D校の例
(ア)  はじめに
 本校の体操の取り組みは,各単元の特性と体力からみた特性を分析し,体力つくりの目標を明らかにして,より学習の効果が上がるための体力つくりや,その単元で高められない体力を高めるためのウォーミングアップメニューを考え,実践し,体力の高め方とその効果について研究に取り組んだ。
(イ)  バレーボールとの組み合わせの体操授業
 a 単元計画
中学校 第2学年○・○組 体育に関する知識学習指導案
指導者 ○○ ○○
  1.  単元名  スポーツの行い方(1)
  2.  運動の特性
    (1)  一般的特性
     いろいろな条件設定のもとに工夫された運動を通して,必要な動きを身につけて,健康を維持増進し,体力の向上をはかることができる。
     体力つくり,準備運動,整理運動,補強運動など,一定の目的をもって自己の能力に応じたプログラムを自由に作成し活用できる。
     施設,用具,人数,時間,あるいは技能,体力などの個人差を考慮しながら,行い方を工夫することができる。
    (2)  生徒からみた特性
     他人との力に関係なく,能力に応じて行えるため,充実感や満足感を味わうことができる。
     目的に応じた動きを自分たちで考えたり,工夫したりして実践できる楽しさがある。
     体が痛くなったり,疲れたり,息苦しくなったりするなどの肉体的苦痛が伴う。
  3.  生徒の実態(2学年○・○組 女子  28名)
     本校の2年生は,1学年で体操の意義について学習をしている。体力つくりについては,各単元ごとに,準備運動や整理運動の中で,ストレッチ体操や持久走を行うくらいである。また,部活動で,補強運動やその他のトレーニング体操を行っているところがほとんどであるが,一斉に行っているので,一人一人に合った運動メニューとはいえない。
     そこで,本単元では,自己の体力に関心をもたせ,体力を高めるためには,どのような運動をどのようにして行えばよいのかを理解させ,意欲的に体力つくりに取り組むことができる態度を育てていきたい。
  4.  教師の授業への意図
     単元の学習では,単元の特性に即しながら,バレーボールを通した体力つくりの意義を理解させ,バレーボールの学習で高められる体力は何か,高めなくてはならない体力は何かを検討する。更に,チームとしてバレーボールの技術が上手になるための体力つくりウォーミングアップメニューを作成し,チームとして体力つくりに意欲的に取り組ませる。また,部活動や家庭でも自己にあった体力つくりを行い,体力向上と技術の向上との関係を理解させ,体力の意義や必要性について深めていきたい。
  5.  学習のねらい
    (1)  自己の体力やグループの目標に応じた課題を設定して,課題達成のために,教え合ったり助け合ったりして学習ができる。 (関心・意欲・態度)
    (2)  自分の能力にあった課題をもち,学習の仕方を工夫できる。 (思考・判断)
    (3)  各種の動きを,ねらいをもって適切に行い,体力の向上を図ることができる。 (技 能)
    (4)  運動の特性を理解し,各種の動きの行い方や練習の進め方がわかる。 (知識・理解)
  1. 体操学習の道筋と時間配分
体操学習の道筋と時間配分1
体操学習の道筋と時間配分2


◎ 評価目標
関心・意欲・態度 思 考・判 断 技  能 知 識・理 解
@  自己の体力に関心をもち,課題達成に向けて意欲的に取り組でいる。
A  協力し,励まし合いながら学習を進めることがきる。
B  チームや自己の体力に関心をもち,運動メニューを作成することができる。
C  資料を活用し工夫して運動メニューを作成することができる。
D  ねらいに応じた体操を正確に行うことができる。
E  グループや自己の課題とする体力を向上させことができる。
F  自己の体力に応じたメニューの作成の仕方が理解できる。
G  グループの目標にそった運動作成の仕方が理解できる。
   
 体育に関する知識学習指導案
体育に関する知識学習指導案
   
  授業の分析と考察
 チームとして取り組む体力つくり計画は,回数,強度,速さ,運動の順番を考えて,作成できたものは55%であった。意欲的に取り組めたものは,30%で,普通に取り組めたものがほとんどであった。学年の技術目標である「パスラリーが続けられるようになる。」ということや,個人の技術目標「サーブが入るようになる。」「レシーブが上手になる。」「アタックが打てるようになる。」などができるようになったときに,それぞれの技術に必要な体力が,バレーボールの学習を通して体力が高まったことを理解できている者は少ない。
 ウォーミングアップメニューの,柔軟性を高める運動は,準備運動や補強運動,整理運動で行っているので,正しく行うことができるが,集中力が必要な瞬発的な運動や素早く動く運動については,正確性に欠け,十分な効果を高めることができなかった。それは,チームとして立てた目標を維持できないことや,その成果がすぐに確認する事ができないからではないかと思われる。
 バレーボールの学習を意識しながら,自己の体力つくりは,部活動や家庭できる1週間の運動メニューを作成実践し,それを記録し,反省できた生徒は50%であった。メニューがハードだったために,疲れが残った生徒もいる。また,部活動だけではなく,なかなか予定通りに進めることができないことがあったが,家で,少しずつ行うのも効果があることを感じた生徒もいる。少しずつであるが,自己の体力に興味・関心をもち,次からの体力つくりに関心をもって取り組もうとする態度が育ってきている。
<バレーボールと体力の特性及びチームの体力つくりウォーミングアップメニュー例>

バレーボール学習カード1

バレーボール学習カード2


1週間の体力つくりメニュー例

1週間の体力つくり計画


<バレーボール・体力つくりの自己評価カード>

バレーボール・体力つくりの自己評価カード

<バレーボール・体力つくりの観点別自己評価>

バレーボール・体力つくりの観点別自己評価
(ウ)  器械運動との組み合わせの体操授業
 a 単元計画
中学校 第2学年○・○組  体育に関する知識学習計画案
指導者 ○○ ○○
  1.  単元名  スポーツの行い方(2)
  2.  運動の特性
    (1)  一般的特性
     いろいろな条件設定のもとに工夫された運動を通して,必要な動きを身につけて,健康を維持増進し,体力の向上をはかることができる。
     体力づくり,準備運動,整理運動,補強運動など,一定の目的をもって自己の能力に応じたログラムを自由に作成し活用できる。
     施設,用具,人数,時間,あるいは技能,体力などの個人差を考慮しがら,行いかたを工夫する事ができる。
    (2)  生徒からみた特性
     他人との力に関係なく,能力に応じて行えるため,充実感や満足感を味わうことができる。
     目的に応じた動きを自分たちで考えたり,工夫したりして実践できる楽しさがる。
     体が痛くなったり,疲れたり,息苦しくなったりするなどの肉体的苦痛が伴う。
  3.  生徒の実態(2学年○・○組 女子  28名 )
     本校の2年生は,1学年で体操の意義について学習をしている。体力つくりについては,各単元ごとに,準備運動や整理運動の中で,ストレッチ体操や持久走を行うくらいである。また,部活動で,補強運動やその他のトレーニング体操を継続して行っているところが殆どであるが,一斉に行っているので,一人一人に合った運動メニューとはいえない。
     そこで,本単元では,自己の体力に関心をもたせ,体力を高めるためには,どのような運動をどのようにして行えばよいのかを理解させ,意欲的に体力つくりに取り組むことができる態度を育てていきたい。
  4.  教師の授業への意図
     単元の学習では,単元の特性に即しながら,器械運動を通してできる体力つくりの意義を理解させたい。そこで,器械運動の技術が上手になるための体力つくりウォーミングアップメニューを考え,ゲーム化・種目選択制を取り入れ,体力や能力に関係なく,誰にでも,気軽に,楽しく意欲的に行えるようする。
     また,部活動や家庭でも,自己にあった体力つくりを積極的に取り入れて,実践できるようにきるようにさせたい。
  5.  学習のねらい
    (1)  自分の体力や目標に応じた課題を設定して,課題達成のために教え合ったり,助け合ったりして学習ができる。 (関心・意欲・態度)
    (2)  自己の能力にあった課題をもち,学習の仕方を工夫できる。 (思考・判断)
    (3)  各種の動きを,ねらいをもって適切に行い,体力の向上を図ることができる。 (技 能)
    (4)  運動の特性を理解し,各種の動きの行い方や練習の進め方がわかる。 (知識・理解)
  6.  体操学習の道筋と時間配分
    体操学習の道筋と時間配分1
    体操学習の道筋と時間配分2


    ◎ 評価目標
    関心・意欲・態度 思 考・判 断 技  能 知 識・理 解
    @  自己の体力に関心をもち,課題達成に向けて意欲的に取り組でいる。
    A  協力し,励まし合いながら学習を進めることきる。
    B  自己の体力にた関心をもち,運動メニューを作成することができる。
    C  資料を活用し工夫して運動メニューを作成することができる。
    D  ねらいに応じた体操を正確に行うことができる。
    E  グループや自己の課題とする体力を向上させことができる。
    F  自分の体力に応じたメニュー作成の仕方が理解できる。
    G  グループの目標にそった運動の作成の仕方が理解できる。
   
 体育に関する知識学習指導案
体育に関する知識学習指導案
 授業の分析と考察
 オリエンテーションで,自己の体力を確認し,単元の体力の特性を理解することや,技術が上手になるために,どの体力を高めるとよいか,また,どんな運動を行えばよいのかを知り,実践していく中で,体力の意義やその効果について理解できるようになってきた。
 単元の学習では,技術の効果を上げるには,体力の向上をねらわなくては望めない。体力とは何かを理解すると同時に「この体力が高まれば,この技ができるようになる。」という必要性が理解できれば,体力つくりの興味・関心が高まり,実践力がついてきた。
 スポーツや器械運動を不得意としている生徒が,体力つくりの目標を立てたり,実践したりすることは,難があるが,ゲームを取り入れて行ったり,運動種目の選択を入れたり,負荷を自分で決定することによって,友達と競い合いながら,楽しく体力つくりに取り組むことができるようになった。
 学習カードに,体力の要素を調べ,ウォーミングアップメニューを作成し,毎時間の体力つくりを自己評価をする。また,学習の終わりに,単元への取り組みや体力つくりへの取り組み,そして,その効果について反省をする。以上のことを実践していくと,体力つくりへの興味・関心が高められた。
  <体操の学習に対するアンケート>
Q1  器械運動が上手になるためには,どのような体力・運動能力つくりがあるか知っていますか。

Q1回答 学習前

Q1回答 学習後
Q2  器械運動で,どのような体力・運動能力が向上しましたか。

Q2回答 学習後
Q3  器械運動の授業があった期間中,体力・運動能力つくりやシェイプアップの運動を,時間を見つけて,計画的に行っていましたか。その運動はどこで行いましたか。

Q3回答 学習中

Q3回答 どこで
<ウォーミングアップ後の脈拍数測定結果>

ウォーミングアップ後の脈拍数測定結果1
ウォーミングアップ後の脈拍数測定結果2
 アンケートの調査結果から,Q1は,学習後に,それぞれの体力要素の理解が深まっていることが分かる。それは,資料で調べたり話し合いをしたりしながら立てた体力つくりメニューを,繰り返し行ったことが,理解につながっていったのではないかと思う。
 Q2は,器械運動を学習することで高められる体力や,不足しがちな体力の高まりがみられている。学習のはじめに,器械運動の体力の特性やその効果について理解したことが,学習を通して更に深まったのではないかと思われる。
 Q3では,学習期間中,意識をして部活動や家庭で,または,部活動と家庭で行った者は,約77%であった。授業で器械運動が上手になるためのウォーミングアップを行っていたが,生徒が意識をして行っていた者は,少なかった。
 運動量については,運動直後の脈拍数を測定することによって確かめた。その結果,生徒一人一人が,脈拍数と運動量の関係について理解できるようになってきた。
(エ)  まとめ
 本校の体操の取り組みは,学習の効果が上がるための体力つくりや,その単元で高められない体力を高めるための体力つくりを実践した。
 単元のはじめの段階で,自己の体力について確かめる。次に,単元で高められる体力と,高めなくてはならない体力を理解する。そして,単元の技術が上手になるための体力つくりメニューを立てウォーミングアップとして実践した。また,単元を意識しながら,部活動や家庭でできる体力つくり計画の実践に試みた。その結果,上手になりたいという意識や目標が高いと,積極的に体力つくりに取り組むことができるようになってくる。また,繰り返し行うことで,この運動で,どのような体力が高まってくるのかが理解でき,運動を少しずつ工夫していこうという態度がみられるようになる。そして,家庭でも,手軽にできる体操があることが分かり,実践する生徒もみられるようになった。
 このようなことから,体操の学習を進め深めていくためには,知識を理解させるだけではなく,計画的に,いろいろな体力つくりの場を設け,継続して行っていくことが大切である。


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