(3)  教科外体育
教科外体育における体力つくり実践例
 E校の例
(ア)  はじめに
 本校では,平成4年度から3か年茨城県教育委員会ならびに多賀地区教育研究会より体力つくり推進地区の指定を受け,「一人一人が進んで取り組む体力つくり」という研究主題のもとに学区の小中学校が一体となって,実践研究に取り組んだ。これをきっかけに,指定終了後も体力の向上をめざし,現在にいたるまで『ランニングタイム』を実施している。指定を受けた当初の生徒の実態は,スポーツテストの体力診断テスト・運動能力テストの結果から,柔軟性・持久走が劣っていることが分かった。また,アンケート調査より,家庭での運動の機会は極めて少なく,学校の教科体育と運動クラブ活動が唯一の運動であることも分かった。
 そこで,本校生徒の実態をふまえ,放課後の時間の活用として,クラブ活動の始まる前5分前に全校生徒がクラブごとに分かれ,一斉にグランドを走る『ランニングタイム』を設定した。本年度は開始してから6年目の取り組みにあたる。さらに,運動クラブ活動における体力の向上を確実なものにするために,生徒と指導者を対象にした『運動クラブ活動における体力つくりの指導』等も実施し,体力つくりへの取り組みのあり方を研修して理解を深めた。
(イ)  放課後のランニングタイム
 放課後の有効な時間の活用として,週3回,クラブ活動の始まる前の5分間を『ランニングタイム』と称して,全校生(本校はクラブ活動全入制)が一斉にグランドを走ることに取り組んでいる。持久カの劣る本校の実態から始まったことであるが,当初に比ペ生徒の走ることへの意欲も増し,クラブ活動へスムーズに移行するステップとしても大いに効果をあげていると思われる。その他,市の主催する市民駅伝や市民マラソンにクラブ単位にチームを組んで参加することを奨励するなどして,日ごろの『ランニングタイム』の成果を確かめる機会を与え,運動に積極的に取り組むよう刺激を与えている。さらに,本校クラブ対抗駅伝大会も開催し,さまざまな場面で体力の向上を確かめる場を設けている。
体力つくり風景 ランニングタイム
   a 実施内容
  •  週3回(火曜日,水曜日,金確日)実施する。
  •  放課後のクラブ活動開始前の5分間を活用して走る。
  •  3つのコース(200mトラック,300mトラック,校庭大周り)に分かれて走る。
  •  クラブごとにグループをつくり,集団や個人の能力に合わせて走る。
  •  準備運動を各キャプテンが当番制で行い,特性のある体操種目を実施する。
   b 教科外体育の年間指導計画
   c 施設図
   d 実践の成果と今後の課題
 実践の成果
 ランニングタイムを実施する以前は,どうしても学級での帰りの会終了の時間がまちまちで,活動開始の時間が遅れがちであったが,現在はどこのクラブも一斉に活動が開始でき,以前にも増して大変クラブ活動が意欲的になっている。顧問も全員がこの活動時間にグランドに出て生徒の様子を把握できるためコミュニケーションも図れ,さらに,他のクラブの行動や顧問との様子も観察でき,より学ぶものがあるようである。その結果として,本年度の運動クラブの活躍はめざましく,全運動クラブが県北大会出場を果たした。県総合体育大会では男子か第5位と健闘した。文化クラブの中でも,吹奏楽クラブ・合唱クラブはランニングによって得た体力と精神力で充実した演奏活動ができ,各種のコンクールですばらしい実績を残した。
  •  スポーツテストにおける全校生徒の体力と持久カの成績の向上
  •  各クラブの大会実績の向上
  •  病気や怪我による欠席者の減少
  •  持久走に対する抵抗の緩和
 今後の課題
 クラブごとの体力や運動能力の分析を通して,より具体的な体力向上の施策を考慮し,効果的な実施をしていきたい。開始してから6年目になるので,今後はランニングタイムがマンネリ化しないよう見直しを行って楽しく実践させ,走ることや運動することの生活化を図っていきたい。さらに,卒業後も運動やスポーツに親しむことのできる生徒の育成に努めていきたい。
  •  豊富な固定施設を使用したランニングの工夫
  •  広い敷地を利用したランニングの工夫
  •  クラブごとの体力や運動能力の分析とその効果的な実施
  •  走ることや運動することの生活化
  •  ランニングタイムの目標の明確化
(ウ)  運動部活動における体力つくりの指導
 全校生徒でランニングに取り組んでいる一方,さらに,体力・運動能力の向上をめざす効果的なクラブ活動の指導とその運営に努めた。本校の体力・運動能力の課題である持久力・柔軟性・筋力の向上をめざして,各運動クラブとも共通の練習メニューを取り入れ,体力・運動能力の向上を図った。特に恵まれた運動施設を十分に活用するよう留意している。また,体力つくりの施設の多様な活用法も模索し,お互いに利用法を工夫し合える雰囲気を作っている。
 a 生徒を対象にした指導
 各運動クラブに所属している生徒を中心に『体力つくり』の指導を行った。クラブ担当の顧問が講師となって指導したり,外部から指導者と選手を招き,生徒と顧問の両者がともに同じ立場で実技講習を受ける機会を設けるなどして,『体力つくり』についての知識・技能を身に付けさせる努力をしてきた。
@  指導内容
 <運動クラブ活動の代表者>
 各運動クラブのキャプテン・副キャプテンを集め『体力つくり』の学習会を行った。複雑な指導はさけ,「もっとよい選手,もっと強い選手になるにはどうしたらよいか」などに重点をおいて指導した。

 

 

 
 体力トレーニングを実施していく場合の手順。
 体力とは何か。スポーツとは何か。
 行動体力のトレーニング法。
 体力トレーニング計画の作り方。
  •  競技開始段階から完成段階までの体力トレーニング計画。
  •  発育過程の各段階における数年間の体力トレーニング計画。
  •  1年間または1シーズンの体力トレーニング計画。
  •  1週間・1日・1回の体力トレーニング計画。
  •  個人差に即した体力トレーニング計画。
 体力測定評価の行い方。
 <各クラブヘの指導>
 各運動クラブの部員を集めて指導する機会は特別にもたなかったので,学習会に参加したキャプテンから内容を伝えてもらった。指導内容が適切に伝わるよう顧問に補足説明をしてもらい,『体力つくり』に対する意欲や知識の浸透を図った。
A  指導の成果
 各運動クラブとも,さらに活動に熱が入るようになった。準備運動に柔軟体操を取り入れて運動し,けがの防止などに一役買っている。また,『体力トレーニングを実施していく場合の手順』・『体力トレーニング計画の作り方』などを正しく学んだため,いっそう体力が身についたように思われる。また,従来は練習計画を顧問に立ててもらっていたクラブがほとんどであったが,学習会後,生徒が練習計画に参画するクラブも少しずつ見られるようになってきた。
<活動計画表>
一日・一週間の体力つくりのプラン


<活動計画表>
体力・運動能力つくりやシェイプアップ
のための運動計画の作り方
   b 指導者を対象にした指導
 各運動クラブの顧問を対象にした『体力つくり』の研修会を設け,「体力についての考え方」「体力つくりへの取り組みのあり方」「ランニングタイムの必要性」「各運動クラブの特性にあった効果的な体操種目」などについて,職員の共通理解を深めた。
@  指導内容
 校内研修会の他に,フィットネスアドバイザー派遣事業研修会に積極的に参加するなどして,多方面から研修を行った。

 

 

 
 スポーツと学力を両立させる,スポーツライフの組み立て方。
 強い体力とは何か。
 強い精神力とは何か。
 バスケットポール・バレーボール・ソフトテニス等の基礎的,戦術的実技指導。
 怪我の予防と応急処置の実技。
 体力トレーニング計画のつくり方。
 体力測定評価の行い方。
A  指導の成果
 運動クラブを顧問している職員の,スポーツに対する意識や専門知識が,さまざまな研修会を通して向上した。また,それに伴った生徒の体力や技術的,戦術的向上による,大会実績の向上がみられた。さらに,クラブの生徒の意識も顧問の変容とともに前向きな取り組みになってきた。


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