態度を身に付ける。 | ||||||
(4) | 自己の生き方についての自覚を深める。 | ||||||
3 | 「評価」の基本的な考え方 | ||||||
一人一人のもつ良さや可能性を見出すための評価の工夫 | |||||||
(1) | 取り組む態度や表現力の向上等の自己評価及び相互評価 | ||||||
(2) | レポートや活動状況の観察等による多面的,継続的な評価 | ||||||
(3) | 教科のような試験の成績によって数値的に評価することはせず,活動や学習の過程,報告書や作品,発表や討論などに見られる学習状況や成果などについて,生徒の良い点,学習に対する意欲や態度,進歩の状況等を踏まえて適切に評価することとし,例えば,指導要録の記載においては,評価は行なわず所見を記述する個人内評価などが望まれる。 | ||||||
(4) | 評価の方法としては,例えば,レポート,論文,作品などの制作物,発表や討論の様子などから評価したり,生徒の自己評価や相互評価を活用したり,活動の状況を教師が観察して評価するなどして,学習に対する意欲や態度,思考力,判断力,表現力,活動の過程で進歩した点などを適切に総合的に評価することが考えられる。 | ||||||
(5) | 「総合的な学習の時間」の評価にあたっては,結果の評価ではなく,生徒の活動や学習の達成事項を評価する方法(ポートフォリオ等)を活用し,「自己目標」に照らして「自己学習」が十分であるかどうか,自分が追究したいことを洗い出していく自己分析力が自己評価活動を支えることになる。 | ||||||
(6) |
自己評価活動は,次の自分の学びの課題や方向を探り出していこうとする活動である。この自己評価活動は,学習の場面での「ふりかえり」が大きな意味を持つ。 ふりかえりの目的は,「その子のメタ認知能力」を育て,その判断のもとに自分の学びを「セルフコントロール」(自己制御)していくことのできる能力を育てることにある。 「自己評価カード」も,カードに書くこと自体が目的ではない。「ふりかえり」から何に気づくかということが重要なのである。つまり,自分の学びの「ねらい」「疑問や課題」「学び方・資料活用力」「自分の活動」の質や方向性について,それが妥当なものであったかを吟味することが大切である。 自己評価活動は,子どもの「ふりかえり」の活動を通して,質の高い学び方や技能を育て,その子のメタ認知能力を育てることをめざしている。 自己評価活動を支え促すものとして,教師の見取り,対話,支援,子供同士の相互評価(対話),地域の人々や親とのコミュニケーションなどが挙げられる。 |
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4 | 活動の実際とその考察 | ||||||
(1) | テーマと課題を提示 | ||||||
生徒が,事前に提示した学習計画表をもとにテーマを大きく4つに絞った。 各自の適性,興味・関心,進路等に応じて選択したテーマ単位で,10人程度のグループを編成し,各グループ共通のテーマ及び課題を設定する。 |
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(2) | 体験的学習 | ||||||
テーマとの関わりについて考えさせるために,体験的学習を実施する。 | |||||||
(3) | 調査活動による資料収集と表現の工夫 | ||||||
生徒の主体的活動の場を拡張するために,校内外でのフィールドワーク等の調査を実施する。また,調査・研究に基づく推論と立論をし,根拠を明確にしながら表現活動の資料作成と表現の工夫をする。 これらを支えるものとして,ディベート学習の積極的導入がある。また,外部講師の招聘などで生徒自身が「生きる力」を育成する。 |
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(4) | 「総合的な学習の時間」の学習活動を行うに当たっては,次の事項に配慮する。 | ||||||
ア | 自然体験やボランティア活動,就業体験などの社会体験,観察・実験,調査・研究,発表・討論,ものづくりや生産活動などの体験的な学習,問題解決的な活動を積極的に取り入れること。 | ||||||
イ | グループ学習や個人研究などの多様な学習形態,地域の人々の協力を得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制,地域の教材や学習環境の積極的な活用などについて工夫すること。 | ||||||
(5) | 2・3年次の異年次履修(各年次2単位) 4単位(140時間) | ||||||
5 | 今後の「評価」の在り方と改善への視点 | ||||||
(1) | 評価の在り方 | ||||||
@ | ポートフォリオ評価の有効な活用 ポートフォリオ評価とは,ある領域における生徒の努力や進歩や達成を示す生徒の学習の収集物である。その収集の課程には,内容の選択,選択の基準,長所の判断,生徒の自己評価が含まれていなければならない。具体的には,生徒の学習について,観察記録,感想,情報カード,作品,絵,文章,諸資料,新聞,自己カード,ポスターセッション,ビデオ,CD−ROM,創作・製作物等の生徒の諾作品が含まれる。それらを教育目標に向かって,体系的に収集したものである。学習ファイルがポートフォリオとなるためには,「子ども自身のふりかえり」と「選択活動や編集の課程」と「話し合い」が必要である。 |
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<活用したいポートフォリオ評価の類型について> | |||||||
ア | 子ども用ポートフォリオ 主として,一人一人の子供の学びの軌跡やその姿を描き出しているファイル。 |
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イ | 教師用ポートフォリオ 教師自身の側の意図や支援や成長を振り返るものである。子どもをどのように育てようとしているかの目標・ねらい,また授業過程でのその時々の教材,資料,クラス全体の一人一人の子どもについてのデータやメモ等が綴られている。教師自身の自己評価のデータとなり,またそれが生徒に跳ね返るものとして教師自身の力量の向上にも役立つ。 |
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ウ | 共同のポートフォリオ ー人一人の子どもの学びにかかわる教師,友達,地域のさまざまな人々の声や思いや願いが載せられているファイル。 |
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A | 具体的な評価項目 問題に気づく力,自分の問題として受け止める力,活動を振り返る力,課題を見つける力,課題解決のための探求力やねばり強さ,知識・思考力・表現力・情報を求める力等 |
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(2) | 改善の視点 | ||||||
@ | 支援の視点 教師は,生徒ができた,できなかったというのではなく,生きるカをつけるために生徒がどのように学んでいくか,学びにそって,どのような支援を行なっていくか。 |
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A | 「総合的な学習の時間」を通して,「生きる力」を育てる視点 | ||||||
ア | 生徒が自ら課題を見付け,自ら考え,自ら学び,主体的に判断し,表現し,よりよく問題を解決する資質や能力を育てる。 | ||||||
イ | 実際の取り組みでは,ガイダンスの段階,テーマ設定の段階,課題追究の段階,中間発表の段階,まとめ,発表,次年度への構想段階のそれぞれの段階で評価活動を取り入れ,それをどう生かしながら,次の活動へつないでいったか,生徒がどのような学びを得られたかを考察する。 | ||||||
ウ | 自らの学びを確かめながら,課題を追究しようとする力を育てるための評価を重視する。 | ||||||
エ | 生徒がどのように学習対象とかかわり,自らの在り方生き方を考えることができるように学んでいくか(内容知,方法知を含めて)。 |
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