課題発見の意欲を高め,探求心を育てる総合的な学習の在り方
―生徒の評価活動を通して―
土浦市立土浦第一中学校
 主題設定の理由
   本校は土浦駅を中心とする商業地域に位置し,多くの情報にあふれ,また情報を得やすい環境にある。善くも悪しくも生徒たちは,膨大な情報を入手することになるが,その処理,判断力は十分には育っていない。また,与えられた知識や技能を身に付けることには熱心であるが,課題について追究しようといった面では,意欲の見られない生徒もいる。
 そこで,総合的な学習を通して,探求心や学び方を身につけさせ,情報収集,処理及び表現の力を育てたいと考えた。総合的な学習は,教科書のない学習であるから,常に評価を通して,学習活動の修正を行い,そのねらいに迫る必要があると考え,この主題を設定した。
 
 研究のねらい
   課題発見,課題追究や成果発表等の各学習の活動時において,自己評価や自己評価活動への支援を行うことで,生徒の探求心や意欲を育てる総合的な学習が展開できるようにする。
 
 「評価」の基本的な考え方
   本校での評価の観点及び学習過程における評価を次のように設定した。
  (1)  評価の観点
     [学習への意欲,態度]の評価
       活動に意欲を持ち,継続的に調査,研究ができるか。
     [学習の成果]の評価
       報告書や作品,発表を通して育てたい力が身に付き,目標に到達しているか。
     [進歩の状況]の評価
       活動全体を通して,課題追究の深まり,広がり,強まりが見られるか。
  (2)  学習過程における評価
     [課題発見]の場面での評価(自らの課題)
       「これをやってみたい」という課題の発見ができたか。
       真に探究,追究してみたいという課題の発見ができたか。
     [課題追究]の場面での評価(自らの方法,自らの内容)
       自分なりのアプローチができたか。
       教科学習(既習)を駆使しての方法選択ができたか。
       学び方を身に付けながら問題解決ができたか。
       発見したこと,考えたことを自分なりにまとめられたか。
       表現することや成果の交流ができたか。
       自分なりの意味づけができたか。
     [成果発表]の場面での評価(自らの成果)
       自分なりの表現ができたか。
       学習の振り返りができたか。
 
 活動の実際とその考察
   第3学年の実践から   テーマ:「土浦について」
  (1)  課題発見
     テーマ「土浦について」は,この学習を通して,よりよい地域づくりに貢献する態度や意識を生徒が身につけることを期待し,将来的に,地域活性のための一員となって関われるような人づくりにつながると考えた教師の願いが込められたものである。自分が調べたい,そして具体的で実現可能な課題発見につなげるよう,課題を例示しながらオリエンテーションを行った。
 生徒からは課題として,土浦で行われる全国花火大会について,土浦の産業について,土浦の歴史,飛行船ツェッペリン号,亀城公園,土浦のゴミ問題,土浦の生き物等に関する課題が出された。
 課題の中には,内容的に弱いものもあったが,課題に深まりを持たせるよう教師がはたらきかけて,課題づくに取り組んだ。
  (2)  課題追究
     計画づくり
       総合的な学習への初めての取り組みでもあるので,事前指導として,資料の集め方,調査の仕方の指導から電話のかけ方,訪問の仕方のマナーまでを学習した。それぞれの指導内容については,自作のマニュアルを作り,指導後,ファイルに綴じ込ませた。この指導をもとに,その後生徒自身による訪問先との交渉が行われた。また,担当教師と相談をしながら学習計画を完成させた。ここでは,活動の目的(何のために,どこで,どんなことを)がはっきりしていて,課題を解決するための最善の方法を考え,調べるための時間や場所(訪問先など)に無理がないかどうかを評価の観点とした。
     追究活動
       市立図書館,図書室,コンピュータ室を主にして追究活動を始めた。追究活動の中で,他の施設を訪問したり,利用したりする場合には,生徒自身が日時等の交渉を行った。校外での調査日を2日間設定し,そのどちらかの日で利用できるように交渉させた。土浦警察署で土浦市の事故を調べたグループがあったが,交渉から訪問,調査までを自分たちの力で行った。「交通課の担当の方は,たくさんの資料を準備し,ていねいに質問に応じてくださった。また,自転車の事故が多いので,自転車の乗り方や特に事故に注意すべき地点等を指導していただいた。」との生徒の報告もあった。
 生徒は,グループによっては調査活動の時間と場所にゆとりができ,歴史館や博物館などへと活動場所を広げていった。また,調べていく中で,いきづまったときは,学校へ連絡をとり,調査の方法(調査場所の紹介や調査の仕方等)など,教師が助言し追究活動の修正を行いながら発展させていった。
 こうした追究活動により,課題の解決が進んだのは勿論,地域の人との触れ合いによって,テーマである土浦を理解することになった。
     中間発表
       中間発表の場を郁文祭(文化祭)での展示発表に設定した。これまでの追究活動での成果を紹介する掲示物(1グループ1枚に整理)を作成,展示し,相互評価の場とし,知識・情報の交流と互いの評価を行った。また,学年の一クラスを展示発表の部屋とした。他学年の生徒や保護者など,見る人や聞く人たちに自分たちの研究がわかりやすく紹介されているか,内容,方法,成果と課題をはっきりさせて,まとめているかを評価の観点として助言し,表現活動に対する支援を行った。ここでの相互評価をもとに次の活動の方向性を考えさせた。
  (3)  成果発表
     成果のまとめと整理
       一人一人がレポート作成を行うことで,学習の振り返りを行うと共に,達成感,成就感を味わわせる。
     学習発表会
       学級単位の学習発表会を実施し,報告と意見の交換を行う。評価の観点は中間発表と同じに,見る人や聞く人たちに自分たちの研究がわかりやすく紹介されているか,内容,方法,成果と課題をはっきりさせて,まとめているかを評価の観点とした。
 実際には,「総合学習研究発表会記録用紙」を用意し,発表態度,研究内容,調査方法,総合評価をもって,互いの総合的な学習の評価を行った。
 発表記録用紙には,「土浦にはたくさんの名物があり,初めて知ったものもあった。」というような内容面での評価の他に,「調査の仕方が適切でよかった。」等の方法面での評価もあり,生徒が自分の活動を振り返る上で参考となる評価を交換し合うことができた。
     評価
       まとめと成果に対する自己評価のための作文を書き,自分を振り返り,成長の足跡を知ることになる。今まで何気なく過ごしていた自分の街に新たな発見をし,改めて街を見直し始め,将来への夢や思いを語り始めた生徒の作文が数多く見られた。「この学習を通して,よりよい地域づくりに貢献する態度や意識を身に付けることが期待される。」と,単元の構想としてねらったものが,生徒の中に少しずつ芽生えてきているように思う。
  (4)  考察
     教師の評価活動への支援を受け,活動に意欲的に取り組んだグループがあった。自らの課題に基づき,自らの方法で,自らの内容を,自らの成果としてまとめていくというような自  立した姿を目指し,また,総合的な学習の成立のために,教師は評価を行い意欲的な活動を促してきた。単に学習の到達度を測る評価ではなく,生徒の自立を援助するための評価がこの学習ではもっとも大切と判断された。
 
 今後の「評価」の在り方と改善への視点
  (1)  生徒の学習活動を支援する評価
     「総合的な学習」における生徒の学習活動では,今日的な課題,生徒の興味関心に基づく課題に対して,生徒一人一人が体験を通して課題解決を図ることによって,その生徒なりの課題に対する感じ方,考え方,見方を養うことが大切である。そのため,生徒に対する教師の評価は,生徒の学習が深まったり広がったりするために大きな役割を担う。教師の評価が次の活動への十分な意欲づけになるようにする。
  (2)  各学習段階での評価活動
     生徒は今の経験を通して,成長,変化し続けていくものである。したがって,可能な限り生徒一人一人の今の進歩の状況をとらえ,教師が感じたことを言葉にする(ほめたり,励ましたり,アドバイスしたりする)各学習段階での適切な評価活動を行う。
  (3)  自己評価力の育成
     学習活動をより深まりのあるものにするには,学習の各段階における振り返りの力(自己評価力)を育てていくことが必要である。生徒の学習が深まらないのは,振り返りの弱さが一因となっていることが考えられる。そこで,学習反省カード,発表記録用紙に振り返りの観点をより具体的に示していくなどの工夫が更に必要である。
  (4)  評価の観点(および評価規準)
     育てたい生徒像,育てたい力をもとに学校独自の評価の観点をさらに吟味して設定する。

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