ア |
自力解決における児童の反応と考察
自力解決の場面において,ほとんどの児童は,見通しをもち自分なりの面積の求め方を考え出すことができた。解決の順序を決定する際に自分なりの根拠を明確にしたことが,見通しをもった自力解決につながったと思われる。また,別の考えではできないだろうかと意欲的に取り組む姿が多く見られた。つまずきがちな児童も数人いたが,ワークシート上に透明な方眼シートを重ねたり,ます目入りのワークシートを利用したりすることで,自力で考えを進めることができた。ヒントカードは5種類ほど用意してあったが,利用した児童は数人であり,その多くは二つ目や三つ目の求め方を考える際に利用していたようである。
次に,児童の思考の面に目を向けてみると,「前の時間と同じ考え方でできないかな。」と考える児童と「前の時間に考えた形になおすことはできないかな。」と考える児童との大きく二つのタイプがあった。このように考え方に違いはあったが,既習の内容を生かそうという態度はよく表れていた。しかし,平行四辺形の面積を求めるに当たり「前の時間にやった台形の面積の求め方を使えないかな。」と考えた児童は,解決の仕方が思い付かずに,長方形への等積変形で面積を求めようと考えを変えていった。台形を最初に選んだ児童への支援という点で,もう少し工夫が必要であったと反省している。
資料2 学習のてびき(順序決定・理由)
|
イ |
小集団での話合いにおける児童の反応と考察
小集団にすることにより,全体の場よりも自由に話ができ,進んで質問や意見のやりとりができた。抽出児童Cは,授業中ほとんど発言することはないが,本時においては進んで話合いに取り組めた。これは,自分なりの考えがもてたことと小集団のために自分の思いを表現しやすかったことによるのではないかと思われる。
意見のやりとりでは,「たてに引いた線はどんな線ですか。」と質問され,直観的に引いていた高さの線を「自分は垂直な線を引きたかったんだ。」と振り返ってみることができた児童もいた。また,「やり方は違うけど,面積が同じ長方形をつくったということでは同じ考えだ。」など統合的に見ることのできた児童もいた。なお,自力解決時に長さを使った部分には赤い線を引かせておいたことから,話合いの中で,「BCの長さとAから垂直に引いた線の長さをかければ平行四辺形の面積が出る。」といったような面積の計算の仕方に気付いたグループや練習問題をやっていく中で「いちいち形をなおさなくてもできそうだぞ。」と計算の仕方に気付いたグループが出るなど,児童は自分たちなりに一般化を図ることができたと考える。しかし,台形については,自力で一般化を図ることは難しく,かなりT1,T2の支援が必要であった。
小集団での比較検討の場面を振り返ってみて,だれもが自分なりの考えをもち,自分の考えが前面に出た話合い活動ができたことで,自分の考えと照らし合わせながら他の考えのよさにも目を向けることができたように思われる。なお,多様な考えを基に練り上げていく場面では,TTで支援に当たったが,教師が他のグループの支援をしている時でも深まりのある話合いが進められるように,話合い用のヒントカードが必要であったと思われる。
資料3 ワークシート(三角形)
|
ウ |
抽出児の変容
抽出児Aは,(カ)と(サ)の二つの考えで解決したことで考える楽しさを味わうことができたと思われる。なお,最終的には,(サ)の考えで取り組み,前時に使った方法で等積変形をしていた。
抽出児Bは,前時に取り組んだ図形である「平行四辺形」にしたいという思いをもち,変形しようとしていた。前時に学習した図形に帰着させようとする態度が表れていたと思われる。また,操作的活動を通して,合同な三角形を二つつなげると平行四辺形になることが確認できた。
抽出児Cは,前時に三角形の求積方法を考える際に使った「たての線」のイメージを生かして(キ)の考えでスムーズに長方形に変形することができた。前時で,長方形に等積変形した際に用いたアイデアを利用しようとしていたと思われる。 |
エ |
算数科の学習に関するアンケートの分析と考察
算数の学習について5段階で回答させたところ,右のような結果となった。児童が,自分なりの考えで解決を図り,更には自分の考えを深めたり生かしたりしていこうという意識で学習に取り組むことができるようになってきたと思われる。
資料4 アンケートの結果
(数値は,5段階で評価したものの平均値) |
(事前) |
平成9年 |
9月24日実施 |
5年4組 31人 |
(事後) |
平成9年 |
10月17日実施 |
5年4組 31人 |
|
項 目 |
事 前 |
事 後 |
見通しをもつことができた。 |
3.3 |
4.0 |
自分なりの考えで解くことができた。 |
3.3 |
4.2 |
考えをよりよいものにしていこうと努力した。 |
3.0 |
3.7 |
学習したことを次の学習に生かそうとした。 |
3.6 |
4.2 |
数,量や図形には,喜びや楽しさがあると感じる。 |
3.5 |
4.0 |
|
|
|