(1) | 単元目標 身近な気象の観察や観測を行い,気温,湿度,気圧,風向,風力などの測定及び記録の仕方を身に付けるとともに,これらが相互に関連していることを見いだす学習をもとに,霧や雲の発生,前線の通過にともなう天気の変化など,より規模の大きい気象現象が起こる仕組みを調べ,見いだした問題に興味・関心を持って探究する活動を通して,気象現象についての見方や考え方を養う。 |
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(2) | 具体的目標
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生徒は小学校第4学年で,水が蒸発したり,空気中の水蒸気が水に変わったりする様子を観察し,自然界の水の変化を学習している。さらに,小学校第5学年では,気温,雲,風などを観察して,天気の変化を調べる学習をしている。
中学校では,こうした基礎的な観察や観測をもとに,天気変化の規則性に気付かせるとともに,様々な気象情報を活用した天気の予測の方法について理解させ,天気変化についての認識を深めることがねらいである。
この単元の学習は,全体を通して,グローバルな視点で自然現象をとらえる内容となっている。地球全体という広範囲に展開されている天気の変化は,一見複雑そうであるが,その中に規則性や法則性を発見することにより,その後の変化を予想したりできることから,自然現象の中にそのような規則性や法則性を発見することの素晴らしさを実感させたい。
第一次 | 天気の変化 | ……… | 4時間 | |
第二次 | 空気中の水 | ……… | 4時間 | |
第三次 | 気圧と天気 | ……… | 6時間 | |
第四次 | 日本の天気 | ……… | 6時間 |
(1) | 目標 霧や雲の発生のメカニズムについて,気温,気圧,湿度の変化に注目しながら,興味・関心をもって意欲的に探究するようにする。 |
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(2) | 情報活用能力と評価 本時では,コンピュータ及び実験計測器,オフセット可変の精密温度計を使って,閉じこめた気体を断熱膨張,圧縮させたときの気体の温度変化を観察し,気体の温度,圧力,湿度に注目させながら実験を進めることによって,興味・関心を高める学習活動となるように構成した。コンピュータによる実験計測は,通常見ることのできない温度変化を視覚的にとらえさせることができて,生徒の直接経験をより鮮明に具体的なものとして印象付けるのに役立つ。 また,従来の実験では,注射器を引いてフラスコ内の気圧が下がったとき,雲が発生するのを観察するだけであり,普通の温度計では温度変化をとらえにくく,フラスコ内の気温が下がることを実感することができなかった。ここでは,ペットボトルに温度センサを取り付け,そのふたの上面をくり貫いたものにポリエチレンシートをかぶせ,ボトルを密閉し自転車の空気入れで圧縮空気を送り込んだ後,尖ったものでシートを破り,ボトル内の空気を急激に膨張したときの温度の時間変化をコンピュータに読み込み表示するようにした。このように,温度変化をリアルタイムで観察できるよう工夫して,生徒の意欲を高めることをねらった。
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(3) | 展 開 |
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(4) | 生徒の反応
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(5) | 考察 最初の段階で,フラスコ内に雲ができる様子を提示したことで,不思議だなと思うと同時に,雲のできる仕組みを解明しようとする意欲が高まった。フラスコ内に雲をつくる生徒実験では,どの班も熱中して取り組んだ。 はじめ,注射器の動かし方が遅いため,雲の発生がはっきりしなかったが,だんだんと素速く動かせるようになり,はっきりと雲の発生を観察できるようになった。この段階で,生徒は注射器を動かすと容器内の気圧が変化することには気付いたが,温度の変化に気付くところまでは至らなかった。 教師が温度計の挿入をうながすことにより,生徒ははじめて気温の変化に関心を示すようになった。そして,温度計ではその変化の様子をとらえることが難しいこと,また,コンピュータを使った温度変化の精密測定によって,気圧が下がると気温も下がることをとらえることができた。 生徒の自己評価や感想から判断すると,「天気とその変化」の学習の導入として,「雲のできる仕組み」を実験的に観察し,そのメカニズムを考察することで,生徒の気象現象に対する興味と関心は十分に高められたと考える。また,録画したビデオの生徒の活動のようすや表情から判断して,コンピュータを計測に活用することで,空気が膨張し気圧が下がると,気温が下がることを印象深く理解したようである。 今までは,ドリル型的にコンピュータを使うことが多かったが,今回,初めて,計測のためにコンピュータを活用したことで,生徒は,さらにコンピュータの機能のすばらしさに気付き,コンピュータ利用の学習に興味と関心を持つとともに,温度変化がグラフ化されて表示されたときは感動を示した。 今回の実験は単元のはじめに行ったものであり,雲のできる仕組みについて仮説を立てる場面では,生徒の自由な論理が展開できた。また,身近な自然現象に着目し,今までの生活体験を基盤に,そのメカニズムを自由に推理する楽しさに目覚めることができたと考える。この段階で,生徒の自発的な態度を喚起できたことは,今後の学習活動に有利に働くものと予想される。 |
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(6) | 情報活用能力の評価の実際 生徒の感想文によると,「温度変化もよくわかった。」とか「温度変化がグラフになって画面にでてきてよくわかった。」など,ディスプレイ上の横軸に時間,縦軸に温度を取ったグラフの読み取り方については,十分に理解したものと思われる。また,授業中の生徒の表情から,画面に表示される温度変化のグラフとペットボトルの中の空気の圧縮,膨張による状態の変化とを結び付けて,雲の発生に膨張の際の温度低下が関係しているのを的確に判断したようである。 温度変化の凸形変化とボトル内部の雲のでき方を比較観察して,温度変化のどの部分で雲ができるかを容易に選び出すことができた。 温度変化をプリンタにハードコピーして,実験が終了してから生徒一人一人に印刷して配り,実験ノートの整理に意欲を持って取り組めるよう支援した。 授業の導入段階で行った従来の実験方法での雲の発生では,注射器を引くことによりフラスコ内の気圧が下がると推論でさていることが,各班の発表から明らかになった。しかし,空気の温度変化に気が付いた班は一つもなかった。土中温度計をフラスコ内に入れて雲ができるときの温度の変化を観察させたが,温度計に変化が現れないことにがっかりしたようであったが,「温度」に注意を向けさせることには十分成功したように思う。こうした学習活動を踏まえて,授業の後半に行ったペットボトルを使った演示実験によって,雲の発生における温度変化の役割と気圧,温度,湿度の相互関連を強く認識した。 |