(13)  国語科「現代文」(高校3年)での実践
   自他の心情理解を深め,学習意欲を高めるグループ学習の在り方
学習計画
@  単元  小説『こころ』
A  単元について
   近代小説の古典とも呼ばれている長編小説『こころ』を読むことで,人間関係の様相やそれを描き出す二人の人物の語りを通して表現のすばらしさを味わわせる。また,登場人物の心情理解も深めさせる。
B  児童の実態(男子24人 女子14人 計38人)
   全員大学進学を希望し,ほとんどの生徒が理系の学部を望んでいる。古典に対して,苦手意識をもっている生徒が,やや多い。
C  学習形態
   一時間の授業の中で,二種類のグループを使った。一つは,ソシオメトリック・テストに基づいた男女混合の6,7人からなるグループである。単元内容を一斉授業で学習した後,このグループに分かれ,問題作成用ワークシートを使い,班別問題(資料1)を作成した。班長は,文法・内容読解・文学史等の小問を各班員に割り当て,班員は短時間で小問を考え,できた小問を全員で検討し,班別問題を作り上げた。もう一つは,二人一組の自由なグループである。基本的に,好意を持っている生徒同士で編成した。構成的グループ・エンカウンター本来のエクササイズをエクササイズTとして行うとともに,班別問題による課題解決学習をエクササイズUとして行った。
 
結果と考察
@  結果
   授業の終わりに書かせた「振り返りアンケート」によると,まず「級友に親しみを感じた」と「意欲的に取り組めた」の二項目が,94%(「はい」と「まあまあ」の合計)と多い。次に「級友と助け合って勉強できた」が86%,「級友に自分の心情画を理解してもらえた」が83%,「級友の心情画をうまく説明できた」が75%と続く。加えて,自由記述の感想欄に「おもしろい」「楽しい」「充実していた」等の評価する言葉が多く見られた。以上のことから,この授業では,生徒たちはお互いの心情を理解しあい,意欲的なグループ学習を行えたと考える。
A  考察と課題―4種類のサポートの視点から―
   教師の生徒への4つのサポートにより,生徒は安心して自分を表出できる雰囲気が生まれた。その中で生徒は,相互に受容し合い,グループごとの笑い声と拍手という現象が表れた。一人一人の生徒の,自分を表現したい,相手を分かりたいという自然な欲求が,グループ内で心情画を媒介として展開され,その声や動作がグループを刺激し合い,次第にクラスが全体として動くようになり,若者らしい熱を帯びた自由の場をつくり出したように考える。生徒の感想に書かれた「自分で考え,表現するという本当の勉強と言えるものだった」(資料2)は,それを表していると考える。今後の課題としては,クラスという集団をより心理的に大きく動かすための効果的なサポートの在り方について,さらに研究を進めたい。
 
本時の学習
@  目標
   「K」(『こころ』に登場する主人公の友人)の自殺の原因を,考察させる。
   エクササイズによって,自分の心情を理解してもらうとともに,相手の心情を理解しようとし,併せて,学習意欲を高める。
A  準備・資料
   心情画作成用シート(A4上質紙),振り返りアンケート
B  展開
  展開
   
資料1 生徒の作成した「『K』の自殺前の心情画」
資料1 生徒の作成した「『K』の自殺前の心情画」
 
資料2 生徒の記述した「振り返りアンケート」
資料2 生徒の記述した「振り返りアンケート」


[目次へ]