(11)  地理歴史科「世界史B」(高校2年)での実践
   自己開示を啓発する構成的グループ・エンカウンター応用の授業
学習計画
@  単元  中国の古典文明
A  単元について
   中国の古典文明は,周辺の諸国にも大きい影響を与え,中国を中心にして次第に東  アジア世界を形成させていった。この文明がどのような過程で形成されたのかをとら  えさせ,また,この文明が日本にも大きな影響を与えたことを気付かせる。
B  児童の実態(男子14人 女子25人 計39人)
   本学年の生徒の進路希望は,四大・短大が6割,専門学校が3割,就職が1割であるが,本ホームルームの進路希望は,大半が専門学校か就職であり,学習意欲の乏しい者もやや散見される。
C  学習形態
   興味・関心を高めつつ,教師・生徒間の人間関係および友人関係を深めさせて学習意欲の向上をねらいとして,構成的グループ・エンカウンター(以下,SGEと略す)を応用したグループ学習を導入する。2人〜4人でグループを作り,お互いに問題の作成・解答・採点の作業をさせることを通して,グループ内で自分の考えや気持ちを伝えるという自己開示活動を行わせる。
 
結果と考察
@  結果
   生徒は問題作成の時間が足りなくて慌ただしかったようであるが,積極的に取り組んでいた。問題用紙に相手への感想が多く記されており,生徒相互の自己開示が促進されたものと思われる。「振り返りアンケート」の結果では他者理解のできた生徒が77%(「はい」と「まあまあ」の合計),級友に親密感を持った生徒が85%であった。
 さらに,自由記述では「これを通して親交がさらに深まると思った」(A男),「その人の性格(?)が問題にも現れてくるような気がしてすごくためになった」(B子),「今日やった範囲ではまだ足りないので,もっと頑張りたい」(C子),「自分の勉強不足をとても感じた。テスト勉強にやる気が出た」(D子)と,級友関係の深まりや学習意欲の高まりが表されている。
A  考察と課題―4種類のサポートの視点から―
   SGEではファシリテーターが道具的・情報的サポートと共に,情緒的・評価的サポートも行うことが要求されるが,本授業では教師が積極的に自己開示をしながら生徒への評価的サポートを行うように心掛けた。その後,多くの生徒が教師に対して率直に自己開示するようになったことから,教師・生徒間の人間関係が促進されたものと考えられる。以上のことから,SGE応用の授業が,人間関係作りや学習意欲向上に効果を及ぼしたものと言えよう。今後,興味・関心を高める「学習指導サービス」と人間関係作りを促進する「心理教育的援助サービス」とを共に生かし,日常的に展開できるSGE応用の「授業用エクササイズ」を開発したい。
 
本時の学習
@  目標
   本単元の復習によって,学習内容の理解の定着化を図り,さらに定期考査に備えた試験勉強のモチベーションを高める。
   グループ内で互いに問題を作り感想を書き合うことによって,相手の個性や人柄を知り,他者理解を深め,相互の親密性を高める。
A  準備・資料
   問題作成用ワークシート,カウントダウンタイマー,教科書,授業ノート
B  展開
  展開
   
資料1 生徒の作成した問題
資料1 生徒の作成した問題
 
資料2 生徒の記述した「振り返りアンケート」
資料2 生徒の記述した「振り返りアンケート」


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