調査研究
(1)  授業に関する意識調査」の概要
@  予備調査(平成9年度実施)の成果
 本調査に先立って,授業についての児童生徒及び教師の実態を把握するために予備調査を実施した。調査は,質問紙法によって,平成9年7月〜10月に,小(367名)・中(718名)・高(545名)の児童生徒1630名,小(40名)・中(88名)・高(76名)の教師204名を対象に行った。
 調査結果から次の点が明らかになった。小・中・高校の教師はいずれも児童生徒の活動を生かした授業を心がけているが,学年が進むにつれて児童生徒にとって勉強は楽しくなくなっている。教師(特に中学)は授業中ほめたり,児童生徒を尊重し耳を傾けるよう心がけているが,児童生徒はそうは感じていない。
 以上のことから,児童生徒と教師との意識のズレを明らかにすること,ならびに人間関係が学習意欲に及ぼす影響を明らかにすることが,本調査での課題となった。
A  研究の目的
 本研究は,授業における心理教育的援助サービスとしての人間関係作りを,学校心理学の立場から検討するものである。研究の目的は第1に,授業における児童生徒相互の人間関係,教師・児童生徒間の人間関係,そして学習意欲についての実態を明らかにする。第2に,授業における人間関係と学習意欲との関係を明らかにする。第3に,授業における教師の4つのサポートの実態を明らかにすることである。
B  質問紙の作成
 質問紙は,「中学・高校用学校モラールテスト(SMT)」(日本文化科学社,1984)を参考にし,さらに,児童生徒の認識と教師の配慮とを比較するために,ほぼ同じ内容の質問項目にした「児童生徒用」と「教師用」の質問紙(5件法)を作成した。質問項目は,児童生徒相互の人間関係(6項目),教師・児童生徒間の人間関係(6項目),そして学習意欲(6項目)の3領域で構成した。
 さらに,「児童生徒用」では「授業の進め方や態度で『いいな』と思ったこと」「授業の進め方や態度で『いやだな』と思ったこと」「授業について思っていること」を自由記述で尋ねた。また,「教師用」では授業の中で「子ども同士の人間関係を作る」「教師と子どもとの人間関係を作る」「学習意欲を高める」ための配慮や工夫を自由記述で尋ねた。
C  調査時期と対象者
 調査は,平成10年8月〜9月に,小(11校:1348名)・中(8校:1164名)・高(7校:832名)の児童生徒3344名,小(11校:393名)・中(8校:297名)・高(7校:277名)の教師967名を対象に実施した。
D  分析方法
 分析方法は,肯定的な回答(「とてもそう思う」と「わりにそう思う」の%の和)を,小・中・高別に児童生徒と教師とを比較して検討した。また,得られた自由記述の回答を4種類のサポートに分類して検討した。なお,4種類のサポートにはそれぞれに援助的なものと非援助的なものを含めた。
(2)  意識調査の分析
@  授業における人間関係と学習意欲の実態・・・項目別・カテゴリー別の結果と考察
 ここでは,授業における人間関係と学習意欲に関して児童生徒および教師の意識を明らかにすることをねらいとしている。グラフ中の横軸の項目は小・中・高校別の五段階評価を表している。5は「とてもそう思う」,4は「わりにそう思う」,3は「ふつう」,2は「あまりそう思わない」,1は「まったく思わない」である。例えば,『小54』は,小学校の5「とてもそう思う」と4「わりにそう思う」の和を示している。左のグラフが児童生徒自身の認識を表し,右が教師の配慮を表して,左右を対照させて検討できるように配置してある。
(グラフの縦軸は%)
 児童生徒相互の人間関係について
(ア)  項目別の結果と考察
項目1  友だちは,授業中,私に親切にしてくれます。 項目1  子ども同士が,授業中,親切にできるように配慮をしています。
児童・生徒1 教師1
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,友だちが親切にしてくれていると認識しているのは,小高校生で4割台,中学生で5割台となっている。
【教師の配慮】:
 友だちに親切にできるように配慮している教師は,小学校で約6割,中高校で約4割となっており,さほど多くはないようである。上級学校になるにつれて配慮が乏しくなっているようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,中高校生の認識が高いことから,教師の配慮がなくとも友人関係はうまくいっているようである。
項目2  私の学級では,授業中,みんなで助け合って勉強しています。 項目2  子ども同士が,授業中,助け合えるように配慮をしています。
児童・生徒2 教師2
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 みんなで助け合って勉強していると認識しているのは,小中高生で2割台であり,授業中に助け合うということはかなり少ないようである。
【教師の配慮】:
 授業中,子供同士が助け合えるように配慮している教師は,小中高ともに5割強と比較的高いが,高校になると配慮は比較的乏しくなっている。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小中高ともに極めて低く,そのズレが目立っている。
項目3  私の学級では,授業中,みんなが明るくほがらかです。 項目3  学級が,明るく朗らかな雰囲気になるように心がけています。
児童・生徒3 教師3
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,学級のみんなが明るくほがらかだと認識しているのは,小中学生で6割台,高校生で約4割となっており,上級学校になるにつれて明るくほがらかだと認識している子どもの数は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 明るく朗らかになるような雰囲気作りを心掛けている教師は,小中高ともに8・9割となっており,雰囲気作りの配慮をしている教師は非常に多いようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,特にその差の大きいのが高校であり,そのズレが目立っている。
項目4  私の学級はよくまとまっています。 項目4  学級が,まとまるように配慮をしています。
児童・生徒4 教師4
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 学級がよくまとまっていると認識しているのは,小中高校生ともに約2割と低く,学級の凝集性は低いという結果であった。
【教師の配慮】:
 学級がまとまるような配慮をしている教師は,小学校で約8割,中高校で約7割であり,比較的教師の働きかけが高いことが示されている。なお,上級学校になるにつれて配慮は乏しくなっていることが示されている。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小中高校ともに極めて低く,学級に対する両者の認識の違いが明確である。
項目5  私の学級には,親しくしている友だちがいます。 項目5  子ども同士が,親しくなるように配慮をしています。
児童・生徒5 教師5
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 学級に心から親しくしている友だちがいると答えているのは,小中学生で約8割,高校生で約7割である。多くの児童生徒は学級に親友がいることを示しているが,はたして心を開いた親友関係なのかどうか今後検証する必要があると思われる。
【教師の配慮】:
 子ども同士がより親しくなれるように配慮している教師は,小中高校ともに比較的高い。小学校で8割弱,中学校で7割弱,高校で6割弱と上級学校になるにつれて配慮が乏しくなっている。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,親しくしている友だちがいると認識している子どもの数は多い結果であった。
項目6 項目6 私の学級には,私の気持ちをわかってくれる友だちがいます。 項目6  子ども同士が,お互いの気持ちをわかりあえるように配慮をしています。
児童・生徒6 教師6
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 学級に気持ちを分かってくれる友だちがいると答えたのは,小学生で6割弱,中学生で6割強,高校生で5割強,親友の有無を問う前問よりも約2割ほど少ない結果であった。「心の触れ合う関係」と「親友関係」は一致しないようである。
【教師の配慮】:
 子ども同士が気持ちを分かり合えるような配慮をしている教師は,小学校で7割弱,中高校で5割前後であり,比較的この配慮は乏しいようである。このことは子どもの心の触れ合う関係づくりの難しさを示唆するものであろう。
【児童生徒と教師との比較】:
 小学校では教師の配慮に比べて,児童の肯定的な認識は低いが,中高校では教師のに比べて生徒のは高い結果であった。成長発達上,中高校生は主体的に心の触れ合う友だち作りをしているものと考えられる。
(イ)  カテゴリー別の結果と考察 ・・・児童生徒相互の人間関係について(項目1〜6)
 ここでは,項目の調査結果を合計して,児童生徒相互の人間関係を一つのカテゴリーとして総合的に考察する。
 項目1〜6の調査結果を,グラフ化したものは次の通りである。
項目1〜6の調査結果
【児童生徒の認識】:
 級友との関係を肯定的に認識しているのは,小中学生で約5割,高校生で約4割であり,小中学生に比べて高校生の級友関係がやや希薄であることが窺われる。
【教師の配慮】:
 級友関係づくりへの配慮をしている教師は,小学校で7割台,中高校で約6割であり,上級学校になるにつれて教師の配慮が低くなっている。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師は児童生徒の級友関係づくりに配慮をしているにもかかわらず,児童生徒の認識は低い結果となっている。このことは,教師の配慮が効果的でない可能性を示していると思われる。
(ウ)  まとめと今後の課題・・・児童生徒相互の人間関係について
 児童生徒相互の人間関係について,児童生徒自身の認識は次の通りである。項目1・2の結果から,授業中においては児童生徒相互の人間関係を深めるような活動がさほど行われていないことが示された。また,項目4の結果から,学級集団のまとまり(凝集性)が低いことが示された。しかし,児童生徒を個別的に見ると親友関係(親密性の高い友だちとの関係)は良好であることが,項目5・6から示された。なお,小・中・高校生間では,あまり差がないことが分かった。
 児童生徒相互の人間関係づくりへの教師の配慮について,教師自身の認識は次の通りである。個別的な親友関係づくりにも配慮しているようであるが,教師は,特に,学級集団の凝集性を高める工夫や配慮を積極的に行っていることが示された。なお,上級学校になるにつれて,教師の配慮は低くなっていることが示された。
 児童生徒と教師との認識を比較してみると,教師が学級集団の凝集性形成の配慮をしているにもかかわらず,児童生徒は凝集性が低いと認識している。しかし,教師は個別的な親友関係づくりに配慮をしていないが,児童生徒は親友関係が高いと認識していることが明らかにされた。
 以上のことから,教師の配慮は必ずしも効果的ではないことが示された。グループダイナミクスの知見では凝集性の高さが意欲や心理的安定をもたらすという。今後,教師は授業において凝集性を高め人間関係を深められるような授業展開を工夫することが望まれよう。
 教師・児童生徒の人間関係について
(ア)  項目別の結果と考察
項目7  先生は,授業中,私たちに笑顔で接してくれます。 項目7  私は,授業中,笑顔で接するように心がけています。
児童・生徒7 教師7
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,先生が親切であたたかみがあると認識しているのは,小学生で5割台,中学生で4割台,高校生で2割台となっている。上級学校になるにつれて先生の親切さや暖かみを認識している児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 あたたかみにある授業を心掛けている教師は,小中学校で約8割,高校で約7割である。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,教師と児童生徒とのこのズレは,今後の課題となると思われる。
項目8  先生は,授業中,私たちの発表や話ををよく聞いてくれます。 項目8  私は,授業中,子どもたちの発表や話をよく聞くように心がけています。
児童・生徒8 教師8
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,先生が子どもの言うことをよく聞いてくれると認識しているのは,小学生で約7割,中学生で6割弱,高校生で約3割となっており,上級学校になるにつれて先生は自分たちの言うことを聞くと認識している児童生徒は減少している。
【教師の配慮】:
 子ども達の発言をよく聞くように心がけている教師は,小学校で約9割,,中学校で9割弱,高校で8割強であった。大多数の教師が子どもの発言に耳を傾けているようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮が高いのに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,このズレをどう解消するかは今後の課題となると思われる。
項目9  先生は,授業中,私たちの気持ちをわかってくれています。 項目9  私は,授業中,子どもたちの気持ちをわかろうと努力しています。
児童・生徒9 教師9
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 先生が子どもの気持ちを分かってくれていると認識しているのは,小学生で約5割,中学生で3割弱,高校生で約1割となっており,上級学校になるにつれて,先生が子どもの気持ちを理解していると認識している児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 子ども達の気持ちを理解する努力をしている教師は,小中高校ともに7割台である。多くの教師が子どもの気持ちを理解しようと努力しているようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮が高いのに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,学年が上がる程に教師との人間関係が希薄になっていることを示唆している。このズレをどう解消するかは今後の課題となると思われる。
項目10  先生は,授業中,よくわかるように教えてくれます。 項目10  私は,授業中,子どもたちにわかりやすく教えるように努力しています。
児童・生徒10 教師10
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 先生が授業中よく分かるように教えてくれていると認識しているのは,小学生で6割強,中学生で5割弱,高校生で約2割となっており,上級学校になるにつれて,先生がよく分かるように教えてくれていると認識している児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 子ども達に分かりやすく教えるように努力をしている教師は,小中高校ともに8割台であった。多くの教師が子どもたちに分かりやすく教える努力をしているようである。特に高校では約9割の教師が努力をしているという結果であった。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮・努力が高いのに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,学年が上がる程に授業内容が理解できなくなっている児童生徒がいることを示唆している。
項目11  先生は,授業中,できない人をはげまして,元気づけてくれます。 項目11  私は,授業中,つまずきのある子どもや学力不振の子どもにも配慮をしています。
児童・生徒11 教師11
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,先生ができない人を励まし元気づけていると認識しているの  は,小学生で約5割,中学生で約3割,高校生で約1割となっており,上級学校になるにつれて先生ができない人を励まし元気づけていると認識している児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 子ども達に分かりやすく教えるように努力をしている教師は,小中高校ともに8割台であった。多くの教師が子どもたちに分かりやすく教える努力をしているようである。特に高校では約9割の教師が努力をしているという結果であった。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮・努力が高いのに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,学年が上がる程に授業内容が理解できなくなっている児童生徒がいることを示唆している。
項目12  先生は,授業中,だれに対しても公平に接してくれます。 項目12  私は,授業中,どの子どもに対しても公平に接しています。
児童・生徒12 教師12
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,先生が誰にも公平に接してくれると認識しているのは,小学生で約5割,中学生で約3割,高校生で1割台となっており,上級学校になるにつれて,先生が誰に対しても公平に接してくれると認識している児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 どの子どもにも公平に接している教師は,小高校で約7割で,中学校で6割台であった。比較的多くの教師がどの子どもにも公平に接しているようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮の高さに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,学年が上がる程にズレが大きくなっており,教師に対する不信感があることを示唆していると思われる。
(イ)  カテゴリー別の結果と考察 ・・・教師・児童生徒の人間関係について(項目7〜12)
 ここでは,項目7〜12の調査結果を合計して,児童生徒相互の人間関係を一つのカテゴリーとして総合的に考察する。
 項目7〜12の調査結果を,グラフ化したものは次の通りである。
項目7〜12の調査結果
【児童生徒の認識】:
 先生に対して信頼感をもっているのは,小学生で6割弱,中学生で約4割,高校生で約2割となっており,上級学校になるにつれて先生に対する信頼感は希薄になってことを示している。これは児童生徒の成長発達上,大人との関係が疎遠になることによるものと,教師の指導の在り方によるものなどが考えられよう。
【教師の配慮】:
 教師と児童生徒との信頼関係づくりに配慮している教師は,小中高校ともに8割近くとなっている。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低い結果となっている。このことは,教師の配慮が効果的でないことを示していると思われる。
(ウ)  まとめと今後の課題・・・教師・児童生徒の人間関係について
 教師・児童生徒の人間関係について,児童生徒自身の認識は次の通りである。教師との人間関係は,上級学校になるにつれて,ますます希薄化していることが示された。
 教師・児童生徒の人間関係づくりへの教師の配慮について,教師自身の認識は次の通りである。教師は,自分と児童生徒との人間関係づくりには積極的に配慮していることが示された。なお,小・中・高校間ではほとんど差が認められなかった。
 児童生徒と教師との認識を比較してみると,教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小・中・高校ともに低い結果であった。
 以上のことから,教師の配慮は必ずしも効果的ではないことが示された。また,上級学校になるにつれて,教師に対する信頼感が希薄化していることが示された。これは,児童期から青年期までの時期が,成長発達上,大人との関係が疎遠になることと,さらに,教師の援助の在り方によるものが考えられる。今後,教師は自己開示などを行って,より一層の児童生徒との人間関係づくりをすることが望まれよう。
 学習意欲について
(ア)  項目別の結果と考察
項目13  私は,授業中,よく自分の考えを言う(発表する)ほうです。 項目13  子どもが,授業中,積極的に自分の考えを言えるに工夫をしています。
児童・生徒13 教師13
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,よく自分の考えを言う(発表する)ほうだと認識しているのは,小中学生で約2割,高校生で約5%となっており,授業中,よく自分の考えを言う(発表する)児童生徒は極めて少ないことを示している。
【教師の配慮】:
 授業中,子どもが積極的に自分の考えを言えるように工夫している教師は,小学校で約6割,中学校で約4割,高校で約5割であった。子どもが積極的に自分の考えを言えるように工夫している教師は,さほど多くない結果であった。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮の高さに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,高校でのズレが大きくなっている。
項目14  私は,きらいな科目でも,努力して勉強しています。 項目14  子どもが,不得意科目でも,あきらめずに勉強するように配慮をしています。
児童・生徒14 教師14
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 きらいな科目でも努力して勉強しているのは,小学生で3割台,中学生で3割弱,高校生で約1割となっており,上級学校になるにつれて,きらいな科目でも努力して勉強している児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 不得意科目でもあきらめずに勉強するように配慮している教師は,小学校で約5割,中学校で4割台,高校で5割台であった。不得意科目でもあきらめずに勉強するように配慮している教師は,さほど多くはない結果であった。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮の高さに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,高校でのズレが特に大きくなっている。
項目15  私は,授業でわからないところは,すすんで先生に質問します。 項目15  子どもが,授業でわからないところは進んで質問できるように配慮をしています。
児童・生徒15 教師15
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業で分からないところは進んで先生に質問しているのは,小中学生で2割弱,高校生で1割弱となっており,小中高校生ともに極めて少ない結果であった。
【教師の配慮】:
 授業で分からないところは進んで質問できるように配慮している教師は,小学校で約5割,中学校で4割台,高校で5割台であった。授業で分からないところは進んで質問できるように配慮している教師が,さほど多くはない結果であった。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮の高さに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,教師も児童生徒も授業で分からないところを解決しないままにしているようである。
項目16  私は,興味をもって勉強しています。 項目16  子どもが,勉強に興味・関心をもてるように工夫をしています。
児童・生徒16 教師16
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 もっと勉強してよい成績をとろうと頑張っているのは,小学生で約3割,中学校で2割弱,高校生で約1割となっており,小中高校生ともに極めて少ない結果であった。また,上級学校になるにつれて,もっと勉強してよい成績をとろうと頑張っている児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 成績が向上するように意欲を持たせている教師は,小中高校でともに6割台であった。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮の高さに比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低く,高校でのズレが特に大きくなっている。
項目17  私は,興味をもって勉強しています。 項目17  子どもが,勉強に興味・関心をもてるように工夫をしています。
児童・生徒17 教師17
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 授業中,いつも一生懸命勉強しているのは,小学生で4割弱,中学生で3割台,高校生で2割弱となっており,特に高校生は極めて少ない結果であった。
【教師の配慮】:
 集中して授業に取り組めるように工夫している教師は,小中高校でともに6割台であった。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮の高さに比べて,児童生徒の認識は低く,高校でのズレが特に大きい結果であった。
項目18  私は,勉強は大切だと思います。 項目18  子どもが,勉強の大切さを気付くように心がけています。
児童・生徒18 教師18
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 勉強が大切だと思っているのは,小学生で6割台,中学生で約5割,高校生で3割台となっており,また,上級学校になるにつれて,勉強が大切だと思っている児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 勉強の大切さが分かるように心がけている教師は,小中学校で約4割,高校で約5割であり,教師の配慮は乏しいようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 小中学校では教師の配慮に比べて児童生徒の認識が高く,高校では生徒の認識が低い結果であった。子ども自身,勉強の重要性を強く意識しているようである。
項目19  私は,勉強は大切だと思います。 項目19  子どもが,勉強の大切さを気付くように心がけています。
児童・生徒19 教師19
結果・考察
【児童生徒の認識】:
 勉強が大切だと思っているのは,小学生で6割台,中学生で約5割,高校生で3割台となっており,また,上級学校になるにつれて,勉強が大切だと思っている児童生徒は少なくなっている。
【教師の配慮】:
 勉強の大切さが分かるように心がけている教師は,小中学校で約4割,高校で約5割であり,教師の配慮は乏しいようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 小中学校では教師の配慮に比べて児童生徒の認識が高く,高校では生徒の認識が低い結果であった。子ども自身,勉強の重要性を強く意識しているようである。
(イ)  カテゴリー別の結果と考察 ・・・学習意欲について(項目13〜18)
 ここでは,項目13〜18の調査結果を合計して,学習意欲を一つのカテゴリーとして総合的に考察する。
 項目13〜18の調査結果を,グラフ化したものは次の通りである。
項目13〜18の調査結果
【児童生徒の認識】:
 学習に対して意欲的なのは,小学生で3割強,中学生で3割弱,高校生で1割台となっており,全体的に学習意欲は乏しく,また,上級学校になるにつれて学習に対する意欲は減退していることを示している。これは児童生徒の理解度に合わせた教科指導がなされていないことと,さらに,教科担当の教師との人間関係が希薄化していることによるものと考えられるが,この点については今後さらに検討を深めていくことが望まれよう。
【教師の配慮】:
 児童生徒の学習意欲の啓発に配慮している教師は,小中高校ともに5割台となっている。級友関係づくりあるいは教師・子ども関係づくりに比べて学習意欲の啓発は比較的少ない結果であった。これまでも学習意欲の啓発は積極的に行われてきたが,より一層の配慮や工夫が望まれているようである。
【児童生徒と教師との比較】:
 教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小中高ともに低い結果となっている。このことは,教師の配慮が効果的でないことを示していると思われる。
(ウ)  まとめと課題・・・学習意欲について
 学習意欲について,児童生徒自身の認識は次の通りである。学習意欲は小・中・高校生ともに著しく乏しいことが明らかになった。また,上級学校になるにつれて,学習意欲は減退しており,高校生の学習意欲の低さは顕著であることが示された。
 学習意欲向上の教師の配慮について,教師自身の認識は次の通りである。教師は,児童生徒の人間関係づくりの配慮に比べて,学習意欲向上の配慮はやや消極的である傾向が示された。なお,小・中・高校間ではほとんど差が認められないが,高校の教師の配慮がやや高いことが示された。
 児童生徒と教師との認識を比較してみると,教師の配慮に比べて,児童生徒の認識は小・中・高ともに低い結果であった。
 以上のことから,教師の配慮が必ずしも効果的ではないことが示された。また,上級学校になるにつれて,児童生徒の学習意欲が減退していることが明らかになった。この理由は,児童生徒の理解度にあった教科指導が行われていないことや,児童生徒の凝集性が低いこと,そして,教科担当の教師との人間関係が希薄化していることが考えられる。今後,児童生徒の実態にあった教材教具の精選と,授業における人間関係づくりを検討していくことが課題だと考える。
A  授業における人間関係と学習意欲の関係
 授業における学習意欲の低下が叫ばれている。学習意欲の向上を図るためには,児童生徒相互及び児童生徒と教師との人間関係が重要な要素となるのである。
 本研究は,授業における児童生徒相互の人間関係,教師と児童生徒の人間関係の実態を明らかにし,そして児童生徒の学習意欲の実態をとらえ,学校心理学の立場から検討するものである。ここでは,授業における人間関係と学習意欲との関係を明らかにすることを目的とした。
 小・中・高等学校の児童生徒,計3,334名の調査協力者のうち,抽出した小学校(422名)・中学校(426 名)・高校(396名)の児童生徒計1,244名を対象とした。
 分析方法は,得られた児童生徒の回答から,児童生徒相互の人間関係および教師と児童生徒の人間関係のよい群(上位25%)と悪い群(下位25%)におけるとそれぞれの学習意欲の高い群(平均得点3.5以上)と低い群(平均得点2.5以下)の割合から,それぞれの人間関係と学習意欲との関係を検討したものである。
 また,統計パッケージSPSSver7.5.1を用いて,児童生徒相互の人間関係および教師と児童生徒の人間関係と学習意欲の相関を検討した。
 児童生徒相互の人間関係と学習意欲の関係
児童生徒相互の人間関係と学習意欲
 児童生徒相互の人間関係(質問1〜6)と学習意欲(質問13〜18)の相関係数は0.35であり,1%水準で有意であった。そして,児童生徒相互の人間関係のよい群,悪い群と学習意欲の関係を表したのが図1である。
 児童生徒相互の人間関係がよい児童生徒において学習意欲が高い児童生徒の割合は41.8%となっており,人間関係が悪い児童生徒においては逆に学習意欲の低い児童生徒の割合が45.3%と高くなっている。
 教師・児童生徒の人間関係と学習意欲の関係
教師と児童生徒の人間関係と学習意欲
 教師と児童生徒の人間関係(質問7〜12)と学習意欲(質問13〜18)の相関係数は0.47であり,1%水準で有意であった。そして,教師と児童生徒の人間関係のよい群,悪い群と学習意欲の関係を表したのが図2である。
 教師との人間関係がよい児童生徒において学習意欲の高い児童生徒の割合は49.8%となっており,教師との人間関係が悪い児童生徒の中では逆に学習意欲の低い児童生徒の割合が48.9%と高くなっている。
 まとめと今後の課題
 児童生徒相互の人間関係が良好であると認識している児童生徒の学習意欲が高いことが明らかになった。このことは,授業における学習意欲を高めるには,児童生徒相互の人間関係を高めることが重要であることを示唆している。
 さらに,教師との人間関係が良好であると認識している児童生徒の学習意欲が高いことが明らかになった。これは,学習意欲を高めるためには,教師と児童生徒の人間関係も高める必要性を示唆している。
( )内はサポート数
資料1―@ 児童生徒の主な自由記述 『授業における「いいな」と思うサポート』
サポート 校 種 主 な 自 由 記 述 の 内 容
情緒的
(312)
31.4%
小学校
(73)
 ・親切にしてくれる。
 ・いつもにこにこしていて,明るく楽しい。
中学校
(101)
 ・冗談やおもしろい話をしたりして,楽しい雰囲気作りをしてくれる。
 ・生徒の意見を真剣(ていねい)に聞いてくれる。
高校
(138)
 ・生徒をわらわせたりして,授業の雰囲気を和ませてくれる。
 ・わからないとろを,わかりやすく親切に教えてくれる。
情報的
(243)
24.3%
小学校
(86)
 ・わからないところをくわしく教えてくれる。
 ・わかるまで,何度も繰り返して教えてくれる。
中学校
(87)
 ・わからないところを,わかるように教えてくれる。
 ・質問をすると,くわしく答えてくれる。
高校
(70)
 ・わからないところを質問すると,くわしく答えてくれる。
 ・興味があることやおもしろい話を織り交ぜながら授業をしてくれる。
評価的
(22)
2.2%
小学校
(12)
 ・わるいところをきっぱり言ってくれる。
 ・ノートに花丸をたくさんもらった。
中学校
(9)
 ・問題を間違えても,怒らないで励ましてくれる。
 ・発表した人や提出したノートにシールくれる。
高校
(1)
 ・間違った発表をした人をけなさない。
道具的
(241)
24.1%
小学校
(110)
 ・グループ学習をすること。(みんなで一緒の活動)
 ・授業の中で,いろいろな実験や作業をさせてくれる。
中学校
(69)
 ・ゲーム的な活動を取り入れた授業をしてくれる。
 ・グループ学習をしてくれる。
高校
(62)
 ・資料やプリント,マンガを使って勉強したこと。
 ・からないときは,グループで話し合って学習すること。
その他
(180)
18.0%
小学校(84)
中学校(25)
高 校(71)
 ・特にない。
 ・別に何とも思わない。
 ・思ったことがない。
資料1―A 児童生徒の主な自由記述 『授業における「いやだな」と思うサポート』
サポート 校 種 主 な 自 由 記 述 の 内 容
情緒的
(227)
24.4%
小学校
(52)
 ・大声ですぐに怒ること。
 ・誰に対しても公平に接してくれない。
中学校
(102)
 ・その日の気分やクラスによって態度を変える。
 ・生徒の意見を聞いてくれない。(気持ちがわからない)
高校
(73)
 ・公平でない。(ひいきをする,差別をする)
 ・機嫌が悪いときがある。(その日の気分で態度を変える)
情報的
(139)
14.9%
小学校
(29)
 ・わからないところをくわしく教えてくれる。
 ・わかるまで,何度も繰り返して教えてくれる。
中学校
(87)
 ・わからないところを,わかるように教えてくれる。
 ・質問をすると,くわしく答えてくれる。
高校
(70)
 ・わからないところを質問すると,くわしく答えてくれる。
 ・興味があることやおもしろい話を織り交ぜながら授業をしてくれる。
評価的
(22)
2.2%
小学校
(12)
 ・わるいところをきっぱり言ってくれる。
 ・ノートに花丸をたくさんもらった。
中学校
(9)
 ・問題を間違えても,怒らないで励ましてくれる。
 ・発表した人や提出したノートにシールくれる。
高校
(1)
 ・間違った発表をした人をけなさない。
道具的
(241)
24.1%
小学校
(110)
 ・グループ学習をすること。(みんなで一緒の活動)
・ 授業の中で,いろいろな実験や作業をさせてくれる。
中学校
(69)
 ・ゲーム的な活動を取り入れた授業をしてくれる。
 ・グループ学習をしてくれる。
高校
(62)
 ・資料やプリント,マンガを使って勉強したこと。
 ・わからないときは,グループで話し合って学習すること。
その他
(180)
18.0%
小学校(84)
中学校(25)
高 校(71)
 ・特にない。
 ・別に何とも思わない。
 ・思ったことがない。
 
( )内はサポート数
資料1―B 児童生徒の主な自由記述 『授業について思っていること』
サポート 校 種 主 な 自 由 記 述 の 内 容
情緒的
(331)
36.1%
小学校
(115)
 ・楽しい授業をしてほしい。
 ・先生は,明るくとても親切にしてくれる。
中学校
(123)
 ・誰にでも公平に接してほしい。(差別しないで)
 ・おもしろくない授業が多くて,いやになる。(もっと楽しく)
高校
(93)
 ・もっと明るく楽しい授業をしてほしい。
 ・授業がつまらない。
情報的
(79)
8.6%
小学校
(16)
 ・先生は,わかりやすくよく教えてくれる。
 ・授業と関係ない話をしないでほしい。
中学校
(55)
 ・もっとわかりやすく説明してほしい。
 ・将来役立つものだけ教えてほしい。
高校
(8)
 ・もっとわかりやすく説明してほしい。
 ・教科書の内容以外の,もっといろいろなことを教えてほしい。
評価的
(9)
1.0%
小学校
(3)
 ・うるさい人をそのままにして授業を進めないでほしい。
 ・授業中うるさいのに注意しない。
中学校
(5)
 ・真面目でない生徒を注意してほしい。
 ・テストの点数を比べないでほしい。
高校
(1)
 ・質問に答えられないときに,嫌みを言うのをやめてほしい。
道具的
(318)
34.1%
小学校
(121)
 ・他のクラスと交流がしたい。
 ・自由に活動する時間をつくってほしい。
中学校
(51)
 ・先生の話す時間が長い。
 ・宿題をたくさん出さないでほしい。
高校
(146)
 ・いつも同じ授業方法でけでなく,いろいろな授業方法で学習したい。
 ・生徒を無視した,一方的な授業はやめてほしい。
その他
(181)
19.7%
小学校(96)
中学校(25)
高 校(60)
 ・特にない。
 ・別にない。
 ・何とも思わない。
資料2―@ 教師の主な自由記述 『児童生徒相互の人間関係作りへの配慮』
サポート 校 種 主 な 自 由 記 述 の 内 容
情緒的
(43)
12.6%
小学校
(20)
 ・温かい雰囲気作りをする。
 ・お互いに認め合い学び合う雰囲気作りをする。
中学校
(6)
 ・自由に話し合える雰囲気作りをする。
 ・「友達がこう言っていたよ」と,よいことを伝える。
高校
(17)
 ・生徒同士で教え合えるような雰囲気作りをする。
 ・孤立する生徒が出ないように配慮する。
情報的
(26)
7.6%
小学校
(17)
 ・学習や話合いのルールの大切さを理解させる。
 ・わからないところを教えてあげる児童をつくる。
中学校
(5)
 ・生徒の提出物を全員に印刷し,認め合う活動を行う。
 ・話し合いを通して,生徒のいろいろな意見に気付かせる。
高校
(4)
 ・誰もが自分の考えを持っていることを知らせる。
 ・問題のわからないところを,聞くように話す。
評価的
(42)
12.4%
小学校
(28)
 ・友達の良いところを見つけたり認めたりさせる。
 ・間違えても笑わない。
中学校
(11)
 ・グループ活動で,教え合ったり助け合ったりできた生徒をほめる。
 ・相互評価などで,生徒の良い点を見つけさせた。
高校
(3)
 ・作業中の生徒同士の会話は,一緒に考えているのであれば注意しない。
 ・グループ活動の中での教え合い活動を評価してやる。
道具的
(203)
59.8%
小学校
(87)
 ・グループ活動。
 ・学習形態・座席の工夫。
中学校
(61)
 ・グループ学習や活動を多く取り入れる。
 ・生徒を先生役にして,互いに教え合うようにさせる。
高校
(55)
 ・ディベート形式の授業を行う。
 ・生徒に考えさせる時間を設定する。
その他
(26)
7.6%
小・中・高  ・特にない。
 ・この点は難しい。
 ・生徒同士が自然に作っていくものだ。
( )内はサポート数
資料2―A 教師の主な自由記述 『教師と児童生徒の人間関係作りへの配慮』
サポート 校 種 主 な 自 由 記 述 の 内 容
情緒的
(198)
55.9%
小学校
(77)
 ・児童の発表は,全て肯定的に受け止める。
 ・間違ってもいいという安心感を持たせる。
中学校
(55)
 ・机間指導の中で,言葉かけを多くする。
 ・授業中,どの生徒にも一回は声をかける。
高校
(66)
 ・生徒同士で教え合えるような雰囲気作りをする。生徒同士で教え合えるような雰囲気作りをする。
 ・生徒にできるだけ多くの声かけをする。
情報的
(13)
3.7%
小学校
(4)
 ・教師の失敗談・体験談を基に指導する。
 ・授業のルールや約束を決め指導する。
中学校
(6)
 ・生徒が興味を持っている話題を授業に取り入れる。
 ・生徒一人一人の情報をつかむ。
高校
(3)
 ・教師と生徒の立場の違いをわからせる。
 ・授業内容だけでなく,身近な話題を取り上げる。
評価的
(65)
18.4%
小学校
(31)
 ・間違えても責めないようにする。
 ・間違えても認め合う授業をする。
中学校
(24)
 ・机間指導を通して,生徒を認め,ほめるようにする。
 ・ノート(学習カード)にコメントをを書く。
高校
(10)
 ・プリントやノートにコメントを入れる。
 ・間違いを婉曲に注意する。
道具的
(66)
18.6%
小学校
(38)
 ・個別指導・机間指導を行う。
 ・スキンシップ,児童と一緒に活動する。
中学校
(17)
 ・生徒の考えを取り入れた授業を行う。
 ・生徒と共に作業を行う。(共に汗を流す)
高校
(11)
 ・机間指導を行う。
 ・質問の時間を設ける。
その他
(12)
3.4%
小・中・高  ・特にない。
 ・いろいろしている。
 ・あまり工夫していない。
資料2―B 教師の主な自由記述 『学習意欲を高めるための配慮』
サポート 校 種 主 な 自 由 記 述 の 内 容
情緒的
(12)
3.6%
小学校
(2)
 ・楽しさを味わわせる。
 ・成就感を味わわせる。
中学校
(6)
 ・身近な問題を取り入れ,雰囲気を和らげる。
 ・プレッシャーをかけないようにする。
高校
(4)
 ・生徒の表情や様子を見ながら授業をする。
 ・自分の体験を自分の言葉で話す。
情報的
(18)
5.4%
小学校
(2)
 ・基礎学力が身につく指導を行う。
 ・基本的な学習事項を教える。
中学校
(6)
 ・つまづいている生徒に,ヒントを与える。
 ・わからない生徒に,具体的に説明する。
高校
(10)
 ・例を挙げて具体的な話をする。
 ・生徒の身近なものを授業に取り入れる。
評価的
(42)
12.7%
小学校
(10)
 ・ノートに朱書きを入れる。
 ・シールなどを活用しながら認める。
中学校
(14)
 ・小さな目標を設定させ,「できた」という気持ちを味わわせる。
 ・自己評価をさせ,次の学習や発展・補充学習へとつなげる。
高校
(18)
 ・スモールステップを設定し,達成した生徒を評価する。
 ・ノートの点検やコメント。
道具的
(242)
72.9%
小学校
(132)
 ・活動計画,教材などの工夫。
 ・視聴覚機器の活用。
中学校
(60)
 ・導入時の工夫をする。(演示実験)
 ・ビデオなどの視聴覚機器を活用する。
高校
(50)
 ・学習プリントの活用。
 ・新聞やインターネットの活用。
その他
(18)
5.4%
小・中・高  ・特にない。
 ・試行錯誤
 ・あまり工夫していない。
(3)  まとめと今後の課題
@  授業における人間関係と学習意欲の実態について
 授業における児童生徒相互の人間関係は,児童生徒の認識から見ると,あまり深まっているとは言えないようである。一方,教師は児童生徒相互の人間関係づくりへの配慮が積極的であると自認している。なお,上級学校になるにつれて教師の配慮は消極的であることが示された。
 教師・児童生徒間の人間関係は,児童生徒の認識から見ると,上級学校になるにつれて疎遠であることが示された。一方,教師は児童生徒との人間関係づくりへの配慮が積極的であると自認している。
 学習意欲は,上級学校になるにつれて乏しくなるが,一方,教師は学習意欲向上の配慮が積極的であると考えているようである。
 以上のことから,授業においての児童生徒相互の人間関係,教師・児童生徒の人間関係は希薄であり,また学習意欲は低下していることが明らかになった。一方,教師は人間関係づくりや学習意欲の向上については積極的に配慮していると自認しており教師と児童生徒との意識のズレが明らかになった。今後,児童生徒の実態にあった教材教具の精選とともに,豊かな人間関係づくりをめざした授業展開の工夫が望まれよう。
A  授業における人間関係と学習意欲との関連について
 授業において,児童生徒相互の人間関係が良好であると認識している児童生徒は,学習意欲が高いことが明らかになった。
 さらに,教師・児童生徒の人間関係が深まっていると認識している児童生徒は,学習意欲が高いことが明らかになった。
 以上のことから,今後,教師は授業において学習意欲を高めるために,児童生徒相互及び教師・児童生徒間に豊かな人間関係を作る工夫と努力が望まれよう。
B  授業における「4つのサポート」の実態について
 児童生徒の自由記述を分析すると,児童生徒から好意を持たれる授業は,小学校では道具的サポート,中・高校では情緒的サポートである。一方,児童生徒から好意を持たれない授業は,児童生徒不在の形態や進め方をするような道具的サポートである。今後,教師の情緒面での積極的な関わりや具体的な援助の工夫が望まれよう。
 教師の自由記述を分析すると,児童生徒相互の人間関係づくりは,「グループ学習」等の形態を使った道具的サポートを実践している教師が小・中・高校ともに多いことが分かった。教師・児童生徒の人間関係づくりは,コミュニケーションを図り児童生徒理解を進めるというような情緒的サポートが最も多く,次いで道具的サポート,評価的サポートの順であった。学習意欲向上は,「学習プリント」等を活用した道具的サポートが最も多い。今後,道具的サポートとともに情緒的サポートも活用していくことが望まれる。以上のことから,授業において豊かな人間関係を作り,学習意欲を高めるために,今後,教師は情緒的サポート,情報的サポート,評価的サポート,道具的サポートの4つを,児童生徒の実態に応じてバランスよく実践することが望まれる。


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