ねらい |
我々は,自分が人とどのような「出会い」をするか,自分がどのような対人関係をもつ傾向があるかもあまりよく知らない。そこで,いろいろな出会い方をシミュレーションしてみて,それぞれの出会い方をしているときの自分の気持ちに気付くことによって,自分が普段行っている人との出会い方を知ることができる。ビデオを使って,自分の出会い方を第三者の目で見るように見ることができれば,さらに効果的であろう。 |
時 間 |
ロング・ホームルーム(50分)など |
準 備 |
特になし |
進め方 |
@ |
グループは10人以内の二つのグループに分かれる。図のように,AグループとBグループが5メートルぐらいの間隔で部屋の両側に1列に並ぶ。両グループの先頭aが,互いにその場所を入れ替わるという形で,部屋の中央に向かって同時にゆっくりと歩き始める真ん中の地点Cでリーダーの指示するさまざまな出会い方を体験してみる。続いて両グループのbとb,Cとc‥‥‥というように。終わった者はついたグループの末尾につく。
リーダーの最初の指示としては,「真ん中で出会ちたら,ただ通り過ぎて下さい。」と言うだけでよい。自然な出会い方が表現されるように,他には何も言わない方がよい。 |
図 「出会い」
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A |
「真ん中で出会ったら,相手から顔をそむけて通って下さい。」と指示する。 |
B |
「真ん中で出会ったら,下を向いて通り過ぎて下さい。」と指示する。 |
C |
「真ん中で出会ったら,お互いに顔を向けて,目を見合わせながら通って下さい。」と指示する。 |
D |
「通り過ぎるとき,なるべくさりげなくお互いにひじのあたりを触れて通って下さい。」と指示する。 |
E |
「今度は,真ん中で出会ったら,立ち止まって握手して下さい。」と指示する。 |
F |
「真ん中で出会ったら,そこで向かい合って立ち止まり,今ここで相手に対してもっている気持ちを言葉を使わずに行動で(体で)表して下さい。」と指示する。 |
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留意事項 |
- 「ただ通り過ぎる」のやり方の中に,その人の対人関係の持ち方の基本的な姿がすべて表現されているので,リーダーはよく観察していなければならない。
- 「顔をそむけて通る」ということを,わざと大げさにやってもらってそのときにどんな感じが自分の中に起こっているかをみるようにする。
- 「避けて通る」というのと区別しにくい部分もあるが,「下を向いて通る」方は,自分に問題がある場合が多い。「避けて通る」は「対他的」であるが,「下を向いて通る」は「対自的」といった微妙な側面を持っていることを踏まえておく。
- 「目を見合わせる」場合も,よく見ていると,十分に顔を見ていなかったり,なるべく早く目をそらそうとしたり,足早にその場を立ち去ろう、とする人もいるので,リーダーは十分に注意していなければならない。そういう人に気が付いたらフイードバックしてやった方がよい。
- 「さりげなく触れる」ことを強調し,「強くぶつかることではない」ことも注意しておく。これまではまったく体に触れずに通り過ぎてきたが,少しでも体が触れ合うというは,まったく触れ合わない場合とどう違うか,どんな感じがしたかを感じさせ
るようにする。
- 「握手する」のは「さりげなく」ではなくて,意図的に相手の体の一部に触れることになるので,外向的,社交的な人は安心するであろう。しかし,中には,内向的,非社交的な人は対人関係に不安を感じる場合もあるので,注意深く観察する必要がある。
- リーダーはFの指示の際,他から排斥されている生徒はいないかどうか,特に注意深く観察する。
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子どもの反応 |
- 「避けて通る」のはやってみても,やられても嫌な感じがした。
- 「目を見合わせて通る」とき,何か気恥ずかしくて目をそらしてしまった。
- 「顔をそむけて通る」よりも,「目を見合わせて通る」方が安心するとか,気持ちが落ち着くように感じた。
- ひじのあたりだけでも,はんの少し触れただけで人の温もりが感じられた。
- 握手したときの人の手の温かさ(冷たさ)が,今も感触として残っている。
- 「相手に対する気持ちを自由に表して」のとき,避けられたらどうしようと不安になった。
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成 果 |
- 自分の「出会い方」や「対人関係の持ち方」のパターンを知ることができた。
- 「相手に対する気持ちを自由に表す」ときに,偶然1組が抱擁したら,次第にそれが広がっていき,より受容的で温かい雰囲気になっていった。
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