【授業研究2】
  小学校第2学年
「やさいをそだてよう」における創造性を培う支援の在り方
(1) 授業研究のねらい
   本単元では,好きな野菜を栽培する活動を通して,野菜への親しみを持ち,収穫の喜びを味わいながら,植物が成長していく過程での気付きや成長の様子を表現することによって,創造性を育てられると考える。そこで,子ども一人一人の気付きやその時の思いや願いなどを自分なりに表現できるようにするための支援の在り方を研究する。
(2) 子どもの表現力を育てるための手立て
  本単元では,創造性を高めるために子どもが思いや願い,気付きをのびのびと表現する   ための支援を5つに分類し,実施する。
   子どもの学びが発展するための学習環境構成
     「なんだろう?」コーナーを設け,植物に関することを掲示することで,継続的に栽培活動への意欲が持てるようにする。また,野菜の実物や写真などを展示することにより, 具体的にとらえられるようにする。
   具体的な活動や体験から気付きを引き出すための場の設定と時間の確保
     同じ表現グループで活動したり, 振り返りの時間を設定したりすることにより, 互いのよさに気付き, 次の活動への広がりが持てるようにする。
   家庭との連携を図った学習活動づくりと展開
     収穫した野菜を使って料理の体験ができるよう, 家庭との協力を図る。
   一人一人の思いや願い,気付きを生かすための支援と適切な働きかけ
     栽培してている野菜への子どもの思いや願いをさらに育て,生かすために支援表を活用する。また,子ども一人一人に対する教師の思いや願いも大切にし,待つ支援を心がける。
(3) 求める子どもの姿
 
思いや願いを表現できる子どもの姿 評価の観点
・自分なりの表現方法で,楽しく活動している。
・自分の思いや願いが分かるように表現しようとしている。
関心・意欲・態度
・栽培での気付きやその時の思いや願いが伝わるよう工夫している。
・自分が栽培した野菜のことをまとめられる。
思考・表現
・友達の工夫しているところや自分の活動のよさに気付く。 気付き
(4) 授業の実践
  単元  やさいをそだてよう
  単元の目標
    いろいろな野菜を育てようとする意欲を持ち,種まきや植え付けをし,継続して世話ができるようにする。 (関心・意欲・態度)
    育てている野菜の成長や自分の思いや願いを,自分なりの方法で表現することができる。 (思考・表現)
    育てている野菜も自分たちと同じように成長していることや,変化していることに気付く。 (気付き)
  単元について
     子どもは,自分の好きな草花の種まきから,種取りまでの継続観察をし,育てることの楽しさを体験している。そこで,第2学年では,育てたい野菜(ピーマン,ミニトマト,ナス,キュウリ)を栽培することにした。栽培した野菜を調理することによって,さらに栽培活動への意欲を持ち,収穫の楽しみや喜びを味わえると考えた。そして,その栽培活動での気付きやその時の思いや願いを,友達に伝えられるように,表現活動に取り組ませたい。
  活動計画(15時間)
    活動計画
  本時の活動
    (ア) 目標 自分の思いや願い,気付きを友達に分かるように表現することができる。
    (イ) 目標
(場の設定への支援)
      友達の工夫や自分のよさに気付くことができる振り返りの場を設定する。(思いや願いへの支援)
      「はっきりカード」を活用し,発表する内容を分かるようにまとめ,表現しやすいようにする。
      一人一人の思いや願いを叶えるために,支援表を活用し支援計画を立てる。(環境への支援)
      表現活動の参考になる写真や実物,参考作品等を展示するコーナーを設ける。
      育てた野菜の写真等を掲示することにより,表現活動への意欲付けを図る。
      カセットデッキ,CDデッキには,操作手順等を表示し,替え歌用の曲を録音し たカセットを用意する。
    (ウ) 展開
展開
  教師の支援と子どもたちの活動
     毎日通る通学路で見つけたたからものを友達にも教えてあげたいという思いでどの子どもも活動に専念することができた。また,友達の活動のよさに気付き,発表する姿も見られた。2人の教師によるT・Tで支援したので,子どもの活動の様子を十分に見取ることができた。
 また,事前にたからものカードに目を通していたので子どもの思いや願いに応えることができた。以下に,1人の子どもと1グループ2人の子どもの活動の様子と教師の支援について述べる。


 物を作ることには興味を持ち,楽しく活動している。思うようにできないと投げ出してしまうことがあるので,助言する支援が必要である。 グループ
(6人)
 初めてやる表現であり,恥ずかしがる子どもがいるので,協力し合って表現するようにさせたい。
表現
方法

(アイアイ)

ピーマン 表現
方法
ダンス
ミニトマト  4人
ナス     2人


話を聞くときは,落ち着かない。
活動が始まる。水かけをしなかったことを書き始めた。
「曲に合わせてみたら。」
曲に合わせて歌ってみる。合わない ところがあり,書き直す。
伝えたいことは,ピーマンの白い花が咲いたことなので,花のことも書くように話す。
ピーマンの花を見に行く。2番にピーマンの花のことを書き始める。
曲に合わせて歌い出す。いつもより楽しく活動している。友達の歌まで歌い始める。
「曲に合っていたの。」
その場で歌い出した。短い言葉でまとめていた。
子どもたちの様子
一人一人の伝えたいことを入れてまとめるよう助言する。
どんな方法がいいか分からない。
「種まき,芽が出る,花が咲く,実にな るところと考えたら。」 ☆ それぞれの野菜になったつもりで,動きを考え始める。
「水をかけられたら,どうなる。」
体全体を動かして,芽が出ようとする動 作をする。芽が出た様子は,首や上体を起こして表現していた。出来たところまで何 回も練習していた。
ナスが枯れたことを伝えたい子がいるので,枯れた枝の実物を見せながら,動作化できるように支援する。
ダンスの中に,枯れたナスの動きも入れて,まとめていた。
子どもたちの様子



 友達にほめられ,うれしそうにはし ゃぐ。アイアイの曲で教師とかけあい で歌う。「気持ちよくできた。」と感想を話していた。
 「がんばってやっていた。」グループだ と発表されて,うれしそう。できたところまでを発表した。自分の動きを恥ずかしがらないで表現した。
(5) 授業の結果と考察
  子どもの学びが発展するための学習環境
     教室内に「なんだろう?」コーナーを設け, 植物に関する掲示や図書の展示を行った。日頃,見たことがない野菜の花に興味が持てたようだった。実際に栽培した野菜の花と比べ, 確かめていた子どももいた。また, 実物の野菜や写真などの展示により,具体的に形や色を捉えて表現することができた。
  具体的な活動や体験から気付きを引き出すための場の設定と時間の確保
     活動の終わりには,必ず振り返りの時間を設けた。友達から,認められた喜びが次時の活動への意欲につながった。細かく友達のよさを見つけ発表するようになり,友達の表現のよさを自分の表現に生かすことができるようになってきた。教師は,子どものよさを再認識させられた。
  家庭との連携を図った学習活動づくりと展開
     収穫した野菜を使って家庭で調理の体験をさせてもらうことにした。収穫した野菜は少なかったが,家庭の協力により,調理方法を共に考えてもらい,親子で料理したり,家族でわけあったりして,食べることができた。家庭でも,子どもが育てた野菜だということで,無駄なく食べられる調理方法を考えてくれた。その時の料理の写真や美味しそうに料理を頬張る子どもの写真などに,子どもの思いへの成就感が感じられた。
 また,栽培活動中に,クラスのピーマン作りの家庭から,「ピーマン切り」へのご招待があり,体験することができた。いろいろなことを子どもたちに体験させて欲しいと,懇談会などの折に話してきたことが,理解されて来たと考える。
  一人一人の思いや願い,気付きを生かすための支援と適切な働きかけ
     子どもの思いや願いを把握することによって,どんな支援をすればよいのか,支援の見通しを持ち,計画を立てることができた。子どもの気付きを,次の活動に広げたり,深めたりする気付きに発展させるには個にあった適切な支援が大切であると分かった。
(6) 授業研究の成果と課題
   生活科学習において子どもの創造性を培っていくには,以下のような総合的な取り組みが 有効な手だてであることを明らかにすることができた。
   子どもの学びが発展するための学習環境の整備をする。
   具体的な活動や体験から気付きを引き出すための場の設定と時間の確保を図ることは,子どもの思いや願いを育て生かすことにつながる。
   家庭との連携を図った学習活動づくりと展開を構成することにより,子どもたちの活動が広がり深められる。
   一人一人の思いや願い,気付きを生かすための支援と適切な働きかけを心がけることから活動への子どもの自信が深まる。
   今後の課題として,次のようなことがあげられる。
   子どもの多様な表現活動に対応するためにも,テイーム・テイーチングを取り入れ,学年を越えた学習活動での支援の在り方について研究する。
   人とのかかわりを重視していく上で,地域の高齢者や障害をもった子どもとの交流を考え,授業づくりを研究していく。

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