(1) | 感性を触発し,問題意識を高める手だて
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(2) | 問題意識を高め.問い続ける学習の場の構成
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(1) | 単元 古墳と大和政権 | ||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 目標
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(3) | 学習計画
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(4) | 本時の学習
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(1) | 作業的・体験的な学習 本研究のテーマは「自分とのかかわりを通して,問題意識を高め,問い続ける地理歴史科学習の指導の在り方」である。この研究主題に迫るための手だてとして,(a)問題意識を高め,問い続ける学習の場の構成,(b)感性を触発し,問題意識を高める,(c)生徒同士がかかわり合って学習する場の設定,などが挙げられる。この授業では,まず(a),(b)を踏まえ,日立市郷土博物館見学や周辺地域の古墳見学などをもとにレポートを作成するといった作業的・体験的な活動を取り入れ,五感を通して直接的に歴史的事象とのかかわりを持てるようにした。こうした活動は従来のイメージを覆したり,深めたりするとともに,新たに生じた疑問の追究へ向けてのエネルギーとなり,“問い続ける”生徒の姿勢へつながるであろう。また,問題解決の過程で,班編成による意見交換,発表などを行い,(c)の生徒同士がかかわりあって学習する場を設定した。自分の調べた結果や考えを相互にやりとりすることで,自分の考えを問い直したり,イメージを深めたりすることができるであろう。 |
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(2) | 夏季休業中のレポート作成 調べたことを発表している様子 「周辺地域の古墳について」というテーマでレポートを作成することを課した。こうした調べる活動をする上で大切なことは,何を調べるのかという課題を絞り込んで設定することであるという意見がある。漠然と「○○について調べよう」では,調べる中での充実感は得られないという指摘である。しかし,課題の設定が厳格にすぎると,型通りのレポート作成を要求することとなり,調べる活動への意欲や充実感を減退させてしまう面もあることに注意をしなければならない。 資料6 古墳調査についての感想
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(3) | レポート発表と発表内容の検討 夏季休暇中のレポートをもとに,各班ごとに古墳を一つ選んで発表した。班編成は,1班3〜4人で,班ごとにレポートの内容が偏らないように工夫した。さらに各班の発表の後,「各古墳に共通する点は何か」にポイントをおいて検討し合うこととした。発表しただけに終わらず,その成果をお互いに検討し合い,より高めていく場が設定できれば,生徒の充実感を高めることができるであろう。発表や討論を進める際に大切なことは,伸び伸びと発言できる雰囲気をもつ学習集団をつくることである。生徒からは「古墳が河川や湖の周辺や台地など見晴らしのよい場所に立地していること」「茨城県内の規模の大きな古墳が“前方後円”という共通の形式を持つ」などの意見が出た。これらの意見は,大和政権の同盟のシンボルであり権力の象徴としての前方後円墳の本質,また,水利の把握を志向する地域の首長らのありかたにせまる大切な指摘である。 このように,共通性を背景に引き出された概念的知識は,適用範囲が広く,応用性も高いので,生徒が歴史的な事象をとらえたり,歴史認識を深めたりする際の手がかりとなる。この授業前に,日立市久慈町舟戸山古墳を調べ「被葬者は分からない」と述べた生徒が,授業後の感想では「この古墳は,久慈川と太平洋の広がりがみえる台地にあるから,被葬者は久慈川の水運をおさえていた人物ではないか」と書いている。この感想からは,概念的知識を駆使し,新たな問題の解決へ向けて,自分なりに追究しようとしている生徒の姿勢を見てとることができる。 「いつ,どこで,誰が,何を」といった事実的知識に終始する限り「歴史学習=暗記」という生徒の認識を克服することは困難であろう。歴史認識の座標軸となるような,応用性の高い概念的知識の獲得をめざす授業でありたい。
資料7 古墳についてのレポート
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(4) | 生徒の新たな課題追究活動への糸口 この授業では,事前に古墳に関する生徒の疑問点を調査し,それらを踏まえて授業内容を構成した。生徒の疑問点は,プリント「学習課題確認シート」にまとめ,生徒に提示した。教師側が生徒の問題意識・疑問などを的確に把握し,それを授業に生かすことができれば生徒の学習に対する意欲を引き出し,問題意識を高めていくことができるであろう。授業後には,解決できた疑問,新たに生じた疑問,感想などについてアンケートを実施した。 ある生徒は「なぜ,私がこんなに一生懸命古墳について調べたのか,不思議でしかたがありませんでした。でも,それは古墳の持っている人を引き付ける力があったからだと思います。一つの疑問が解けるたびに“なるほどな”と感心させられることが多く,楽しい授業だったです。また,時間があれば古墳について調べてみたいです。」と授業後の感想文に書いている。このように,学習することの楽しさを体験することは,問い続ける意欲を育てる基礎となるものである。さらに,生徒が「どうしても調べてみたい」という切実感,必要感のもとに学習課題を追究していくことができるためには,魅力ある教材が,魅力ある視点と授業展開の中で提供される必要がある。 また,「私の友達が家を建てる時に鉄剣が出てきたらしい。古墳を残すことと住宅を建てたり道路をつくることとどちらが大切なのか。こういう問題もこれから解決しなければならない問題だ,ということが分かった」という感想がある。生徒たちは過去の歴史を学びながら,極めて現代的な課題を自ら発見しているのである。
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社会・地理歴史・公民科目次