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意欲がない,怠惰傾向,依存的,緘黙,不登校などの子どもの指導 |
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行動的で目立つ気になる行動とは反対に,やる気がない,意欲がない,怠惰,緘黙,不登校など,気持ちをあまり外に表現しない目立たない行動をする子どもたちも学校で問題になっています。2で述べたように行動的で目立つ行動よりも,この章で述べるような気持ちが内面に向いている子どもは,背景や原因が把握しにくく指導が難しい場合があります。これらの子どももやはりその意味(子どもからのメッセージ)を読みとることが指導の手がかりになります。 |
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(1) |
問題点のチェックをしよう! |
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まず,このような子どもの基本的な理解をしておこう |
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これらの気になる行動は,共通して意欲がないように見える状態像を示しています。意欲の心理的側面から指導の手がかりを探します。 |
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○ |
子どもは、本来意欲的で自発的な存在です。 |
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・ |
子どもは本来「知りたい,分かりたい,できたい」気持ちでいっぱいの自発的で意欲的な存 在です。 |
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↓
意欲的でなくなっているのは,何かがブレーキをかけているからです。そのブレーキを取り除くと,本来の意欲が戻ってくると考えられます。 |
↓
これらの子どもは,共通して強い緊張や不安があります。そして,それが持続的に続いている状態にあります。意欲にブレーキをかけている元凶は,この部分にあります。 |
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A |
意欲の状態を調べよう |
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一口に「意欲がない」という状態でも,次のような状態があり,それによってその子どもの 問題の深刻さが予測できます。 |
ア |
ある場面,ある状況では意欲的だが,別な場面や状況では意欲がなくなってしまいます。 自信のあるもの,好きな物には意欲的になれます。 |
イ |
意欲はあるが,全体的に弱いです。 自信がない,緊張・不安がある,警戒しているなどの状態。 |
ウ |
全然意欲を示さない(無気力)。 感情の表出を強く押さえ込んだ状態。 |
*依存的,怠惰傾向,緘黙などについても,上記と同様にその状態像を調べます。状況や場面によって自発的な動きがあるかないかで配慮事項も違ってきます。 |
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(2) |
気になる行動をする子どもの指導をしよう |
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<意欲を失っている子ども>の指導 |
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ア |
評価を気にしすぎる子どもなのかもしれない |
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<指導の手がかり> |
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○ |
失敗を恐れ,評価を気にして意欲をなくしてい ます。(連続した失敗経験が積み重なって) |
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→ |
○ |
「上手」,「下手」などの評価的な声掛けを避け,活動を勇気づける 声掛け,励ます声掛け,承認する 声掛けなどを多くします。 |
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↓ |
・ |
活動の「結果」よりも「過程」に働きかけるかかわりを多くします。 |
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イ |
自己主張ができない子どもなのかもしれない |
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<指導の手がかり> |
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○ |
命令や指示の多い環境,自己主張が許されない環境の中で自己主張ができなくなっています。
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→ |
○ |
安心して自己主張できる関係を築きます。 |
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↓ |
・ |
指示的な声かけを少なくします。 |
・ |
選択的声かけを多くします。 |
・ |
自分で決める場面を多くし,本人の決定を尊重し,認めます。 |
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ウ |
「考えること」を簡単にあきらめる習慣が付いているのかもしれない |
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<指導の手がかり> |
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○ |
「がんばっても,がんばってもできない,分から ない,評価されない」の連続が「無力感」を生み(学習性無力感の形成),「考える」ことをあきらめてしまいます。 |
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→ |
○ |
「考える」ことを簡単にあきらめ ないように,初めは負担にならない課題から始めます。 |
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↓ |
・ |
すでに「できる」,「わかる」課題を十分に体験させます。 |
・ |
2つの選択肢から答えを選ばせる課題などから始めて,少しずつ考える習慣をつくります。 |
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エ |
すでに「考えない習慣」が形成された子どもかもしれない |
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<指導の手がかり> |
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○ |
「分からない」体験の連続は,次第に疲労感を伴い,その繰り返しの中で、課題を見ただけで,反射的に(自動的に?)考えることを放棄してしまうという「考えない習慣」が形成されます。 |
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→ |
○ |
「考えない」習慣を崩し,「考える習慣」を形成する。 |
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↓ |
答えの選択肢を2,3,4とだんだん増やした課題を出して,疲れない程度に思考を揺さぶります。 |
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A |
<不登校>の指導 |
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不登校の原因は,様々なことが複合しており,はっきりと特定できるものは少ないです。発症の時期によっても指導方法が異なっており,専門機関との協力体制が必要です。 |
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<行動の意味>
○ |
不登校のタイプとして,以下の3タイプが見られます。 |
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A: |
不安など情緒的混乱による不登校 |
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B: |
無気力による不登校 |
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C: |
遊び・非行による不登校 |
○ |
不登校の一般的経過は,以下の4段階をたどります。 |
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第1段階(登校をしぶる段階)・・・ |
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登校時の腹痛,遅刻,午後に元気 |
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第2段階(暴力をふるったりする段階) |
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親や物にあたる,暴言,反抗 |
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第3段階(引きこもりの段階)・・・ |
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昼夜逆転,人に会わない,部屋にこもる |
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第4段階(回復の兆しの段階)・・・ |
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明るい表情,早起き,先生の訪問の受容 |
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→ |
<指導の手がかり>
○ |
登校刺激について |
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最近の不登校の経過の中で,上記の第2段階(暴力・・)が見られなくなってきていると言われています。その原因として登校刺激を与えない指導が一般的になってきたからだと分析をする人もいます。
不登校の指導の基本的姿勢は,登校刺激を与えずに見守ることが大切と言われています。自分を見直す時間を十分に与えましょうという配慮です。
ただ,就学前や小学校低学年の子どもにおいては,段階的に登校刺激を与えて,登校のきっかけをつくる方法で成功する場合もあります。 |
○ |
「指導」の前に「共感的理解」を
「どうしよう」の前に,学校へ行けない子どもの悩みや気持ちを受け止め,耳を傾けることが大切です。 |
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B |
<緘黙>の指導 |
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自分の家にいる時は,元気よく遊んだり,大声で話したりしているのにもかかわらず,学校や他人の家に行くと急に元気がなくなって話さない子どもがいます。場面緘黙(かんもく)と言われています。 |
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<行動の意味>
場面緘黙は,引っ込み思案,臆病,恥ずかしがりなど情緒的に過敏な性格の子どもが緊張したときに起こりやすいです。
共通して背景に緊張と不安があります。
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→ |
<指導の手がかり>
○ |
無理に話させようと子どもを追い込むと,ますます緊張と不安が高まって話せなくなります。 |
↓ |
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「無理に話さなくたっていいんだよ。話したくなったら話してね。」という程度で話せない子どもの状態をさりげなく受け止めてあげることが大切です。 |
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