3.研究のまとめ

 社会科においては,平成8・9年度の2年間,「自分とのかかわりを通して,問題意識を高め,問い続ける社会科学習の指導の在り方」という研究主題を設定し,意識・実態調査及び授業研究を行った結果,次のようなことが明らかになった。

(1)

意識・実態調査から

 児童生徒の問題意識を醸成し,自分なりに学習問題をもてるようにするためには,作業的,体験的活動を取り入れ,五感を通して社会的事象と直接かかわり合う場を設定することが大切である。
 納得してあるいは実感として分かるという体験を多くの児童がもてるようにするには,体や心を通して社会的事象とかかわったり,児童生徒同士の学び合いの場を設けたりすることによって,社会的事象に対する認識の共通点や相違点を感じ取れるような活動が必要である。
 感性を育てるには,問題解決的な学習の中で,児童生徒が社会的事象と自分とのかかわりの中から問いをもち,自分なりに解決の方法を考え,問題の追究を通して社会的事象のもつ意味や価値を問い直す活動を繰り返すことが大切である。

(2)

授業研究から

 小学校の実践を通して
 小学校では,聞き取り調査や模擬体験的な活動を取り入れ,五感を通して社会的事象とかかわることによって,児童の問題意識が醸成され,自分なりに学習問題をつかむことができた。また,問い続けるために学習の複線化を図ったり,ポスターセッションなど子供同士がかかわり合う場を設けたりすることによって,児童は,自分の思いや願いを生かして追究できるようになるとともに,友達の見方や考え方と自分の考えを比較し,多角的な視点から歴史的事象をとらえ,時代を生きた人物の思いや願いに共感することができた。
 中学校の実践を通して
 中学校では,身近な地域の歴史的事象を取り上げたり,グループ内での意見交換の場を設けたりすることによって問題意識を高め,室町時代に対する自分の見方や考え方を深めることができた。また,調べたことを発表したり図に表したりすることで,自分で調べたことや考えを問い直し,歴史的事象に対するイメージをふくらませることができた。
 高等学校の実践を通して
 高等学校の日本史の実践では,夏季休業中の班ごとによる周辺地域の古墳調査や,調査結果の発表を通して,古墳時代の歴史的事象に対する問題意識を高め,古墳に対する自分の既成概念が突き崩されることによって,新たな視点から歴史認識を深めることができた。
 政治・経済の実践では,裁判所の傍聴や模擬裁判を通して,直接的,間接的に社会的事象にかかわり,生徒の問題意識を高めることができた。模擬裁判を行うことで,裁判と自分とのかかわりを深め,それまで生徒がもっていた裁判所の役割や仕組みについてのイメージをより的確なものとしてとらえることができた。
 小・中・高等学校の実践研究を通して,@問題意識を高め,子供が問い続ける学習の場の構成やA感性を触発し,問題意識を高める手だてを工夫し,B子供同士がかかわり合って学習する場を設定することによって,子供は,自分とのかかわりを通して,問題意識を高め,追究の過程で問い続け,感性に裏付けられた社会認識を獲得できることが分かった。

社会・地理歴史・公民科目次