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研究主題にかかわる意識・実態調査

 研究の趣旨
 研究主題にかかわる意識・実態調査を本県の小学校,中学校及び高等学校の算数・数学科担当教員と児童生徒を対象に行い,算数・数学科学習指導及び学習状況の実態を把握するとともに,算数・数学科学習指導の諸問題を明らかにし,授業改善の方向を探る。
 実施時期,調査形式及び方法
・ 実施時期 平成8年10月1日から10月18日まで
児童・生徒(人)
調査形式 質問紙法


(人)
小 学 生 中 学 生 高 校 生
4年 5年 6年 全体 1年 2年 3年 全体 1年 2年 3年 全体
167 151 179 497 235 243 225 703 383 385 368 1136

 意識・実態調査をするために抽出した小学校教員は66人,中学校教員は56人,高等学校教員は67人である。校種別に学校規模や地域性を考慮して調査校を抽出した。
 抽出した小学校の教員数は県内の小学校教員数の0.6%,中学校の抽出教員数は,県内の中学校教員数の0.9%,高等学校の抽出教員数は,県内の高等学校教員数の1.2%である。抽出した小学校高学年の児童数は,県内の小学校児童数の0.2%,中学校生徒数は,県内の中学校生徒数の0.6%,高等学校生徒数は,県内の高等学校生徒数の1.3%である。
教員(人)
 \校種 小学校 中学校 高等学校
経験20年以上  8  8 29
経験10年以上20年未満 38 25 23
経験10年未満 20 23 15
合        計 66 56 67
 集計結果の分析と考察
(ア)  楽しい授業について(小学生,高校生用の質問は省略)
あなたは,数学の授業で,どのように学習しているときが楽しいですか。あなたの考えにもっとも近いものをア〜キの中から二つまで選んで回答欄に記入してください。(中学生用)
 先生から出された興味のある問題について学習しているとき。
 自分でどうすればよいかを考えずに,先生のいうとおりに学習しているとき。
 グループで話し合いながら学習しているとき。
 一人で考えながら学習しているとき。
 実験とか作業とかをしながら学習しているとき。
 友だちのいろいろな考えと自分の考えを比較しながら学習しているとき。
 楽しいときはあまりない。
あなたは,算数・数学の指導において,楽しい授業にするため,どのように工夫していますか。あなたの考えにもっとも近いものを二つまで選んで回答欄に記入してください。(教員用)
 課題設定の工夫をしている。
 どちらかというと,教員が児童生徒の思考内容・方法の主導権をとって楽しくなるように工夫をしている。
 グループでの児童生徒の話合いを取り入れている。
 ー人で考える時間を十分にとっている。
 操作活動を多く取り入れている。
 比較検討の場面を多く取り入れている。
 楽しい授業を行うという意識はあまりない。

<<回答(数字の単位は人)>> <<グラフ>>
 児童生徒
 小学校 154 19 255 65 264 130 50
 中学校 270 37 323 120 226 195 179
 高等学校 436 46 310 294 161 322 443
授業が楽しいと感じるとき
 教 員
 小学校 29 6 10 22 35 21 1
 中学校 41 5 12 21 22 10 0
 高等学校 28 26 1 22 16 16 16
授業を楽しくするために

<<分析>>
 小学校では,児童は,オ 実験や作業ウ グループ学習ア 興味のある問題の解決の順に楽しく授業できると答えているのに対して,教員は楽しくするためにオ 操作的活動ア 課題設定の工夫エ 自力解決の場面カ 比較検討の場面 などを心掛けていると回答している。
 中学校では,生徒は,ウ グループ学習ア 興味のある問題の解決オ 実験や作業の順に楽しく授業できると回答しているのに対して,教員は,ア 課題設定の工夫オ 操作的活動エ 自力解決の場面を工夫して授業を楽しくしているとなっている。また,生徒は,キ 楽しくないという割合が小学校と比べて高くなっている。
 高等学校では,生徒は,キ 楽しくないア 興味のある問題の解決カ 比較検討の場面ウ グループ学習エ 自力解決の順になっているのに対して,教員は,ア 課題設定の工夫イ 教員中心の授業エ 自力解決の時間などの順になっている。また,教員のキ 楽しい授業を意識しないという割合が小・中学校と比べて高い。
(イ)  問題解決学習の授業に際して考えること(小学校,高校生用の質問は省略)
あなたは,数学の授業で問題を解決するとき,特に,どのようなことに注意して取り組んでいますか。あなたの考えに近いものをア〜ケの中から二つまで選んで回答欄に記入してください。(中学生用)
 問題を解くときに,今までに学んだ数学の考え方を利用しようとしている。
 問題を解くときに,解く方法の見通しを立てて考えている。
 あなたの考えや答えを順序よく書いたり,説明しようとしている。
 あなたの考えや答えがあっているかどうか確かめるようにしている。
 あなたの考えや答え以外に,もっとよいものを見つけようとしている。
 あなたの考えや答えと他の人との違いに注意をしている。
 問題を解いて分かったことと前に習ったことのつながりを考えている。
 注意して取り組んでいることは何もない。
 その他
あなたは,算数・数学の授業において問題を解決する指導をするとき,特に,どのようなことを心がけていますか。あなたの考えに近いものを二つまで選んで回答欄に記入してください。(教員用)
 学習した内容を他の場面で応用できるよう指導している。
 見通しを立てて解くように指導している。
 筋道を立てた考えで表現できるよう指導している。
 解いた結果に対して正しいかどうかの判断ができるよう指導している。
 よりよいものを考えさせる発展的な考え方を育てる指導をしている。
 考え方や答えについて自分と他人の相違点を考えるよう指導している。
 解決した問題と既習内容との関連が分かるような指導をしている。
 特に注意して指導していることはない。
 その他

<<回答(数字の単位は人)>> <<グラフ>>
児童生徒
小学校 281 98 46 162 104 98 107 37 6
中学校 372 142 54 257 102 158 126 107 15
高等学校 618 245 121 405 132 174 166 174 27
問題解決に当たっての注意
教 員
小学校 10 27 21 7 16 28 10 0 0
中学校 15 26 20 4 15 7 22 0 0
高等学校 13 36 30 8 15 6 18 0 2
問題解決に当たっての心がけ

<<分析>>
 児童生徒は,問題解決に当たって,ア 既習の数学的な考え方を活用エ 答えの確かめの項目については,小学校,中学校及び高等学校とも同じ割合を示している。ク 何も注意していないでは,中・高等学校で20%となっている。教員では,小学校でカ 比較検討の指導イ 見通しを立てるウ 筋道を立てて表現,中学校と高等学校では,イ 見通しを立てるウ 筋道を立てて表現キ 既習内容との関連などの割合が高くなっている。
(ウ)  数学的な考え方について(小学生,高校生用の質問は省略)
右図のような等式があります。この等式の右辺は,「n×n」の形になっています。あなたは,このことから,どんなことをしてみたいと思いますか。あなたの考えにもっとも近いものを一つ選んで回答欄に記入してください。(中学生用) 1×1
1+2+1 2×2
1+2+3+2+1 3×3
… … … …
 本当かなと思い,もっと多くの例を調べようとする。
 なぜなのか,その理由を知りたいと考える。
 別に何もしたいとは思わない。
 その他
右図のような等式があります。この等式の右辺は,「n×n」の形になっています。この題材を用いて授業を行うとき,どんな指導をしてみたいと思いますか。あなたの考えにもっとも近いものを一つだけ選んで回答欄に記入してください。(教員用) 1×1
1+2+1 2×2
1+2+3+2+1 3×3
… … … …
 児童生徒にもっと多くの例で調べるよう指導する。
 児童生徒に考えさせて,その理由を問うよう指導する。
 いろいろな考え方があることをあなた自身が説明する。
 その他

<<回答(数字の単位は人)>> <<グラフ>>
児童生徒
小学校 176 226 86 9
中学校 156 358 172 17
高等学校 305 410 395 26
児童・生徒がしたい学習
教 員
小学校 18 44 3 1
中学校 12 43 1 0
高等学校 16 40 11 0
教員がしたい指導法

<<分析>>
 小学生では,イ 理由の追究ア 多くの例を調べる,中学生では,イ 理由の追究が50%を超えている,高校生では,イ 理由の追究ウ 別に何もしたくないア 多くの例を調べるの順で高い割合になっている。
 教員では,小学校,中学校及び高等学校ともイ 理由の追究を60%以上の割合で回答しているが,高等学校教員では,ウ いろいろな考えを教員が示すこともやや多い。
(エ)  児童生徒の数学的な見方や考え方のよさについて(小学生,高校生用の質問は省略)
あなたは授業で,次のことを「数学のよさ」として気付いたり感じたりしたことがありますか。あるものすべての記号を回答欄に記入してください。(中学生用)
 役に立つ,他に活用できる。
 筋道を立てて考えられる。
 形式的,機械的に扱え,能率的になる。効率化が図れる。
 事象を文字,数字や記号を用いて抽象化・一般化ができる。
 美しさや驚きがある。
 喜びや楽しさがある。
あなたは,次にあげた「数学的な見方や考え方のよさ」に対して,授業の中でどのような取り組みをしていますか。各項目に対して,下の枠内のa,b,cより該当するものを選び,その記号を回答欄に記入してください。(教員用)
 役に立つ,他に活用できる。
a 実践している。
b 意識しているが実践していない。
c 意識していない。
 筋道を立てて考えられる。
 形式的,機械的に扱え,能率的になる。効率化が図れる。
 事象を文字,数字や記号を用いて抽象化・一般化ができる。
 美しさや驚きがある。
 喜びや楽しさがある。

<<回答(数字の単位は人)>> <<グラフ>>
児童生徒
小学校 280 185 266 126 67 121
中学校 441 139 216 161 70 238
高等学校 421 262 336 168 134 254
数学的な見方や考え方のよさ(児童生徒)
教 員  
小学校教員 37 60 47 26 13 44
28 6 15 34 37 19
1 0 4 6 15 4
数学的な見方や考え方のよさ(小学校教員)
教 員  
中学校教員 39 49 44 42 21 36
16 7 9 14 33 18
1 0 3 0 2 2
数学的な見方や考え方のよさ(中学校教員)
教 員  
高等学校教員 30 50 39 36 18 19
30 14 22 22 39 38
6 2 8 8 9 9
数学的な見方や考え方のよさ(高等学校教員)

<<分析>>
 小学校では,ア 有用性のよさウ 効率的・能率的なよさイ 筋道を立てるよさの順に多く,中学生では,ア 有用性のよさカ 喜びや楽しさを感じるよさのほかにウ 効率的・能率的なよさ,等を挙げている。高校生では,ア 有用性のよさウ 効率的・能率的なよさイ 筋道を立てるよさのほかにカ 喜びや楽しさを感じるよさを多く挙げている。
 教員については,小学校では,イ 筋道を立てるよさウ 効率的・能率的なよさカ 喜びや楽しさを実践していると回答している。中学校では,イ 筋道を立てるよさウ 効率的・能率的なよさエ 抽象性や一般化するよさの順に多く,ア 有用性のよさカ 喜びや楽しさを実践しているなども回答している。高等学校では,イ 筋道を立てるよさウ 効率的・能率的なよさエ 抽象性や一般化するよさなどと回答している。全般的にオ 美しさや驚きなどの数学的なよさを感得する取り組みについては,意識はしているが実践は少ないようである。

<<考察>>
(ア)  楽しい授業について
  • 小学校では,操作的な活動や課題の工夫について,教員は授業を楽しくするためには必要なことであるといっているのに対して小学生は操作的な活動をしているときは楽しいと回答している。小学生がグループの活動は楽しいといっている割合が60%と高いのに対して,教員はあまり高い割合(約20%)とはいえない。
  • 中学校では,小学校と同じ傾向を示しているが,教員は,課題の設定を工夫しているという割合が約80%と高いのに対して,中学生は約40%の割合である。教員の意識の中に,常に課題を工夫すれば授業が楽しくなるという考えがあり,課題を工夫した授業実践を心掛けようとしているのに対して,生徒はグループ活動の方が楽しい授業になると感じている。教員は学習内容の工夫を挙げ,中学生は学習形態によって楽しくなると回答しているようである。
  • 高等学校では,課題の工夫に対して生徒と教員が一致した傾向を示し,グループでの活動については小・中学校と同じような傾向を示している。また,楽しい授業を意識していない教員が20%となっていることや,授業が楽しくないといっている生徒が40%いることに注目したい。
(イ) 問題解決学習の授業について
  • 小学生では,自力解決時に既習の内容を活用しようという割合が多いのに対して,教員では問題解決の方法の見通しや数学的な考え方の比較等を重視しようとする割合が多い。児童と教員の問題解決に当たっての取り組み方は一致していないようである。また,児童は答えの確認を重視しているが,教員は,答えの確認を重視しているとはいえない。
  • 中学生では,小学生と同じような傾向を示し,既習の内容の活用と答えの確認の割合を多く挙げているが,教員では見通しを立てて考えること,筋道を立てて考えることや問題解決の後に既習内容とのつながりなどを重視する割合が高く,生徒と考えが一致していない。
  • 高等学校では,中学校と同じ傾向を示している。
    これらのことから,授業の中で,既習の内容,既習の解決方法や本時の授業内容とのつながりを十分配慮して,解決方法や結果の予測を話合いながら,問題解決を図る必要があると考えられる。
(ウ) 数学的な考え方について
  • 小学生,中学生及び高校生と教員の考えは,ほぼ同じような傾向にある。高校生では「何もしたいとは思わない」という割合や,高校教員では「教員自身が説明して授業を展開する」という割合が高いので,生徒の関心,意欲や態度を向上させるような工夫が必要である。
(エ) 児童生徒の数学的な見方や考え方のよさについて
  • 小学生,中学生及び高校生では,算数・数学の有用性や能率的・効率的な内容をよさと回答している割合が高いのに対して,教員では筋道を立てて考えられるようになることをよさと回答している割合が高い。児童生徒が実用的な面を強調しているのに対して,教員は,思考力などの基礎的・基本的な学力を育てることを数学のよさととらえているようである。また,中学生と高校生は,数学の喜びや楽しさをよさとして回答している割合が高いが,高等学校教員は,中学校の教員ほど意識していないようである。

算数・数学科目次