国語科の物語や小説の学習における見通しとは,次の二つであるととらえた。
一つは,読み進めるためのめあて意識が明確になることである。児童生徒は作品との出会いにおいて,登場人物についてもう少し考えてみたいとか,どんな気持ちだっただろうとか,感動の焦点は何かを突き詰めたいとかの思いをいだき,それを自分の問題意識としてもつことである。
二つは,読み解く手掛かりをもつことである。自分の問題意識を解決するために,どのように読んでいけばよいのかという手掛かりを明らかにすることである。
児童生徒自身の問題意識が稀薄ならば,「読み」の学習は受け身になってしまう。また,せっかく問題意識が高まっても,解決の手掛かりがなければ学習は停滞してしまう。したがって,児童生徒が物語や小説を読み解こうとするに当たって,これらの見通しをもつことは,主体的に学習していくために欠くことのできないものである。
自分自身の問題意識を明確にもって,解決の手掛かりがつかめれば,児童生徒は自分の力で読んでいこうという意欲をもって学習に取り組むであろう。したがって,「読み」の学習において,見通しをもつように支援することは・児童生徒の自ら学ぶ意欲と主体的な学習態度を育てる上で重要な意義をもっている。
見通しには,1時限単位での見通しと単元全体の見通しが考えられる。1時限にせよ単元全体に対する見通しにせよ,児童生徒が「読み」の学習の見通しをもつためには,教師のかかわり方が重要である。見通しをもたせるには,段階を踏んだ指導が必要であろう。教師が細かい助言を繰り返しながら見通しをもたせる段階,教師の助言や児童生徒同士の話合いのもとに見通しをもたせる段階,教師の支援によって見通しをもたせる段階等を経て,児童生徒は自らの力で見通しをもつことができるようになる。支援に際しては,児童生徒の発達段階や実態に応じて,次第に自分自身で見通しがもてるようにしていくことが望まれる。
めあて意識としての見通しをもたせるには,初発の感想や疑問,もっと考えてみたいこと,既習の「読み」のカなどを適切に把握し,興味・関心を生かしながら,児童生徒自身の力で解決することができるような問題意識をもたせるように支援していく必要がある。
読み解く手掛かりとしての見通しをもたせるためには,教師の教材研究によって得た指導の意図と生徒の初発の感想が集中するような表現や対象などとを考慮しながら,児童生徒が読み解く手掛かりをつかむことができるようにすることが必要である。
国語科の「読み」の指導については,教師用の意識・実態調査における「読み」の指導過程を見ても・さまざまな方法で授業が展開されていることがうかがえる。自ら学ぶ意欲や主体的な学習態度を育てるには,今までに実践されてさた「読み」の指導過程を生かしながら,児童生徒主体の「読み」の学習活動を,どのように組織していくかということが重要である。
物語や小説を読み解くとは,文章に叙述された内容の関連を明らかにしたり,構造を説き明かすことによって,人生や自然についての見方や考え方が深まったり,新たになったけることである。読み解くためには,児童生徒自身の問題意識を深く追究できる手掛かりを見いだすように支援をすることが必要である。
物語や小説を読み解く「カギ」として,視点,対比,時間,空間、文末表現,描写,語句・文及げ文章の構成に関する事項等が考えられる。「カギ」は,その物語や小説を深く追究できるものである。教材によって「カギ」は異なり,また,「カギ」は一つだけでなく,いくつもの「カギ」が考えられる。読み解く場合には,いくつかの「カギ」を組み合わせることによって読み進めることになるであろう。児童生徒に生きて働く「読み」の力をつけるという点から考えて,「カギ」は,「読み」の力として児童生徒に定着するもの,児童生徒の興味・関心や自ら学ぶ意欲を育てるものであることが求められる。発達段階や実態に応じて,児童生徒の興味・関心を生かしながら,内容を深く追究できるものを「カギ」と考える。
読み解く「カギ」をつかむには・児童生徒の興味・関心を生かすように支援することが必要である。例えば,児童生徒の初発の感想や「読み」の傾向などから,興味・関心がどのような対象や場面に集中しているかを把握して,気付かせていく支援の仕方もあるし,教師が学習課題作りや読み解き方にかかわり,リードして「カギ」をつかませる支援の仕方もある。