研究の成果
   本研究では音楽科学習に関する実態を踏まえ,児童生徒が楽しみながら主体的に活動したり,自ら創意工夫を深めながら生き生きと表現したり,進んで参加し創造的な活動が可能な教材の精選等の手だてを講じ,授業研究を行った。研究主題に迫るための主な有効な手だては,以下の通りである。
  (1) 授業導入時の工夫
     同一単元・題材の導入時において,表現活動及び鑑賞活動相互の関連を図ることは,児童生徒の感性と創造性が互いに刺激され,相乗的に高まるのに有効であった。
     音楽づくりや器楽表現において,児童生徒に意欲付けをさせるために,教師が様々な楽器の特徴や具体的な奏法を示して,音そのものに興味をもたせたり,音の響きの違いを感じさせるなど,授業導入時の工夫を行っていくことは,感性や創造性を高めるためにはきわめて有効である。
     ゲスト・ティーチャーとの出会い(中学校)により,生の音楽にふれたり専門的な指導を受けることで,生徒は心を揺り動かされ感動する。それによって,生徒は感性が刺激され,表現活動や鑑賞活動において,より豊かな創造性が育成されると考えられる。
  (2) 活動の場の工夫
     児童生徒の意識を観察し,楽しみながら生き生きと活動できるように,友達関係を考慮しながらグループ構成をした。その結果,学習活動がより活発になり,学び合い高め合う「互学の場」となることにより,創造的な思考をうながすことが分かった。
     発想やよさを発表や中間発表で,児童生徒が互いに認めあったり学習カードなどで振り返ることで,互いに感性を刺激しあい新たな発想や考えが生まれると考えられる。
  (3) 題材・教材の精選
     児童生徒一人一人の感性を引き出すためには,興味・関心のもてるような指導計画を立て,目標にそった題材を設定し,目標を達成させるための教材を精選することが重要である。
     歌唱における創造性を育成するためには,親しみやすさや季節感,旋律の美しさなどの特徴を感じ取らせることができるような教材を精選することで,子供たちは歌詞の内容を十分理解し,情景をイメージしながら,速度,強弱などの表現要素を工夫していくことが分かった。
 
お わ り に
 児童生徒の感性と創造性を高めるには,興味・関心のもてる指導計画を立て教材を精選したり,教師が楽器の特徴や奏法を示したりして,必要な基礎・基本の知識や技能を確認することや,ゲスト・ティーチャーとの出会い等が重要であることが分かった。さらに,これまであまり実践されなかった同一単元・題材の中で,表現活動を豊かにするために鑑賞活動を取り入れたり,鑑賞活動において雰囲気や曲想のイメージを豊かに感じ取らせるために関連した表現活動を行うようにし,表現活動と鑑賞活動の関連を十分に図ることがきわめて有効であることが確認できた。
 今後も,児童生徒が楽しみながら主体的に課題に取り組み,創意工夫を深めながら表現したり活動できるような,感性と創造性を高める音楽科学習指導の在り方を究明していきたい。

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