研究を終えて

 「学校基本調査」によれば,国・公・私立の小・中学校で平成14年度に「不登校」を理由として30日以上欠席した不登校児童生徒は,合計131,252人であり,平成3年度以来はじめて減少しているとはいうものの,大きな教育問題であることに変わりはありません。不登校問題だけでなく,登校しているものの保健室登校や相談室登校をしている児童生徒や登校を渋りがちな児童生徒,反社会的問題行動の児童生徒等,学校生活に適応できずに危機に陥ったり苦戦したりしている児童生徒の問題も学校にとって大きな課題となっています。
 本教育研修センターでは,平成7年度からこれまで,一貫して予防・開発的教育相談の研究を進めてきましたが,平成14・15年度の本研究では,児童生徒が学校生活を送る中で発達上の課題や教育上の課題に取り組む上で苦戦しないようにするために予め身に付けておきたいスキルに焦点を当て,学校生活に適応するために必要であると思われるスキル項目を明らかにし,茨城県教育研修センター版「学校生活スキル尺度」(小学生・中学生・高校生版)を作成しました。また,スキル尺度項目の中からいくつか選び,スキルトレーニングの実践研究を行いました。
 現在一般的に実践されている「ソーシャルスキル・トレーニング」は対人関係を主とする社会的スキルを身に付ける上で有効であるとされていますが,本研究で取り上げた「学校生活スキル」は,児童生徒の学校生活全般に渡る学習面,社会面,進路面,健康面の4領域のスキルを含んでいることが特長です。学校生活への適応に必要なスキル尺度は,予防・開発的に,教師が児童生徒に何を援助したらよいのかを発見する手立てとして,また,個別に援助を必要とする児童生徒の発見にも役立つと考えられます。一方,児童生徒にとっては,自己評価し,自主的にスキルを身に付けようとする目安にもなると思われます。さらに,児童生徒のスキルを育成するために有効な手立てである「スキルトレーニング」の実践例を紹介しました。本研修センターでは,さらに平成16年度に「学校生活スキルトレーニング」の実践研究を深め,児童生徒の学校生活への適応力を高める研究を進めていく予定です。
 今回の研究の成果が,各学校での実践に生かされ学校不適応行動の予防につながることを願っております。


研究報告書第50号
教育相談に関する研究
学校生活適応のための指導・援助の在り方
平成14・15年度
  平成16年3月発行
発行 茨城県教育研修センター
編集 茨城県教育研修センター 教育相談課
    〒309-1722
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