「総合的な学習の時間」における評価活動の在り方
ー「異学年交流」授業の評価活動の事例を中心にしてー
日立市立滑川小学校
 主題設定の理由
   本校では平成11年度から「総合的な学習の時間」の試行をしてきた。昨年度は「総合的な学習の時間」の単元開発を行い,3〜6年生で15〜30時間程度の実践を行った。その中で「総合的な学習の時間」の実施にあたっての課題が出された。学習環境の整備,単元構成,指導や支援の在り方,評価の方法等具体的に本年度に解決するべきものが残された。 特に昨年度の「総合的な学習の時間」の中ではほとんど意識した実践がみられなかった評価について本年度は研究を進めたいと考えた。 評価は「総合的な学習の時間」において欠かすことのできないものという認識のもとに,指導と評価の一体化を図ることが重要であると考えた。 その中でも児童の自己評価や相互評価の在り方とそれに伴う教師側の評価方法の開発と工夫を中心に研究したいと考え主題を設定した。
 
 研究のねらい
  (1)  単元構成の中に評価を組み入れ,指導と評価の一体化について研究する。
  (2)  自己評価活動を多様な方法で実践し,評価方法の改善を図る。
  (3)  異学年のグループ学習を学習過程の中に位置付けて,個を生かすための評価活動の在り方を探る。
 
 「評価」の基本的な考え方
  (1)  児童の自ら考える力や課題解決の力の育成を図るために,「自己評価」の方法や場面等を工夫すると共に,学習過程を総合的に評価する。
  (2)  教師にとっては,体験活動でどんな力がつくのか,課題解決を通してどんな力を児童につけさせるのかまた,単元構成はどうであったのか(授業のねらいの達成度,児童の反応,次に向けての反省改善点等)の評価を行う。
  (3) 教師間で授業を参観し合い,意見を交換する教師相互の評価の機会を積極的に持つ。特に本年度は教育交流ということで,中学校の先生方に「総合的な学習の時間」をみてもらう外部評価の視点を設ける。
   
  出会い(ふれる) 追   究 まとめ・発表
児 童 興味・関心
計画の立て方
話し合い活動
課題設定
学習方法の選択
追究活動の継続性
活動の多様性
表現方法の選択
考え方の深まり
自己評価
新たな課題
工夫・改善
活動の意味付け
教 師 単元構想(全体のイメージ)
単元全体の評価の在り方
観点の検討
評価の検討・自己点検
教師相互の評価の確認(児童の反応・次に向けての反省点等)
目標の達成度
次に生かす自己評価
単元構成の振り返り
外 部 保護者の願い 中学校との教育交流
保護者の授業参観
地域の人々の感想
 
 活動の実際とその考察
  (1)  単元設定のねらいと趣旨
     課題追究のための「学習カード」
       子どもたちが単元を見通して,どのように学んでいくかおおよそのイメージを持たせる。
 特に指導・評価のポイントとして重要視したのはグループの活動での調査活動の仕方(電話のかけ方・質問の仕方・資料の探し方や見方・必要に迫られた対応)と話し合い活動の充実である。 常に課題を深め合っていけるような配慮である。 6年生にはクラスでグループのリーダーとしての心構えを指導徹底した。
     子どものよさを指導に生かす自己評価カード(活動のあしあとカード)
       子どもたちが単元を見通して,どのように学んでいくかおおよそのイメージを持たせる。
 特に指導・評価のポイントとして重要視したのはグループの活動での調査活動の仕方(電話のかけ方・質問の仕方・資料の探し方や見方・必要に迫られた対応)と話し合い活動の充実である。 常に課題を深め合っていけるような配慮である。 6年生にはクラスでグループのリーダーとしての心構えを指導徹底した。
      (ア)  「活動をふりかえって」の項目に,その単位時間の活動の様子を毎時間の終了時に具体的に書かせた。 子どもが「学び」の中でどんな姿を見せたか(自分の考えや行動をどう振り返っているか)教師側で成長していく個々の児童の取り組みを評価することを目的とする。
      (イ)  事前にただ単なる感想や反省の記述にならないように,使用する「カード」の記入のガイダンスを十分行った。
      (ウ)  時間の最後では自己評価カードの記入の時間を5分間必ずとった。 この5分間の使い方では,次のような工夫を試みた。
  • 子どもたち一人一人に自分の活動を振り返らせて書かせる。
  • グループの中で話し合いを持たせてから書かせる。
  • 大グループで小グループの代表の一人(教師の意図的な指名)に活動内容を振り返らせ,グループの計画の進み具合や活動の方向性等を発表させる。( 個人の振り返りカードは授業外で記入 )
  • 1〜2グループの簡単な発表後,教師の賞賛や児童の相互評価を加 味して評価させた。
     教師側の一人一人の見取りカード2種類(個人カルテ・グループでの個人カード)
      (ア) 指導の手立てを考える情報としての「評価」をねらいとする。
      (イ)  5・6年生の異学年交流のグループ編成ということもあり,各グループの担当の教師は自分のクラスの子どもではない。ましてや異学年の子どもたちを担当することで,必然的に一人一人の子どもの見取りをしなければならないし活動の様子を観点を決めて記録にとどめておかなければならない。 毎時間観点を持って評価を積み重ねていかなければ,グループの掌握は困難になる。学習活動終了後の放課後には5・6年の教師が一堂に会してグループの進行状況を報告し合う。 時間的に調整がつかない時は,記録用紙を2学年で回覧して自分のクラスの子の活動状況を把握した。
 他学級の子や他学年の子のグループ担当としての責任感を教師が自覚した。 個に対する多角的な視点から評価ができた。
     ポートフォリオ(学習ファイル)
       子どもたちが集めた資料や学習記録,発表会のために作った資料等は一人一人がすべてファイルにとじこみ,学習の足跡としている。教師は,このファイルを学習課程及び結果を評価する資料とする。教師の関わりが子どもや友達,親,他の教師と共有できる情報であると共に振り返って再検討するための情報としての材料になるようにした。
     外部からの評価
       本校では二つの視点から「外部評価」を試みた。一つは中学校との教育交流。二つ目は校内での相互授業参観の実施である。前者は学区の中学校の先生方に校内研修会に参加してもらい,小学校の「総合」 の時間を参観しての意見・感想等を得た。外に開いた「総合」をねらう。後者に関しては,本年度5回の校内研修会を実施し,「単位時間に教師がどういう支援・評価を行ったか」を観点にして記録をとり,以後の評価活動に資した。
 
 今後の「評価」の在り方と改善への視点
   本校では児童の自己評価力育成を目指すということで,方法としての「振り返りカード」を使用してきた。「総合的な学習の時間」ばかりではなく,各教科領域においても積極的に振り返りカードの実践を心がけてきた。時に応じて,振り返りの観点を変更することもあった。これまでの実践の経過をたどってみると,確かに自己を振り返ることには有意義であったことはいえよう。しかし,教師側の意図する「自己を正しく評価する」ということに本当に力をつけたのかということには今後とも研究の余地が残されている。以下に,今後の改善点及び改善への視点を挙げる。
   1単位時間終了時における自己評価の内容の検討をする。ただ単なる授業内容の反省や感想,授業の態度のみに終わらない自己評価の観点の明確化を図る。
   教師側の評価規準の設定の工夫をする。特に,個々人のよい点や進歩の度合を評価する。単元のねらいと評価の一体化を図る。
   評価の集積をする。児童・教師側の評価の集積の体制作りを図る。
   本年度までは学校のテーマは一本化されているが、各学年ごとに独自に単元を開発してきた。次年度に向けては,学年間の継続性,関連性,発展性を十分考慮した学校としての全体計画を作成しなければならない。教師側の単元構成の検討や評価をし,今後の学校としての方向性を確認する必要がある。 また,これらの評価のシステムを作っていかなければならない。

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