U  指導の手がかりを見つけよう
困ったな!このような子どもをどう指導したらいいの?どうしよう・・・どうしよう・・・
例
 
   まず,子どもの気になる行動の基本的な理解をしておこう
    (1)  「どうしたらよいか」の前に「なぜ,そのように行動するのか」を考えよう!
   
子どもの気になる行動は,「子どもからのメッセージ」
(「子どものSOS」のサイン)
「悪い行動かな?」「何かのメッセージかな?」
 子どもたちの気になる行動は,一般に「子どものわがまま」,「しつけがされていない」,または「子どもの怠け」が原因などと思われがちですが,視点を変えて「気になる行動をすることで何かを教師に訴えている」,「気になる行動は子どもが何かに戸惑っている姿である」と理解した方が指導の手がかりが見つかるようです。何を訴えているのか,何に戸惑っているのかを検討する方が適切な指導方法を見つける早道です。
 気になる行動を「悪い行動」と考えるか,「子どもからのメッセージ」と考えるかでその後の指導方法が全然違ってきます。
 *重要;「どうしたらよいか」を考える前に,まず「なぜ,そのように行動するのか」を考えてみましょう。
    (2)  “特別な子ども” という見方をやめよう!
   
気になる行動をする子どもの “心”や“認識”の発達は、一般の子どもと同じです。
 障害児の場合は,障害はあるが“一般の子どもと同じ” であるという認識が必要です。心や 認識の発達は,早い遅いはあっても一般の子どもたちと同じ発達の筋道に沿って成長します。このように理解すると指導の手がかりを見つけやすくなります。障害児は特別な子どもではありません。障害にとらわれ過ぎると子どもの姿が見えなくなり,適切な指導方法を見失います。
 (障害とまでは断定できませんが,不適応を起こしている子どももいます。この子どもたちもやはり同じように特別な子どもではありません。一般の子どもと同じ対応が必要です。)
    (3)   気になる行動の特徴を二つに分けて考えてみよう!
   
一次障害と二次障害という見方
 気になる行動をする子どもを観察してみると,障害など直接的な 原因が強く影響して生じている行動(一次障害)と,そのために周りの人々が戸惑い,混乱して,誤ったかかわりをするなど心理・社会的要素が強く影響して生じている行動(二次障害)があります。気になる行動をこの二つに分けて考えると指導の手がかりを見つ けやすくなります。指導に当たっては,まずこの二次障害への対応に目を向けると具体策が取りやすく,改善が早く見られます。
「何に戸惑っているのかな?」
「何に戸惑っているのかな?」
    (4)  気になる行動は,何かに“戸惑っている”姿と考えよう!
   
気になる行動をする子どもの “心”や“認識”の発達は、一般の子どもと同じです。
 障害児の場合は,障害はあるが“一般の子どもと同じ” であるという認識が必要です。心や 認識の発達は,早い遅いはあっても一般の子どもたちと同じ発達の筋道に沿って成長します。このように理解すると指導の手がかりを見つけやすくなります。障害児は特別な子どもではありません。障害にとらわれ過ぎると子どもの姿が見えなくなり,適切な指導方法を見失います。
 (障害とまでは断定できませんが,不適応を起こしている子どももいます。この子どもたちもやはり同じように特別な子どもではありません。一般の子どもと同じ対応が必要です。)
     以上のように基本的な理解をした上で,以下に述べる手がかりを参考に,個に応じた指導を検討してみてください。具体的な指導の手がかりが見えてきます。
 
   多動,攻撃行動,飛び出し,パニック,こだわり,自傷行為などの指導
 
 学校場面でよく問題となる行動として,多動な行動や乱暴な行動・こだわりや奇異な行動など,行動的で外に向けて活発に表現するよく目立つ「気になる行動」があります。これらの行動は,動き回ることが多く,友達とのトラブルなども生じ,教師が対応に最も苦慮する問題です。
 これらの行動は,教師から見て自分勝手で理由などないように思えても,それぞれの子どもにとっては意味のある行動であることがあります。従って,その意味(子どもからのメッセージ)をしっかり読みとることが指導の手がかりになります。これらの行動は,環境調整などの指導の工夫によっては,行動の改善がかなり早く見られる場合があります。
    (1)  問題点のチェックをしよう!
       気になる行動は,いつも絶えず生じている場合は少なく, ある一定の似たような状況の中で多く生じたりする傾向があります。そのパターンを見つけだすと指導の手がかりが見えてきます。!
 
      @  まず,気になる行動が生じるパターンを探そう……出現の共通性や傾向を見つけだす。!
     
いつ,どのような時に気になる行動が多く(または強く)生じているかをつかみます。
(上記とは逆に,よい行動がどのような時に多く生じているかのチェックも大切です。)
when where who いつかな
どこでかな
誰といるときかな
何をしている時かな
出現状況を検討すると,以下のいずれかの状況に当てはまることが多いようです。

 ア 家ではあまり生じないが学校で多い(強い)など,場面によって異なります。
 イ ある時期から急に多くなってきたなど,時期によって異なります。
 ウ 一人ぼっちの時に多く生じています。
 エ 人がいる時に多く生じます。人がいない時には生じません。
 オ 家でも学校でも他のところでも,場面に関係なくいつも生じています。
 カ 小さい時からずっと似た行動が続いています。

*オ,カは,何らかの器質的・機能的問題の関与が疑われる可能性があります。
      <行動パターンをチェックする方法>
      行動観察の記録表の活用
 頻繁に生じる行動は傾向をすぐ把握しやすいですが,あまり頻繁に生じない行動は傾向を把握しずらいです。その時,行動記録表があると状況分析に役立ちます。行動記録を取ってみましょう。
 
      A  さらに,気になる行動が生じやすい4つの場面(場面の質)に当てはめて整理してみよう
     
行動の出現状況を観察すると,多くの行動が以下の4つの状況下に現れる傾向があります。


 *上記のア,イ,ウは二次障害で,エについては,器質的・機能的障害の関与が疑われます。
 
      B  気になる行動の「メッセージ」を読み取ろう
         緊張・不安が高まっているのかもしれない。   <指導の手がかり>
       
緊張や不安を取り除こうとする結果としての行動

何に緊張しているのか,何を不安がっているのかを探します。
 
緊張をほぐす工夫
不安を取り除く工夫
         寂しい,退屈(心が空虚な状態)なのかもしれない。   <指導の手がかり>
       
満たされない心を埋めようとする結果としての行動

人間関係の問題が背景にあります。
 
安心できる関係を築き,信頼関 係を形成しながら遊びなど人間関係の楽しさを体験させます。
         人の関心を引きたいのかもしれない。   <指導の手がかり>
       
わざと人を困らせる行動をして関心を引き付けようとする行動

この引きつけ行動は,わざわざ教師を困らせる行動をするのが特徴です。
 
困る行動の出現は無視し,困る行動をやめた時やよい行動が生じた時に積極的にかかわります
         何か障害があるのかもしれない。    
           (時と場面に関係なく行動が生じている場合)   <指導の手がかり>
       
本人の努力ではどうにもならない行動

時と場合に関係なく生じている時は,何か障害が関与している場合があります。
 
早急に専門機関での相談が必要になってきます。

    (2)  気になる行動をする子どもの指導をしよう
 
      @  <こだわりがある子ども>の指導
         自閉症児や神経症傾向の強い子どもの中に,いろいろなこだわりをもっている子どもがいます。何にこだわるかは様々です。物にこだわる,並び方にこだわる,動作にこだわる,時間にこだわる,儀式にこだわるなど様々です。
     
<こだわりの意味>
緊張や不安が高まるとこだわりが強くなる傾向があります。心が安定している時は弱くなったり,消えたりします。こだわりの背景に緊張や不安が関係しているようです。また一つの獲得した行動を発展できなくて,パターン化した行動を繰り返すということもあります。
<指導の手がかり>
一般的には直接的にその行為を禁止する方法ではなく,その背景にある緊張や不安を軽減するかかわりを進める中で,結果としてこだわり行動が軽減するという方法が,その後の成長にはよいようです。発展できない行動は,新しい行動のレパートリーを広げてやる必要があります。
 
      A  <予定変更に対応できない子ども>の指導
         自閉的な子どもに多く見られる行動特徴として,日課の変更があったりするとパニック状態になったり,何度もしつこく質問したりする行動があります。突然理由なくパニック状態になったりした時に,原因を探っていくと意外と日課など何かの予定変更があったりします。
     
<行動の意味>
 自閉的な子どもたちは,あいまいな状態を最も不安がります。そこで前もって自分なりに行動の設計図を組み立てて,それにそって行動することで安定を確保するということがあります。従って,急な予定の変更は緊張と不安を高め,パニック状態になることがよくあります。
<指導の手がかり>
 生活の流れを前もって予告すると安心して行動に移すことがあります。その時,言葉だけで伝えても伝わらないことがあります。絵や文字など視覚的情報で伝えていくと理解されやすいことがあります。(聴覚からの情報処理の苦手な自閉症児がいます)
 
      B  <突然,場面と関係のない行動をする子ども>の指導
         授業中突然飛び出したり,変わったことを発言したり,奇声を発したりする子どもがいます。この行動がよく起こる場面を観察してみますと,以下の場面でよく見られます。
     
<行動の意味>
 人の関心を引く時(引きつけ行動)
 退屈な時
 緊張が高まっている時
 別な刺激に過剰に反応しすぎた時
   注意欠陥/多動性障害(ADHD)の子どもなど
<指導の手がかり>
  “引きつけ行動”の場合は,行動が出現した時に注意するなどのかかわりがよく行われますが,逆効果の場合が多いようです。注意すればする程その行動がひどくなるという現象が生じます。 基本的には,危険のない限り,行動が出現した時は知らないふりをし,治まったり,よい行動をした時に大いにほめたりするなどの働きかけが有効です。
 
      C  <パニックを起こす子ども>の指導
         表出言語をもたない子どもやコミュニケーションがスムーズに成立しない子どもなどによく見られます。
     
<行動の意味>
 緊張・不安が高まり,それを自ら静める方法がなくなった時に生じます。
 示威行為…要求が阻止されると要求を通そうとして起こす。パニックを起こすと周りの人がびっくりしてひるむので,その行動が強化されます。
<指導の手がかり>
 パニックや攻撃行動は,表現手段が豊かになるにしたがって減少するという報告が多くあります。子どもが豊かに表現できる状況を工夫します。(文字やサインでもよいです)
 示威行為や引きつけ行動の意味の場合,人がいる時に生じ,人がいない時は生じないことが多いです。基本的にはパニック状態の時は無視し,落ち着いた時にかかわる方法で効果があがる場合があります。またその指導と平行して気持ちを伝える正しいコミュニケーションの取り方を教えることも大切です。
 
      D  <攻撃的な行動の子ども>の指導
         自分の欲求が阻止されるとすぐ相手を攻撃し,友達とトラブルを起こす子どもがいます。
     
<行動の意味>
 表現力のへたな子どもに多いです。(暴力で訴えるしか方法がない状態)
 ある状況と条件づいていることが多く,反射的に行動が出てしまうことが多いです。
<指導の手がかり>
 攻撃行動が生じたら,すぐ叱る指導の前に本人の言い分を十分聞いてやる(本人が客観的に悪くても,嘘でも)ようにすると攻撃行動がだんだん少なくなることがあります。
 
      E  <自閉症児>の指導
         上記の@〜Cの行動をよく示す子どもの中に自閉症と診断されている子どもがいます。学習を進める上で参考になる特徴について触れておきます。
     
<自閉症児の症状>
 自閉症と診断される子どもの症状は様々であり,言語活動の豊かな子どもから全然会話をしない子どもまで,また高機能自閉症と呼ばれる知的に高い子どもから全然学習にのらない子どもまで症状は様々で,幅広い特徴を示します。共通して人とのかかわり合いが苦手です。
     
<自閉症児の指導に役立つ共通の特徴>
 極端に鋭敏な感覚器官があります。
 (臭覚,味覚,触覚,聴覚,視覚等)
 変化や見通しのもてないことに対して極端に不安がります。
 聴覚からの情報処理が苦手であり,視覚からの情報処理が得意です。
 相手の気持ちになって考えるのが苦手です。
 予定表などを使って,前もって行動の予定を教えておくことで安心します。
 声かけ以外に,絵や文字など視覚的情報を使って教えると指示がスムーズに通ります。理解も早くなります。
 感情交流が非常に苦手であり,言語の豊かな子の場合,「○○すべきである」,「○○ねばならない」という論理で,状況を把握させるとよい場合もあります。
 
      F  <注意欠陥多動性障害(ADHD)児>の指導
         最近話題になっている障害名です。いままで「落ち着きがない」,「集中できない」などと言われてきた子どもの中の一部にこの障害のある子どもがいます。
     
<ADHDの症状>
 表面上はわがままだとかしつけがなされていないと思われがちな自分勝手な行動が目立ちます。
 多動や乱暴な行動もみられます。
 状況に関係なくいつも落ち着きがなく,精力的に動き回り,トラブルを起こします。
     
<原因>
 中枢神経系での何らかの機能障害があり,自分で行動をコントロールすることが難しい状態にあります。
 しばしば「判断」より「反応」が先行してしまって不適応行動を起こします。
 医療的問題でもあり,医師の診断が必要です。
 ある特定の薬が有効であることが確かめられています。
 高学年になると,理解されないための混乱から様々な二次障害が表れるので早目の対応が必要です。


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