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題材について
今日の我が国では,コンピュータ等の情報機器が社会のさまざまな分野で利用されるようになってきた。こうした社会の情報化にともない,人間とコンピュータとの関わりは今後いっそう密接になって行くものと思われる。したがって,これからの21世紀に生きる生徒が情報化社会に主体的に対応していくためには,単にコンピュータに関する知識を学ぶだけではなく,コンピュータを使って考える,コンピュータを使って表現するなどの能力を育成していくことが大切である。中学校の技術・家庭科の情報基礎領域は,そうした能力を育成する場ともなっている。
中学校の学習指導要領に示されているように,情報基礎領域での学習のねらいは,コンピュータの操作等を通して,コンピュータの役割と機能について理解し,情報を適切に活用する基礎的な能力を身に付けることである。ここでいう情報を適切に活用する基礎的な能力とは,数多くある情報の中から必要なものを選び,選んだ情報を整理したり,処理したりして,新しい情報を作り出し,それを適切に表現できる能力であり,情報活用能力といわれている。この情報活用能力を育成するために,情報基礎領域では,コンピュータの仕組み,コンピュータの基本操作と簡単なプログラムの作成,コンピュータの利用,日常生活や産業の中で情報やコンピュータが果たしている役割と影響の4項目が設定されている。
コンピュータに関する実態調査では,コンピュータを操作したことがあると答えている生徒が7割近くいたのに対して,コンピュータの利用分野としての制御については,コンピュータ制御という言葉を聞いたことがあると答えた生徒は4割ほどしかいなかった。また,聞いたことがあると答えた生徒でも,制御の具体例をあげた生徒はほとんどいなかった。このことから,事務処理や趣味などで日常的に見たり使ったりしているコンピュータについては,十分な知識があり操作した経験も持っているが,普段目につかないところや産業の中で重要な役割をしている制御用のコンピュータの役割と機能については,その概念さえも定着していないことがわかった。
こうしたことを踏まえて,本題材では,コンピュータの利用分野の一つである制御に視点を当て,コンピュータの利用分野としてのコンピュータ制御についての知識を深めるとともに,制御端末を働かせるプログラムを段階的に作成する学習活動を通して,コンピュータの役割と機能を理解させ,情報活用能力を身に付けさせることを目標とする。
具体的には,LED及び7セグメントLEDをプリント基坂上に配置した制御実習ボードを制御するプログラムを作成して,インタフェースを介してパソコンで制御する学習を行う。その際,制卸実習ボードとして4種類のものを用意して,複数の制御学習コースを作り,生徒が個性や興味・関心に合わせて学習コースを自由に選択できるようにする。また,生徒が主体的に学習を進められるように,テキスト,学習カード,ヒントカード,サンプルプログラムなどが,課題解決を効果的に支援する教材となるように工夫する。さらに,表現力の育成を目指して,情報交換の場や学習成果の発表会を設けるなど,自己評価や相互評価の活動が十分に行えるように配慮する。 |
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総括目標
LEDや7セグメントLEDで構成した制御実習ボードをBASICで制御する活動を通して,プログラムの機能を理解し,基本的な情報処理の手順や方法を身に付けるとともに,制御するプログラムの作成を行うことができる。 |
(3) |
具体的目標
ア |
関心・意欲・態度
プログラムが果たしている役割について関心を持ち,コンピュータによる制御実習ボードの制御に意欲的に取り組もうとする。 |
イ |
創意工夫
いろいろな命令語を組み合わせて,サンプルプログラムをもとに,自己の目的に合うようにプログラムを工夫・改良しようとする。 |
ウ |
技能
コンピュータを操作して,自己の目的に合った制御プログラムを作成できるとともに,制御プログラムを実行して,制御実習ボードを動かすことができる。 |
エ |
知識・理解
制御に必要な機器の機能やBASIC言語の役割を知るとともに,制御にともなう情報処理の手順や方法を理解する。 |
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(4) |
指導計画(9時間取り扱い)
第一次 |
コンピュータ制御学習のオリエンテーション |
……………… |
1時間 |
第二次 |
交通信号機と電子ルーレットの制御 |
……………… |
3時間 |
第三次 |
学習課題を決めて制御する |
……………… |
5時間 |
第1時 |
学習コースの選択と学習課題の設定 |
第2時 |
課題解決に向けてのプログラム作成(その1) |
第3時 |
課題解決に向けてのプログラム作成(その2) |
第4時 |
課題解決に向けてのプログラム作成(その3) |
第5時 |
作成したプログラムの発表会と制御学習のまとめ |
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(5) |
授業の実際(第三次)<3/5時>
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(6) |
考察
ア |
実態調査から
(ア) |
制御プログラムの作成を終えての生徒の実態について
授業研究を行ったクラスに対して調査した結果を示す。
- 学習を終えての満足度は?
- プログラムのでき具合はどうでしたか?
制御学習の満足度については,「とても満足した」「満足した」とする生徒を合わせると,全体の約9割になる。また,制御プログラムの作成については,「とてもよくできた」「よくできた」とする生徒を合わせると,全体の約8割になる。こうしたことから,ほとんどの生徒にとって,制御学習が充実した活動であったことがわかる。 |
(イ) |
学習に取り組む意欲の変容について
生徒が学習に取り組む意欲を,自主性,集中力,持続力,向上心,自信の5つの視点からとえてみた。この5つの視点について,制御の学習を行う前の取り組みと,制御の学習における取り組みについて,生徒の意識にどのような違いがあるかを調査した。この調査は,生徒の自己評価によって行い,5段階評価とした。
学習の前より後で視点の評価がプラスの方向に変容したとき,学習に取り組む意欲が高まったと考えることができる。
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5つの視点の内容は,次のとおりである。 |
図19 意欲の変容 |
自主性 |
: |
自ら進んで学習に取り組める。 |
集中力 |
: |
他に気を取られないで,学習に没頭できる。 |
持続力 |
: |
途中であきらめることなく,最後まで学習に取り組める。 |
向上心 |
: |
新しいことを知ろうとしたり,課題を解決しようとする。 |
自信 |
: |
がんばればできると信じて,学習に取り組める。 |
比較の結果は図19であり,すべての視点において高まりを見せている。特に,自主性と集中力の伸びが大きく,それぞれ1.1,2.0ポイント上昇しており,他の持続力,向上心,自信の伸びが,それぞれ0.6,0.5,0.4ポイントであるのと対象的である。これは,生徒が自由に学習コースを選択して個別の学習課題を持ったこと,またプログラム作成の効果が制御実習ボードの動きとなってすぐに表れるために,修正や改良が即座にできて,課題解決の見通しを立てやすかったことと関連している。 |
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イ |
情報活用能力について
生徒は,学習コースの選択や学習課題の設定に当たって,複数の制御実習ボードからどれを選択し,その制御実習ボードという情報手段を使って,何をどのように表現し伝達したいのかを考え,学習カードに構想をまとめることができた。また,学習課題の解決に当たって,同じ学習コースを選択した生徒同士が,各自のプログラムについての情報を発信したり交換したりする活動を自主的に行った。さらに,収集した情報を自分の課題解決に活用できるか判断,整理しながらプログラムの質的向上を図ろうとした。
生徒はプログラムに点灯制御の数字を代入し,プログラムを実行してLEDの点灯の様子を確認する作業を繰り返しながら,その結果を学習カードに記録して行った。さらに学習カードに蓄積されたデータを整理・処理することによって,自らの取り組みの中で規則性を発見した。これは,その後の応用・発展学習の基礎になったと同時に,課題に取り組むうえでの自信につながった。 |
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