第1 研究の概要
 
 研究の趣旨
   昨年度までの研究(「これからの教育課程の在り方」)で,「生きる力」の構造化の試み,問題解決的な学習と育てたい力との関連,児童生徒の自己評価力をつけていくことなどを,「総合的な学習の時間」における今後の実践に向けた視点として提示した。そこで今年度は,これまでの研究を踏まえ,「総合的な学習の時間」における評価の在り方と改善への視点を探っていくこととした。
 今年度は,新学習指導要領の移行期間に入ったこともあり,県内のほとんどの学校(特に小・中学校)で「総合的な学習の時間」への取り組みがスタートしているが,どんな活動をするか,どんなテーマでやるか,どのように課題をもたせるかといったところでの悩みも多く聞かれる。この意味で,「活動(自体)をどうつくるか」に関心が向いている学校も少なくない。こうした中で,移行期間における今後の課題は,各学校が「総合的な学習の時間」の目標や内容を明確にすること,そして,それを実現する単元の開発を並行して進めていくことである。
 さらに,各学校のこうした取り組みをベースにして,「総合的な学習の時間」に児童生徒がどのように取り組んでいるか,そこで何を学び,どのような力が育ってきているかを評価することが求められる。この押さえが弱いと,活動のみで終わってしまうことにもなりかねない。すなわち,学習の過程での児童生徒の学びの姿をどのようにとらえ,支援していくか,またどのような力を身に付けてきたのかの評価の在り方が求められている。
そこで,まず単元レベルでの評価の在り方を考えることとした。単元の「評価の観点」を設定するとともに学習段階に沿って「育てたい力」やそのための「支援の在り方」を明確にしてくこと,さらに教師の指導の改善に向けた視点をどう導き出すかについて,「単元構想案」を通して示していこうと考えた。
 
 研究の期間
   平成12年度の1か年とする。
 
 研究の方法
   本研修センターでの「総合的な学習の時間」研修講座並びに職務研修講座参加者,さらに県内の研究実践校へのアンケートによる実態調査を実施した。また,各校種毎に研究協力員を委嘱し,研究協議会を開催するとともに具体的な評価の在り方について実践研究を進めた。
 
 研究のねらい
   平成10,11年度の「これからの教育課程の在り方」に関する研究を踏まえ,「総合的な学習の時間」における評価の在り方と改善への視点を提示し,各学校における取り組みを支援する。
 
 研究の内容
  (1)  「総合的な学習の時間」についての県内各学校の実態と課題をとらえるとともに,評価の在り方について研究協力員を委嘱し実践研究をした。
     各学校の実態と課題をとらえるために,本研修センターの研修講座受講者を対象にしたアンケートを実施した。
     県内の研究実践校(小・中学校,高等学校 計38校)に対して,より実践的な課題や評価にかかわる調査項目を設定した記述式のアンケートを実施した。
     小・中学校,高等学校(計15人)の教諭に研究協力員を委嘱し,実践研究に取り組んだ。
  (2)  「総合的な学習の時間」単元構想案の作成及び今後の実践に向けた新たな改善の視点を提示した。
     単元の目標,活動構想,評価の観点,各学習段階にそった育てたい力,支援の在り方等を「単元構想案」に位置づけ,さらに成果と課題,改善への視点を明らかにした。
     「単元構想案」の作成,実践研究を踏まえ,「総合的な学習の時間」における評価の在り方と改善への視点について提示する。
 
 研究の経過
  (1)  研究協力員の委嘱
     小・中学校,高等学校の各校種ごと,それぞれ5人の研究協力員を委嘱した。
  (2)  本研修センターの各研修講座受講者へのアンケート調査の実施。
     アンケート項目とその集計結果については,本研究紀要巻末の「アンケート調査資料」に紹介してあるので参照されたい。なお,アンケートを実施した研修講座及びご協力いただいた受講者数は以下の通りである。
    5月 「総合的な学習の時間」研修講座(小・中・特) 受講者数 846人
        「総合的な学習の時間」研修講座(高・特) 受講者数 111人
    6月 学年主任研修講座(小) 受講者数 123人
        学年主任研修講座(中) 受講者数 100人
        学年主任研修講座(高・特) 受講者数 82 人
        進路指導主事研修講座(高) 受講者数 38 人
        教務主任研修講座(小) 受講者数 99人
        教務主任研修講座(中) 受講者数 64人
        教務主任研修講座(高・特) 受講者数 50人
        教頭研修講座(小) 受講者数 91人
        教頭研修講座(中) 受講者数 37人
        教頭研修講座(高・特) 受講者数 59人
        校長研修講座(小) 受講者数 97人
        校長研修講座(中) 受講者数 17人
        校長研修講座(高・特) 受講者数 35人
  (3)  県内の「総合的な学習の時間」研究実践校へのアンケートの実施(8月に回収)
     アンケート項目とその集計結果については,本研究紀要巻末の「アンケート調査資料」に紹介してあるので参照されたい。なお,アンケートを実施した研修講座及びご協力いただいた受講者数は以下の通りである。
     小学校 14 校
     中学校 11 校
     高等学校 13 校
  (4)  研究協力員との研究協議会の経過
    第1回研究協議会
      (ア) 期日:平成12年5月22日(月)
      (イ) 講義 教育課程の評価と改善の方向
        講師 筑波大学教授(教育学系長) 山口 満 先生
        【講義内容の項目】
        ○移行措置1年目の状況と課題について
        ○新「学力テスト」の実施と教育課程評価
       
  • 中教審答申(平成11年12月)での学力問題の取り上げ方。
  • 今日の「学力問題」を考える。
  • 学力問題とは何か。
    • 学力問題とその構造
    • 学力観,その二つの系譜
    • 「生きる力」と基礎・基本,そして「総合的な学習の時間」
  • 基礎・基本の明確化と特色ある教育課程の編成
        ○「総合的な学習の時間」における評価の考え方と方法
       
  • 指導の目標の明確化
  • 過程(プロセス)重視の教育課程と評価
  • ポートフォリオ評価の導入
  • 「総合的な学習の時間」の評価
      (ウ) 研究協議
     
  • 研究の趣旨説明
  • 校種ごとの分散会にて,情報交換と今後の研究の進め方について協議した。
    第2回研究協議会
      (ア) 期日:平成12年7月13日(木)
      (イ) 研究協議
     
  • 研究協力員より提出された「研究計画」について報告,協議をした。
  • 研修講座を通してのアンケート集計結果から,実態と課題について協議した。
  • 「総合的な学習の時間」単元構想案の形式及び内容を検討した。
    第3回研究協議会
      (ア) 期日:平成12年10月30日(月)
      (イ) 研究協議
     
  • 研究協力員による実践研究についての中間報告とその内容について協議をした。
  • 「総合的な学習の時間」単元構想案の形式及び内容について再検討を行った。
  • 実践研究の課題について整理するとともに,研究のまとめに向けての報告書形式等について協議,確認をした。
    第4回研究協議会
      (ア) 期日:平成12年12月5日(火)
      (イ) 研究協議
     
  • 「総合的な学習の時間」単元構想案の形式及びその内容について協議をした。
  • 研究協力員の研究報告書について研究協議をした。


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