2 制御実習ボード

 制御教材を構成するに当たっては,パソコンとの入出力を中継する部分であるインタフェースと,具体的な制御端末を分離させて構成するのが望ましい。インタフェースはパソコンに接続したままでよいが,制御端末は教材内容によってさまざまな種類のものを自由につけ換えられると便利だからである。学習指導に有効と考えられるこうした制御端末を「制御実習ボード」として総称することにする(図2)。


図2 パソコン制御の概要

 中学校の技術・家庭科で考えられる制御教材には,次のようなものが考えられる。
  @  LED(発光ダイオード)を複数個使っての点灯表示
A  7セグメントLEDによる数表示
B  直流モータの回転制御
C  ステッピングモータの回転制御
D  リレーの制御
E  センサの出力に応じた制御
F  動く模型の制御
G  楽器の自動演奏制御
 さらには,これらの教材を融合させたものも考えられる。たとえば,@とEを組み合わせて,光センサで光量の変化を検知してLEDを点滅させるとか,DとEを組み合わせて,温度センサで温度の変化を検知してリレーを制御させるとかの教材を構成することが可能である。
 本研究では,制御実習ボードの設計に当たって,
  • 部品が安価に入手できる。
  • 回路が簡単であり,生徒でも容易に製作できる。
  • 実習ボードを制御するためのプログラミングが容易である。
  • 実習ボードを使って生徒の表現活動が適切に行える。
という四つの視点をもとにして,LED(発光ダイオード)を複数個使ってのパターン表示と,7セグメントLEDによる数表示を取り上げることにした。
 LEDまたは7セグメントLEDで構成できる制御実習ボードを取扱いの発展性という視点から種別すると,次のようになるであろう。
  • 制御手順がはぼ固定化しているもの
    例:交通信号機(赤・黄・緑のLEDを1列に並べる。)
  • 確定しているいくつかの制御手順を組み合わせて,発展的に扱えるもの
    例:電子サイコロ(LEDを7個さいころの目の形に並べる。)
       電子数字表示板(7セグメントLEDをいくつか並べる。)
  • 制御手順が自由で発展的に扱えるもの
    例:電子ルーレット(LEDを円形に並べる。)
       電光ボード(LEDをマトリックス状に並べる。)
 本研究で製作した制御実習ボードの概要を次に示す。
(1)  交通信号機(写真2)
 赤・黄・青のLEDを2組直角に配置して,交差点での交通信号を模擬的に表示する。交差点での交通信号機の動作は生徒がイメージしやすく,制御の導入段階で活用できる。
(2)  電子サイコロ(写真3)
 7個のLEDをサイコロの日の形に配置して,サイコロの目を点灯する。1から6までの目を点滅させることができる。簡単なゲームに発展させることも可能である。
(3)  電子ルーレット(写真4)
 8個のLEDを円形に配置して,ルーレットとする。LEDを点滅させる手順を工夫するとさまざまなまわり方が表現可能であり,生徒の発想を生かして点滅させることができる。ルーレットがまわるのに合わせて,パソコンから音が出力されるようにプログラミングして多彩な表現活動ができる。また,24ビットの出力ポートをすべて使うと,LEDを最大144(12×12)個点滅させることができる。
(4)  7セグボード(写真5)
 7セグメントLEDを3個並べて配置して,最大3桁の数字を表示できる。7セグメントLEDで0から9の数字を表現するには,7個のセグメントのうち2個〜7個までを同時に点灯させる。数字以外に英字や記号も表示可能であり,多彩な表現活動が可能である。
(5)  電光ボード(写真6,7)
 LEDを24個を縦横(6行×4列)の格子に並べて配置して,電光掲示板のように文字や記号を表示できる。迷路を措いたTPシートを電光ボードの上に載せて,迷路のコースをたどってLEDを点灯させる電子迷路とすることができる。生徒同士で迷路パターンを出し合い,解き合うことなどが考えられる。また,3行×8列に並べて,8ビットの2進数の加減乗除の学習もできる。

 これらの教材を発展性及び難易度の面から整理したものを次表に示す。

教  材  名 発展性 難 易 度
交通信号機 容易
電子サイコロ 容易〜中程度
電子ルーレット 容易〜中程度
7セグボード 中程度〜難しい
電光ボード 容易〜難しい

写真2 交通信号機 写真3 電子サイコロ
写真4 電子ルーレット 写真5 7セグボード
写真6 電光ボード(1) 写真7 電光ボード(2)


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