(ア) |
創造性育成の必要性(表1)
創造性を,「子供が自らの課題を解決するにあたり主体性をもって,子供自身にとって,新しい価値を創り出すことであり,創り出そうとする能力・態度のことである。」として考えると,「自己実現のため」と回答する教師が多い。新しい学力観による考え方が浸透し,子供自身が自ら考え解決していく中で新しい発見をしていくことに,教師も価値を見い出していると考えられる。「生活向上のため」と回答した教師の割合が他教科より多いのは,本教科の目標や特性を考えて回答したためと考えられる。また,教師の創造性育成の関心の高さがうかがえる。
表1
子供の創造性を育てる必要性をどのようなところで感じますか。 |
小 |
中 |
全体 |
ア 生活の向上のために必要 |
23.3 |
31.7 |
27.1 |
イ 社会的な問題解決のために必要 |
20.2 |
5.0 |
12.5 |
ウ 自己実現のために必要 |
41.4 |
47.5 |
44.4 |
エ 社会の変化に対応するために必要 |
15.1 |
15.8 |
15.5 |
オ 必要性を感じない |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
カ その他(感性を育てるため) |
0.0 |
1.0 |
0.5 |
|
(イ) |
図 創造的な授業の実施率 |
表2 子供が創造性を発揮していると感じるとき
子供が創造性を発揮しながら学習しているとどんなときに感じますか。 (二つ回答) |
小 |
中 |
全体 |
ア 子供が自分から課題を立てた |
25.3 |
23.7 |
24.5 |
イ 教師の発問に予想外の意見が出た |
16.2 |
7.9 |
12.1 |
ウ 発想豊かな意見がでた |
44.5 |
22.8 |
33.6 |
エ その子なりの工夫で作品作りをしている |
66.5 |
77.1 |
72.8 |
オ 友達同士で相互に学び合っている |
12.5 |
12.9 |
12.5 |
カ 授業を振り返っての自己評価から |
1.0 |
14.0 |
7.5 |
キ 子供が自分自身の力で思考している |
34.4 |
39.6 |
37.0 |
|
創造的な授業を意図的に行ったことのある教師の割合は全体で68.0%をしめる。中学校では,76.2%の実施率で,59.6%の小学校より高い結果となっている。技術・家庭科担当の教師は,各領域・題材の学習において意識して創造する能力が高められるような学習活動を行っていることがうかがえる。また,どんなときに児童生徒の創造性が発揮されると感じるかについては,表2の結果が得られた。「その子なりの工夫で作品作りをしている」「発想豊かな意見が出た」等,児童生徒が主体的に個々の思いを実現しようとしている姿に創造性が発揮されたと感じている。 |
(ウ) |
創造性育成と問題解決的学習(表3,4,5)
創造性を育てるための学習指導法としてほとんどの教師が問題解決的学習は有効であることを認めている。理由として「子供が課題意識をもって主体的に学習ができる」「問題解決をする過程でいろいろな発見をし創造性を伸ばせる」「論理的な解決は創造性につながる」等の理由をあげている。特に中学校では,問題解決的学習の有効性を高く評価している。一方で有効性を感じない理由としては「基礎力としての技術や体験がないと問題解決的学習は無理である」としている。しかし,技能・技術にかかわる基礎基本の習得の際にも創造性は発揮されると考えられる。
実際の学習過程では表4の結果のように,生活の中から問題を発見し,解決のための見通しを立てる段階と生活に発展させていく段階の指導に難しさを感じている。特にア〜ウの問題発見から計画立案について65.5%見られる。ア〜ウの段階がその後の児童生徒の問題解決の成否や主体的・創造的活動を左右する大切な段階であることを,教師は日々の指導で実感しているためと推察される。
表3 創造性育成における問題解決的学習の有効性について
家庭科及び技術・家庭科において,問題解決的学習は創造性を育てるのに有効であると考えますか。 |
小 |
中 |
全体 |
ア 有効であると考える。 |
92.9 |
99.0 |
96.0 |
イ 有効であるとは考えない。 |
7.1 |
1.0 |
4.0 |
表4 問題解決的学習で難しいと思われる段階
問題解決的学習の流れの中で難しいと思われるのはどの段階ですか。 |
小 |
中 |
全体 |
ア 生活の中から問題を発見する段階 |
19.2 |
19.8 |
19.5 |
イ 問題から自分なりの課題を作る段階 |
20.2 |
30.7 |
25.5 |
ウ 課題解決のための見通しを立てる段階 |
21.2 |
19.8 |
20.5 |
エ 課題を追究し解決している段階 |
11.1 |
5.9 |
8.5 |
オ 学習のまとめをし生活に生かす段階 |
28.3 |
23.8 |
26.0 |
表5 児童生徒の創造性を高める学習方法
個性や創造性(自分らしさ)を発揮できるにはどんな学習方法がよいですか。(二つ回答) |
選 択 肢 |
教師 |
児童 |
生徒 |
選 択 肢 |
教師 |
児童 |
生徒 |
ア 本や資料で調べ学習 |
34.4 |
38.3 |
30.8 |
キ 実験・実習 |
45.5 |
40.2 |
50.5 |
イ 話し合いによる学習 |
14.5 |
25.0 |
18.2 |
ク 自作の教材・教具 (上級生の見本含む) |
23.0 |
23.3 |
12.1 |
ウ グループ学習 |
18.0 |
31.3 |
33.5 |
エ コース別学習 |
34.5 |
6.3 |
7.6 |
ケ 既成の教材・教具 |
0.5 |
ー |
ー |
オ VTRの活用 |
6.1 |
12.5 |
18.1 |
コ 発表会 |
11.0 |
5.9 |
5.5 |
カ コンピュータの活用 |
12.0 |
17.2 |
23.2 |
サ その他 |
0.5 |
ー |
0.5 |
児童生徒の創造性を高める学習方法の結果をみると,教師と児童生徒のとらえ方に違いがみられる。調べ学習や実験・実習についてはどちらも高い割合だが,グループ学習や視聴覚教材の活用を児童生徒が希望しているにもかかわらず教師の意識は薄い。逆に教師がコース別学習をよいとしているが,児童生徒に十分活用されていない。同様のことは教師の自作の教材・教具につい ても言える。もっと児童生徒の実態をとらえ,教師の支援が生かされるような学習を展開したい。 |