研究のまとめと今後の課題
  (1)  研究のまとめ
     本研究は,児童生徒の自己実現を援助する学校教育相談の在り方について理論研究,調査研究及び授業による実践研究を行った。理論研究においては,授業における教師の4種類のサポートを明確にすることができた。調査研究においては,小学校,中学校及び高等学校の児童生徒の人間関係,教師と児童生徒の人間関係及び児童生徒の学習意欲の実態を明らかにすることができた。さらに、児童生徒相互の人間関係及び教師と児童生徒の人間関係と学習意欲との関係を明らかにすることができた。また、実践研究においては,授業における教師の4種類のサポートが,児童生徒の学習意欲を高めるのに効果があることがあきからになった。
 理論研究,調査研究及び実践研究において,分かったことは次のとおりである。
    @  理論研究から分かったこと
       教師の授業における援助として,4種類のサポートがある。一つは、援助者が児童生徒に関心,信頼,傾聴,指示などの情緒的な働きかけを提供する情緒的サポート。二つは,児童生徒の課題の取り組みや問題解決に役立つ情報,示唆,アドバイス,支持などを提供する情報的サポート。三つは,児童生徒の課題の取り組みの活動に対して,援助者が評価をフィードバックする評価的サポート。四つは,援助者が児童生徒に物品,時間,環境調整による助力を提供する道具的サポート。
       豊かな人間関係を基盤とした授業実践と,児童生徒の学習意欲との間には相関関係がある。
       教師と児童生徒の人間関係には、児童生徒の世界を児童生徒の目で見ようとする「理解者になる」,教師が発達のプロセスで困難な課題に立ち向かう児童生徒の「味方になる」,あなたと私が一人の人間としてともにいきるという「人間としてかかわる」の三つがある。
    A  調査研究から分かったこと
       児童生徒は,相互の人間関係がよいと認識していると、学習意欲は、41%と高く,逆に,悪いと認識していると,13%と低い。
       児童生徒は,教師との人間関係がよいと認識していると、学習意欲は、49%と高く,逆に,悪いと認識していると,9%と低い。
       児童生徒は,教師のサポートの中でよいと思うことは、小学校では道具的サポートで,グループ学習,さまざまな実験や作業ができることをあげている。中・高校では,情緒的サポートで,作業の雰囲気づくりをしたり、生徒の意見を丁寧に聞いてくれたりする等をあげている。
       児童生徒は,教師のサポートの中でいやだと思うことは、小学校では道具的サポートで,授業の速度が速いことや黒板の文字がみずらいこと等をあげている。中学校では,情緒的サポートで,授業の雰囲気が日によって変化したり,生徒の意見を丁寧に聞いてくれないこと等をあげている。高校では,道具的サポートで,生徒を無視した授業の進め方や授業の進度が早いこと等をあげている。
       教師は,学習意欲を高めるための配慮として,小・中・高ともに道具的サポートが59%で一番高く,情緒的サポートは7%と一番低い。
    B  実践研究から分かったこと
       グループ活動,構成的グループ・エンカウンターの導入や教師の4種類のサポートにより,教師と児童生徒の人間関係が深まっていった。そのことにより,児童生徒は安心感を得られ,学習に対する取り組み方が積極的になった。そして,児童相互の関係も深まっていった。
       人間関係づくりをねらいとする構成的グループ・エンカウンターを実施したり,道具的サポート,情緒的サポートを取り入れたりすることで,児童相互の人間関係が深まった。そして,児童生徒一人一人の学習意欲も高まっていることが,児童の観察や振り返りアンケートの自由記述等から分かった。
       グループ学習を取り入れたり,授業における教師の4種類のサポートを積極的に取り入れることで,授業に対してお互いの人間関係をさらに深めることができた。また,授業を楽しみに待ったり,意欲的に取り組んだりすることができた。
       自己主張,自己開示を目的に授業に「デイベート」を導入したり,人間関係づくりの一助とするための構成的グループ・エンカウンターを取り入れたりすることで,児童生徒相互の親藩感を高めながら豊かな人間関係を築くことができた。そして,学習意欲を高めることもできた。
  (2)  今後の課題
    @  学校心理学を基に,授業における学習意欲を高めるサポートの在り方を研究する。
    A  各枚種(小・中・高)ごとに,児童生徒相互の人間関係及び教師と児童生徒の人間関係と学習意欲の関係について,具体的項目で検討をする。
    B  実践研究では,授業における教師の4種類のサポートの関連を明らかにする。
    C  児童生徒の援助ニーズをより具体的に明らかにする。
    D  援助ニーズの高い児童生徒への二次的援助サービス,三次的援助サービスの具体的な在り方について究明する。


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