は  じ  め  に

 近年,都市化や生活の利便化の急速な進展など子供を取り巻く生活環境の変化が児童生徒の運動不足をもたらし,その結果,健康を支える基礎である体力や運動能力が低下していることが指摘されています。
 申すまでもなく,体力や運動能力に支えられた健康は,思考力,判断力,表現力や豊かな人間性と共に,これからの時代を生きていく子供たちの中に育まねばならない「生きる力」の源泉であります。従って,今学校体育に求められているのは,児童生徒一人一人の個性や資質に応じた指導を充実し,生涯にわたって運動やスポーツに親しむ態度を育成すると共に,健康で明るく豊かな生活を営むために,柔軟性や持久力等の健康を支える基盤である体力の向上を目指す指導をいっそう充実することであります。
 第15期中央教育審議会の答申を受けて審議を進めていた保健体育審議会が,昨年9月,「生涯にわたる心身の健康の保持増進のための今後の健康に関する教育及びスポーツ振興の在り方について」答申をしました。
 答申は,『スポーツとは人間の体を動かすいう本源的な欲求にこたえるとともに,爽快さ,達成感,他者との連帯感等の精神的充足や楽しさ,喜びを与え,また,健康の保持増進,体力の向上のみならず,とりわけ青少年にとっては,スポーツが人間形成に多大な影響を与えるなど,心身の両面にわたる健全な発達に資する』ものであり,『小・中・高等学枚の形成期は,多様なスポーツを体験し,生涯にわたってスポーツに親しんでいくスポーツ習慣を形成し,その定着を図る時代である』と述べています。そして,指導にあたっては,『全員一斉かつ平等に』から『それぞれの個性や能力に応じた方法,内容,仕組みを』という考え方への転換を提言しています。
 このことを体繰領域の授業について考えてみますと,生徒一人一人が,自分の体力を知り,自分の体力の劣っているところ,さらに伸びそうなところを確認して,児童生徒自ら目的に向かって体力づくりができるような授業にするという事であります。
 そこで,本センターでは,平成8年度から平成9年度の2か年にわたり,「主体的に体力の向上に取り組む体育学習の指導」を研究主題として,中学校の保健体育科において,特に体力づくりに重点をおいた体操領域における体育指導の在り方を究明すべく,研究を進め,この度,研究の成果を刊行する運びとなりました。本研究報告書は,実態調査に基づいた理論研究と実践による授業研究をまとめたものでありますので,各学校での学習指導の改善・充実に活用していただけるものと確信しております。
 最後に,本研究を進めるにあたり,ご指導を賜りました講師の先生や,研究にご協力いただきました関係中学校及び研究協力員の先生方に,心から感謝の意を表します。
平成10年3月
茨城県教育研修センター所長
増田 一也


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